Ⅲ
夢小説設定
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ニュートがイギリスを旅立ってから二日後、リジーは世話になった人たちに挨拶をして回り、最後にテセウスの執務室を訪れた。
イギリス魔法省の闇祓いの証であるバッジを返すために。
「お世話になりました」
バッジを見つめる彼女の目に後悔の色はない。
テセウスはじっと黙ったまま、小さな銀色に光るそれを机の引き出しの奥にいれた。
「……アメリカの知人に手紙を書いた。詳しいことは話してないが、力になってくれるはず」
リジーは手紙を、折れないように大切に鞄にしまった。
「何かあったらすぐに連絡してくれ、必要ならショーンを……」
「そんな大袈裟な、"人探し"に行くだけですよ」
「……くれぐれも、気をつけて」
案ずるテセウスの気など知らず、リジーはただ微笑むだけだった。
「……彼女は、お元気ですか」
リジーは恐る恐る、言葉を選んで、ずっと聞くのを躊躇っていたことを口にした。
テセウスは表情を変えないまま、彼女の左手で光る指輪を眺めていた。
「……元気だよ」
なんと答えるべきか迷った。
どこから情報が漏れるか分からない状況で、あまり多くの情報を特定の人間と共有したくないというのと、今の自分の立場に関わることでもあった。
でも彼女には、知る権利がある。
「面識があるとは知らなかった」
「……ほんの短い間でしたが、友達でした」
あの時、もう少し大人だったら。
もしくは、もっと違う出会い方だったなら。
今も友達のままでいられたのだろうか――などと、ふと思う。
「もし……まだ少しでもその気持ちが残ってるなら、どうかまた親しくしてやってほしい。あまり友達の多い方ではなかったから……」
テセウスの言葉に、リジーは静かに微笑んだ。
「……リタに宜しくお伝えください、お義兄さま」
大人になった今なら、あの時の彼女の気持ちも少し分かる気がする。
大切な人が、知らない間にだんだんと変わっていってしまって、自分だけ置いていかれる。
幼なじみなのに、お互いに成長するにつれて、友達ですらなくなってしまうような寂しさ。
もう何年も前のことを今さら許すとか、許さないとか、そんなことはもうどうだってよかった。
それに、ニュートは戻ってきてくれた。
生きて、わたしのところへ。
許す理由なんて、とうの昔にいくらでもある。
でも、一度壊れてしまった二人がまた”友達”に戻るには、少し勇気が足りなかった。
イギリス魔法省の闇祓いの証であるバッジを返すために。
「お世話になりました」
バッジを見つめる彼女の目に後悔の色はない。
テセウスはじっと黙ったまま、小さな銀色に光るそれを机の引き出しの奥にいれた。
「……アメリカの知人に手紙を書いた。詳しいことは話してないが、力になってくれるはず」
リジーは手紙を、折れないように大切に鞄にしまった。
「何かあったらすぐに連絡してくれ、必要ならショーンを……」
「そんな大袈裟な、"人探し"に行くだけですよ」
「……くれぐれも、気をつけて」
案ずるテセウスの気など知らず、リジーはただ微笑むだけだった。
「……彼女は、お元気ですか」
リジーは恐る恐る、言葉を選んで、ずっと聞くのを躊躇っていたことを口にした。
テセウスは表情を変えないまま、彼女の左手で光る指輪を眺めていた。
「……元気だよ」
なんと答えるべきか迷った。
どこから情報が漏れるか分からない状況で、あまり多くの情報を特定の人間と共有したくないというのと、今の自分の立場に関わることでもあった。
でも彼女には、知る権利がある。
「面識があるとは知らなかった」
「……ほんの短い間でしたが、友達でした」
あの時、もう少し大人だったら。
もしくは、もっと違う出会い方だったなら。
今も友達のままでいられたのだろうか――などと、ふと思う。
「もし……まだ少しでもその気持ちが残ってるなら、どうかまた親しくしてやってほしい。あまり友達の多い方ではなかったから……」
テセウスの言葉に、リジーは静かに微笑んだ。
「……リタに宜しくお伝えください、お義兄さま」
大人になった今なら、あの時の彼女の気持ちも少し分かる気がする。
大切な人が、知らない間にだんだんと変わっていってしまって、自分だけ置いていかれる。
幼なじみなのに、お互いに成長するにつれて、友達ですらなくなってしまうような寂しさ。
もう何年も前のことを今さら許すとか、許さないとか、そんなことはもうどうだってよかった。
それに、ニュートは戻ってきてくれた。
生きて、わたしのところへ。
許す理由なんて、とうの昔にいくらでもある。
でも、一度壊れてしまった二人がまた”友達”に戻るには、少し勇気が足りなかった。