Ⅲ
夢小説設定
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後日、ニュートは再びオブスキュラス出版を訪ねた。
「幻の動物とその生息地」執筆の契約書にサインをするために。
編集長のオーガスタス・ワームは書類を几帳面に折り畳んでしまい、これからの互いの未来に薄い紅茶で祝杯をあげた。
屋敷しもべ妖精転勤室の上司のゴブリンは事情を話すと、相変わらず無表情ながらもこれまでの働きを労い、「友好の印」に握手を求めた。
退屈な毎日だったが、4年間働いたオフィスを後にするのは少し寂しい。
でもまあ、二度とここに戻ることはないだろうなと、殺風景なオフィスとごちゃごちゃした自分のデスクを見て思った。
デスクワークはもう懲り懲りだ。
リジーは調査旅行に一緒に連れて行ってと願った。
危険が伴うことは重々承知していたが、少しでもそばで支えになりたかった。
「一緒に着いていかせて、わたしはニュートのお嫁さんになるのよ」
素直に、とても嬉しかった。
でも、もし危険な目にあった時に守りきれるか自信がなかった。
リジーだけを守ればいいわけではない、二フラーがいる、それに見知らぬどんな動物でも目の前にいたら見捨てることなんかできない。
その時、彼女以外の命を優先させてしまうかもしれない自分が怖かった。
そしてリジーはアメリカに行くことを決意した。
「イギリスはもう懲り懲り、古臭くって閉鎖的で。それに、私だけ『待ってる』なんて不公平だし」
ニュートが帰ってきたら、リジーが帰ってきたら、どこか空気の綺麗な田舎で静かに暮らそうと二人で約束した。
それから、リジーの実家に挨拶に行った。
今までに生きてきた中で1番緊張した日だ。
むかし、クリスマス休暇で一度ヴァンクス家に招待してもらった時。
リジーと彼女の母親が魔法を使わずに、一から料理をする光景が珍しくて感動したのを覚えてる。
久しぶりに会ったヘイミッシュは少しだけ前より白くなってて、ニュートのことはすっかり忘れてしまったみたいで他人行儀にシャーッと牙を剥いた。
「よくぞ無事で」と肩を叩き、握手を交わしたミスター・ヴァンクスの大きな手と、「大事にしてくれて、ありがとう」と涙を流した夫人の優しさをニュートは二度と忘れることはなかった。
コッツウォルズの実家に行くのをニュートはギリギリまで渋っていたが、テセウスが情報を漏らしたことにより彼のアパートにとうとう吠えメールが届いた。
そして、今度はリジーが緊張する番だった。
美しいコッツウォルズの田園風景と豊かな自然にリジーは圧倒され、心を打たれた。
ニュートの生まれ育ったスキャマンダー家は、小さな家に牧場のような大きな庭と果樹園があって、動物たちがたくさん暮らしていた。
犬や猫が家の中を自由に駆け回り、たくさんのフクロウや色とりどりのインコたちがエサをもらいに窓をつついて、またどこかへ飛んでいく。
ヒッポグリフもたくさんいて、神秘的なその姿を間近で見て驚いた。
馬が家の前でのんびり草を食んでいて、乗馬もできるのかとニュートに尋ねたところ「馬は箒じゃないってうるさいんだ」と困ったように答えた。
ご両親、とりわけお姑さんとはどんな人なんだろうとリジーは気にしていたが、ニュートそっくりの青い瞳を持ち、百はいるんじゃないかという程たくさんの動物たちの名前を一匹一匹紹介されてリジーはとても喜んだ。
想像力豊かなせいか嫁姑問題に気を揉んでいたが、幸いなことにすぐに打ち解けることが出来た。
そしてニュートが恐れていたとおり、食事を食べ終わる頃には口数少ない物静かな父親ともすっかり和気あいあいとして、夫人は嬉しそうに息子たちの「成長アルバム」を広げ始めた。
なるほど、局長は母親似だったのかとリジーは一人心の中で納得した。
