Ⅲ
夢小説設定
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世界一高いウールワースビルディングのてっぺんを見ようと、一歩、二歩、三歩下がる。
54階建て、なんだってそんなに高くする必要があるのかしら。
そもそもそんなにたくさん部屋がいるのかしら、と素朴な疑問が頭をよぎった。
地上から遥か上を見上げると、あまりにも大きすぎて倒れてきそうな気がして少し怖くなる。
ぐいっと頭を戻して姿勢を正すと、入口の施設警備員と目が合った。
不思議なことに、どこへ行っても初めて会う人でも、纏っている雰囲気ですぐに分かる。
同じ、魔法使いだと。
ほんの一瞬、視線を交わし彼は黙って一番端の回転ドアを指さした。
ぐるり、硝子一枚くぐり抜けた先はまさに別世界に通じていた。
まるで、忘れもしない11歳の9月、初めてホグワーツに足を踏み入れた時のような胸の高鳴りをリジーは感じていた。
今や世界一の国となりえた、巨大な都市の真ん中にそびえ立つアメリカ合衆国魔法議会……
アメリカの中心、ひいてはここが魔法界の中心と言っても過言ではない。
そして、この美しく荘厳な場所は大きな時計のような魔法漏洩脅威レベル計測器と国際機密保持法によって守られ、魔法使いしか目にすることは決してない。
黒と金の装飾が施され、MACUSAのシンボルにもなっている不死鳥の金像が天井の高いところを優雅に飛んでいる。
メインホールの正面には大きな肖像画が掛けられ、小麦色の肌をした女性が賢そうな眼差しを向けて静かに佇んでいた。
「MACUSAへご用?よければ案内しましょうか」
豪華なホールに見とれ、ニュートへの手紙になんて書こうかと立ち尽くしたまま考えていた。
その様子を見ていたのか、ブロンドの巻き毛の美しい魔女に声を掛けられ、リジーははっと我に返った。
「オーラーオフィスに行きたいの、イギリスから出向で来てて……」
「まあ、ようこそニューヨークへ!調査本部は7階よ、こちらへどうぞ」
女性はにこやかに手を招いて、昇降機へと案内する。
格子戸が閉まり、重たい箱が重力に逆らってずうんと持ち上がる。
足下がふらつくような、内臓が浮くような独特の感覚は箒に乗った時のそれと少し似ている。
何度乗っても慣れない狭い箱の中は、本当は少し苦手だ。
昇降機は急速に上昇し、軽やかなベルの音とともに扉が開いた。
リジーはテセウスから預かった手紙を胸に、不安と緊張を抱きつつ足を踏み出した。
がんばって、励ますように腕に手を添えて女性に小さく囁きかけられ、リジーは微笑みながら頷いた。
――
グレイブス長官、と呼ばれたその人は仕立ての良いスーツと磨きあげられた革靴を履いて、白髪の混じった髪を1ミリの乱れもなく後ろで撫で付け、微かにオーデコロンを纏っていた。
一目見て、自分宛の客人が誰だか分かったようで資料を読む手を止めた。
振り返った眉の太い精悍な顔つきまで、まるでモリアーティ教授その人がそこに実在しているようだった。
「初めまして、グレイブス長官。リジー・ヴァンクスです」
「ようこそ、ニューヨークへ。ミス・ヴァンクス」
言葉少なに、握手を交わす。
彼こそが議長の右腕、米国魔法界のNo.2。
その威厳と貫禄は流石のものだ。
「スキャマンダー局長から手紙を預かってきました、くれぐれも宜しくお伝えくださいと」
さっと手紙に目を通し、上着の内ポケットに仕舞う。
「……ちょうど欠員が出たところで、こちらとしても助かる」
「まだ経験不足ですが、よろしくお願いいたします」
「長旅でお疲れでしょう。今日のところはこれで……」
最後にこれを、と机の引き出しの奥から何かを取り出す。
リジーの、MACUSAの正式な闇祓いとして身分証明書だった。
彼女は不死鳥のシンボルを誇らしげに眺め、大切に仕舞った。
――
――アメリカは広くて迷子になりそう、ウールワースビルディングは無駄に大きすぎる。
でも中はぴかぴかですごく綺麗!
金の不死鳥をあなたに見せてあげたい、きっと気にいると思う!
それに新しいボスも!グレイブス長官はモリアーティ教授そっくりなの!
