Ⅲ
夢小説設定
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魔法の杖認可局に移動になってから一ヶ月と半分。
明けても暮れても単調な書類整理とオフィスの掃除ばかりのこの仕事に、ティナはもううんざりとしていた。
闇祓いへの復帰の道は閉ざされたまま、この埃っぽいオフィスの片隅で自分の人生は終わるのだと思うと心にぽっかり穴が空いてるような気がした。
山積みになった杖の許可証で埋もれた自分のデスクのなんと侘しいことか。
闇祓いの時はこんなこと一度だってなかった、デスク周りはいつもキレイに整頓されていたものだ。
ティナは深いため息をつき、書類の散乱したデスクの上に突っ伏した。
「――あの、すいません……」
突然の来客にティナは勢いよく飛び起きた。
こんなところをアバナシーに見つかったらまた何を言われるか。
乱れた髪を撫でつけながら慌てて顔を上げると、見覚えのある女性が立っていた。
忘れもしない、彼女はティナの後にイギリスからやってきた闇祓いだ。
「あ、あなた……」
「驚かせてごめんなさい、クイニーいるかしら」
「今日は早退して……妹になにか?」
彼女の口から妹の名前が出るなんて思いもよらず、ティナは怪訝に思って尋ねる。
「妹って……そしたらあなた、えっと……」
「姉のティナです」
彼女はぴくっと表情を変えて、驚きながらも微笑んで手を差し出しティナに握手を求めた。
「リジー・ヴァンクス、ゴールドスタインはあなたの事ね、ティナ」
「……なんの話?」
リジーはセーレムのビラを取り出して広げる、ティナは黙ったままそれをじっと見つめる。
「彼らについて教えて欲しいの、みんな口が固くって」
「どうして?」
「それは言えないわ、あなたも元闇祓いなら分かるでしょう?」
「調査部がまた動いてるの?」
もしかして、クリーデンスに何か……ティナはあの可哀想な青年を案じて気が気じゃない様子でリジーに詰め寄った。
彼女はまだ若い、大方セーレムの子供たちに同情して深入りしすぎてしまったのだろう。
モデスティとクリーデンスのことを思い出してリジーは浅くため息をつく。
「……手に鞭で打たれたみたいな傷があった、妹の方はお腹を空かせたまま寒さで凍え死にそうだった……かわいそうだけど、どうしてあげることも出来ないわ」
ティナは悔しげに唇を噛んだ、リジーとてやるせない気持ちは同じだった。
かわいそうなクリーデンス、もし今も自分が闇祓いだったなら彼を救うこともできたのだろうか。
もっと経験のある強い魔女だったなら。
繰り返す自問自答に意味はない、結果として彼を余計に苦しめてしまった。
「……何から話せばいいかしら」
「あなたの知っていること全てを、あなたが一番詳しいでしょうから」
「……ここでは話しづらいわ、家に来て」
リジーは驚いてティナの顔をまじまじと見つめる。
出会って五分もしない他人を家に招くなんて、そこまであの少年のことを気にかけているのか。
ティナはリジーの反応の真意が分からぬまま、ただ不思議そうに首を傾げていた。
明けても暮れても単調な書類整理とオフィスの掃除ばかりのこの仕事に、ティナはもううんざりとしていた。
闇祓いへの復帰の道は閉ざされたまま、この埃っぽいオフィスの片隅で自分の人生は終わるのだと思うと心にぽっかり穴が空いてるような気がした。
山積みになった杖の許可証で埋もれた自分のデスクのなんと侘しいことか。
闇祓いの時はこんなこと一度だってなかった、デスク周りはいつもキレイに整頓されていたものだ。
ティナは深いため息をつき、書類の散乱したデスクの上に突っ伏した。
「――あの、すいません……」
突然の来客にティナは勢いよく飛び起きた。
こんなところをアバナシーに見つかったらまた何を言われるか。
乱れた髪を撫でつけながら慌てて顔を上げると、見覚えのある女性が立っていた。
忘れもしない、彼女はティナの後にイギリスからやってきた闇祓いだ。
「あ、あなた……」
「驚かせてごめんなさい、クイニーいるかしら」
「今日は早退して……妹になにか?」
彼女の口から妹の名前が出るなんて思いもよらず、ティナは怪訝に思って尋ねる。
「妹って……そしたらあなた、えっと……」
「姉のティナです」
彼女はぴくっと表情を変えて、驚きながらも微笑んで手を差し出しティナに握手を求めた。
「リジー・ヴァンクス、ゴールドスタインはあなたの事ね、ティナ」
「……なんの話?」
リジーはセーレムのビラを取り出して広げる、ティナは黙ったままそれをじっと見つめる。
「彼らについて教えて欲しいの、みんな口が固くって」
「どうして?」
「それは言えないわ、あなたも元闇祓いなら分かるでしょう?」
「調査部がまた動いてるの?」
もしかして、クリーデンスに何か……ティナはあの可哀想な青年を案じて気が気じゃない様子でリジーに詰め寄った。
彼女はまだ若い、大方セーレムの子供たちに同情して深入りしすぎてしまったのだろう。
モデスティとクリーデンスのことを思い出してリジーは浅くため息をつく。
「……手に鞭で打たれたみたいな傷があった、妹の方はお腹を空かせたまま寒さで凍え死にそうだった……かわいそうだけど、どうしてあげることも出来ないわ」
ティナは悔しげに唇を噛んだ、リジーとてやるせない気持ちは同じだった。
かわいそうなクリーデンス、もし今も自分が闇祓いだったなら彼を救うこともできたのだろうか。
もっと経験のある強い魔女だったなら。
繰り返す自問自答に意味はない、結果として彼を余計に苦しめてしまった。
「……何から話せばいいかしら」
「あなたの知っていること全てを、あなたが一番詳しいでしょうから」
「……ここでは話しづらいわ、家に来て」
リジーは驚いてティナの顔をまじまじと見つめる。
出会って五分もしない他人を家に招くなんて、そこまであの少年のことを気にかけているのか。
ティナはリジーの反応の真意が分からぬまま、ただ不思議そうに首を傾げていた。