実家に挨拶に行ったり、両家の顔合わせをしたり、旅支度をしたりして出発までの日にちはあっという間に過ぎていった。
「幻の動物とその生息地」執筆の契約書にサインをするために。
編集長のオーガスタス・ワームは書類を几帳面に折り畳んでしまい、これからの互いの未来に薄い紅茶で祝杯をあげた。
屋敷しもべ妖精転勤室の上司のゴブリンは事情を話すと、相変わらず無表情ながらもこれまでの働きを労い、「友好の印」に握手を求めた。
退屈な毎日だったが、4年間働いたオフィスを後にするのは少し寂しい。
でもまあ、二度とここに戻ることはないだろうなと、殺風景なオフィスとごちゃごちゃした自分のデスクを見て思った。
デスクワークはもう懲り懲りだ。
リジーは調査旅行に一緒に連れて行ってと願った。
危険が伴うことは重々承知していたが、少しでもそばで支えになりたかった。
「一緒に着いていかせて、わたしはニュートのお嫁さんになるのよ」
素直に、とても嬉しかった。
でも、もし危険な目にあった時に守りきれるか自信がなかった。
リジーだけを守ればいいわけではない、二フラーがいる、それに見知らぬどんな動物でも目の前にいたら見捨てることなんかできない。
その時、彼女以外の命を優先させてしまうかもしれない自分が怖かった。
そしてリジーはアメリカに行くことを決意した。
「イギリスはもう懲り懲り、古臭くって閉鎖的で。それに、私だけ『待ってる』なんて不公平だし」
ニュートが帰ってきたら、リジーが帰ってきたら、どこか空気の綺麗な田舎で静かに暮らそうと二人で約束した。
それから、リジーの実家に挨拶に行った。
今までに生きてきた中で1番緊張した日だ。
むかし、クリスマス休暇で一度ヴァンクス家に招待してもらった時。
リジーと彼女の母親が魔法を使わずに、一から料理をする光景が珍しくて感動したのを覚えてる。
久しぶりに会ったヘイミッシュは少しだけ前より白くなってて、ニュートのことはすっかり忘れてしまったみたいで他人行儀にシャーッと牙を剥いた。
「よくぞ無事で」と肩を叩き、握手を交わしたミスター・ヴァンクスの大きな手と、「大事にしてくれて、ありがとう」と涙を流した夫人の優しさをニュートは二度と忘れることはなかった。
コッツウォルズの実家に行くのをニュートはギリギリまで渋っていたが、テセウスが情報を漏らしたことにより彼のアパートにとうとう吠えメールが届いた。
そして、今度はリジーが緊張する番だった。
美しいコッツウォルズの田園風景と豊かな自然にリジーは圧倒され、心を打たれた。
ニュートの生まれ育ったスキャマンダー家は、小さな家に牧場のような大きな庭と果樹園があって、動物たちがたくさん暮らしていた。
犬や猫が家の中を自由に駆け回り、たくさんのフクロウや色とりどりのインコたちがエサをもらいに窓をつついて、またどこかへ飛んでいく。
ヒッポグリフもたくさんいて、神秘的なその姿を間近で見て驚いた。
馬が家の前でのんびり草を食んでいて、乗馬もできるのかとニュートに尋ねたところ「馬は箒じゃないってうるさいんだ」と困ったように答えた。
ご両親、とりわけお姑さんとはどんな人なんだろうとリジーは気にしていたが、ニュートそっくりの青い瞳を持ち、百はいるんじゃないかという程たくさんの動物たちの名前を一匹一匹紹介されてリジーはとても喜んだ。
想像力豊かなせいか嫁姑問題に気を揉んでいたが、幸いなことにすぐに打ち解けることが出来た。
そしてニュートが恐れていたとおり、食事を食べ終わる頃には口数少ない物静かな父親ともすっかり和気あいあいとして、夫人は嬉しそうに息子たちの「成長アルバム」を広げ始めた。
なるほど、局長は母親似だったのかとリジーは一人心の中で納得した。
実家に挨拶に行ったり、両家の顔合わせをしたり、旅支度をしたりして出発までの日にちはあっという間に過ぎていった。