Ⅲ
夢小説設定
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MACUSAでのリジーの最初の一ヶ月は、アメリカの法律と魔法社会について徹底的に頭に叩き込むことから始まった。
たくさんの資料を抱えて調査部と長官の執務室を行ったり来たりしたり、細々とした書類整理や伝達から電話番までこなし、まるで研修時代に戻ったかのようだった。
唯一の楽しみはお昼休みにクイニーとランチに行くこと。
12時の時報が鳴るとともにそそくさとオフィスを出て、エントランスで待ち合わせる。
MACUSAの食堂に行ってもよかったがクイニーはそこを嫌がった。
それについては分かる気がしなくもない、彼女はとても美人だから。
ウールワースビルからほど近い場所にある、常連客がたまに出入りするぐらいで落ちついた雰囲気の老舗の喫茶店が、最近の二人のお気に入りだ。
さっくりとしたクロワッサンに、ベーコンとチーズを挟んで焼いたピザトーストの香ばしい匂いと軽やかな食感に舌鼓を打つリジーに、クイニーはふと尋ねた。
「その指輪をくれた人ってどんな人?」
「わたしのフィアンセ」
リジーははにかみながら微笑んで、指輪をはめた手を撫でた。
五つの大陸が彫られた世界地図の指輪、イギリスを表す小さなダイヤが彼女の薬指で時折ちらちらと輝きを放つ。
「魔法動物の本を書いていて、今はミャンマーで執筆調査中」
「寂しくならない?浮気してるんじゃないかとか」
「そりゃ寂しくてたまらないけど、彼はそんなことできる人じゃないわ」
「はいはい、ごちそうさま」
心の底から確信に満ちてリジーが言う。
心を読まずとも、文字通り溢れんばかりの愛を互いに信じられる人がいるなんて。
クイニーは内心羨ましく感じずにはいられず、つまらなさそうにむうっと頬杖をつく。
今まで生きてきた中で恋愛というものが長続きしたためしがない、この人こそ理想の相手だと思っても向こうは違う。
おとぎ話のような真実の愛は存在しないし、戦争が終わって婦人参政権が認められても女に忍耐が必要なことは変わらない。
そんなこと分かっていても、どうしても許せないのだ。
自分は土足で人の心に上がり込んでいるようなものなのに、人間らしい利己的な感情や、自分に向けられる悪意が少しでも芽生えたらもう二度と顔も見たくないとすら思ってしまう。
自分はこんなにも善良さからはほど遠いところにいるのに、心の綺麗な誰かに理想を押しつけているのだ。
たくさんの資料を抱えて調査部と長官の執務室を行ったり来たりしたり、細々とした書類整理や伝達から電話番までこなし、まるで研修時代に戻ったかのようだった。
唯一の楽しみはお昼休みにクイニーとランチに行くこと。
12時の時報が鳴るとともにそそくさとオフィスを出て、エントランスで待ち合わせる。
MACUSAの食堂に行ってもよかったがクイニーはそこを嫌がった。
それについては分かる気がしなくもない、彼女はとても美人だから。
ウールワースビルからほど近い場所にある、常連客がたまに出入りするぐらいで落ちついた雰囲気の老舗の喫茶店が、最近の二人のお気に入りだ。
さっくりとしたクロワッサンに、ベーコンとチーズを挟んで焼いたピザトーストの香ばしい匂いと軽やかな食感に舌鼓を打つリジーに、クイニーはふと尋ねた。
「その指輪をくれた人ってどんな人?」
「わたしのフィアンセ」
リジーははにかみながら微笑んで、指輪をはめた手を撫でた。
五つの大陸が彫られた世界地図の指輪、イギリスを表す小さなダイヤが彼女の薬指で時折ちらちらと輝きを放つ。
「魔法動物の本を書いていて、今はミャンマーで執筆調査中」
「寂しくならない?浮気してるんじゃないかとか」
「そりゃ寂しくてたまらないけど、彼はそんなことできる人じゃないわ」
「はいはい、ごちそうさま」
心の底から確信に満ちてリジーが言う。
心を読まずとも、文字通り溢れんばかりの愛を互いに信じられる人がいるなんて。
クイニーは内心羨ましく感じずにはいられず、つまらなさそうにむうっと頬杖をつく。
今まで生きてきた中で恋愛というものが長続きしたためしがない、この人こそ理想の相手だと思っても向こうは違う。
おとぎ話のような真実の愛は存在しないし、戦争が終わって婦人参政権が認められても女に忍耐が必要なことは変わらない。
そんなこと分かっていても、どうしても許せないのだ。
自分は土足で人の心に上がり込んでいるようなものなのに、人間らしい利己的な感情や、自分に向けられる悪意が少しでも芽生えたらもう二度と顔も見たくないとすら思ってしまう。
自分はこんなにも善良さからはほど遠いところにいるのに、心の綺麗な誰かに理想を押しつけているのだ。