ニューヨークを恐怖のどん底に陥れるような邪悪な人ではないから安心して。
きっと、うまくやっていけると思う。
ニュートはまだ船の上かしら、ミャンマーって遠いのね。
私もヘイミッシュも元気だから安心して、着いたらちゃんと手紙をちょうだいね。
リジーより
XOXOXO
54階建て、なんだってそんなに高くする必要があるのかしら。
そもそもそんなにたくさん部屋がいるのかしら、と素朴な疑問が頭をよぎった。
地上から遥か上を見上げると、あまりにも大きすぎて倒れてきそうな気がして少し怖くなる。
ぐいっと頭を戻して姿勢を正すと、入口の施設警備員と目が合った。
不思議なことに、どこへ行っても初めて会う人でも、纏っている雰囲気ですぐに分かる。
同じ、魔法使いだと。
ほんの一瞬、視線を交わし彼は黙って一番端の回転ドアを指さした。
ぐるり、硝子一枚くぐり抜けた先はまさに別世界に通じていた。
まるで、忘れもしない11歳の9月、初めてホグワーツに足を踏み入れた時のような胸の高鳴りをリジーは感じていた。
今や世界一の国となりえた、巨大な都市の真ん中にそびえ立つアメリカ合衆国魔法議会……
アメリカの中心、ひいてはここが魔法界の中心と言っても過言ではない。
そして、この美しく荘厳な場所は大きな時計のような魔法漏洩脅威レベル計測器と国際機密保持法によって守られ、魔法使いしか目にすることは決してない。
黒と金の装飾が施され、MACUSAのシンボルにもなっている不死鳥の金像が天井の高いところを優雅に飛んでいる。
メインホールの正面には大きな肖像画が掛けられ、小麦色の肌をした女性が賢そうな眼差しを向けて静かに佇んでいた。
「MACUSAへご用?よければ案内しましょうか」
豪華なホールに見とれ、ニュートへの手紙になんて書こうかと立ち尽くしたまま考えていた。
その様子を見ていたのか、ブロンドの巻き毛の美しい魔女に声を掛けられ、リジーははっと我に返った。
「オーラーオフィスに行きたいの、イギリスから出向で来てて……」
「まあ、ようこそニューヨークへ!調査本部は7階よ、こちらへどうぞ」
女性はにこやかに手を招いて、昇降機へと案内する。
格子戸が閉まり、重たい箱が重力に逆らってずうんと持ち上がる。
足下がふらつくような、内臓が浮くような独特の感覚は箒に乗った時のそれと少し似ている。
何度乗っても慣れない狭い箱の中は、本当は少し苦手だ。
昇降機は急速に上昇し、軽やかなベルの音とともに扉が開いた。
リジーはテセウスから預かった手紙を胸に、不安と緊張を抱きつつ足を踏み出した。
がんばって、励ますように腕に手を添えて女性に小さく囁きかけられ、リジーは微笑みながら頷いた。
――
グレイブス長官、と呼ばれたその人は仕立ての良いスーツと磨きあげられた革靴を履いて、白髪の混じった髪を1ミリの乱れもなく後ろで撫で付け、微かにオーデコロンを纏っていた。
一目見て、自分宛の客人が誰だか分かったようで資料を読む手を止めた。
振り返った眉の太い精悍な顔つきまで、まるでモリアーティ教授その人がそこに実在しているようだった。
「初めまして、グレイブス長官。リジー・ヴァンクスです」
「ようこそ、ニューヨークへ。ミス・ヴァンクス」
言葉少なに、握手を交わす。
彼こそが議長の右腕、米国魔法界のNo.2。
その威厳と貫禄は流石のものだ。
「スキャマンダー局長から手紙を預かってきました、くれぐれも宜しくお伝えくださいと」
さっと手紙に目を通し、上着の内ポケットに仕舞う。
「……ちょうど欠員が出たところで、こちらとしても助かる」
「まだ経験不足ですが、よろしくお願いいたします」
「長旅でお疲れでしょう。今日のところはこれで……」
最後にこれを、と机の引き出しの奥から何かを取り出す。
リジーの、MACUSAの正式な闇祓いとして身分証明書だった。
彼女は不死鳥のシンボルを誇らしげに眺め、大切に仕舞った。
――
――アメリカは広くて迷子になりそう、ウールワースビルディングは無駄に大きすぎる。
でも中はぴかぴかですごく綺麗!
金の不死鳥をあなたに見せてあげたい、きっと気にいると思う!
それに新しいボスも!グレイブス長官はモリアーティ教授そっくりなの!
ニューヨークを恐怖のどん底に陥れるような邪悪な人ではないから安心して。
きっと、うまくやっていけると思う。
ニュートはまだ船の上かしら、ミャンマーって遠いのね。
私もヘイミッシュも元気だから安心して、着いたらちゃんと手紙をちょうだいね。
リジーより
XOXOXO