Ⅲ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「お兄様は素敵な方ね」
帰りの道すがら、愛車のモデルTのハンドルを握るリジーが浮き浮きとした声で言った。
「え、どこが?」
反対にニュートは窓ガラスに額を押しつけてげっそりと疲れた様子で答える。
「ユーモアがあって、気配り上手で……家族思い」
「そうかい?」
怪訝な顔で首を捻るニュートを横目にリジーは笑った。
「あなたのことが心配なのよ、きっと。年の離れた弟だから、可愛くて仕方ないのね」
「遊んでるだけだよ、そうに決まってる」
信号待ちでスピードを落とし、車体がゆっくりと停車する。
いじけてこっちを見ようとしないニュートをちらりと一瞥すると、リジーは思い立ったように口を開いた。
「夕飯、どうしよっか……何がいい?」
無意識に自宅方向の車線にある飲食店を頭の中で思い浮かべる。
数秒の間の後に、捻り出された答えが一言。
「……りんご」
なぜりんご。
リジーがくすくす笑うと、ニュートは手を伸ばしてハンドルを握る彼女の手を取った。
ごく自然に指先を絡める動作に胸が高鳴る。
「実家から届いたのがまだ残ってる」
繋いだ指先にキスが落とされ、触れた箇所からじんわりと熱を帯びる。
一体どこでこんなことを覚えてきたの?
こういう雰囲気には未だに慣れない、どんな顔をしたらいいのか分からない。
「じゃあ買い物してかないと、りんごは食後にね」
「うん……」
赤信号がぱっと消えて青緑色に切り替わる。
進行の合図をきっかけに繋がれた手が名残惜しげに解放された。
窓の外を通りがゆっくりと流れていく。
夕暮れがもうすぐそこまで迫ってきてて、空に追いかけられるみたいに「早く帰ろう」と心の中で呟いた。
時々、彼が苦しそうな表情を見せるのに気づかないフリをしていた。
それは些細な日常の一コマの一部で、淡々とした仕事をこなしながら、ふと集中力が切れた時だったり。夕焼けに紅く染まるロンドンの街並みだったり。
向こうで何があったのか、どう過ごしていたのか。
4年経った今も、ニュートは何も語ろうとしない。
私は、ただ見守ることしか出来ずにいた。
帰りの道すがら、愛車のモデルTのハンドルを握るリジーが浮き浮きとした声で言った。
「え、どこが?」
反対にニュートは窓ガラスに額を押しつけてげっそりと疲れた様子で答える。
「ユーモアがあって、気配り上手で……家族思い」
「そうかい?」
怪訝な顔で首を捻るニュートを横目にリジーは笑った。
「あなたのことが心配なのよ、きっと。年の離れた弟だから、可愛くて仕方ないのね」
「遊んでるだけだよ、そうに決まってる」
信号待ちでスピードを落とし、車体がゆっくりと停車する。
いじけてこっちを見ようとしないニュートをちらりと一瞥すると、リジーは思い立ったように口を開いた。
「夕飯、どうしよっか……何がいい?」
無意識に自宅方向の車線にある飲食店を頭の中で思い浮かべる。
数秒の間の後に、捻り出された答えが一言。
「……りんご」
なぜりんご。
リジーがくすくす笑うと、ニュートは手を伸ばしてハンドルを握る彼女の手を取った。
ごく自然に指先を絡める動作に胸が高鳴る。
「実家から届いたのがまだ残ってる」
繋いだ指先にキスが落とされ、触れた箇所からじんわりと熱を帯びる。
一体どこでこんなことを覚えてきたの?
こういう雰囲気には未だに慣れない、どんな顔をしたらいいのか分からない。
「じゃあ買い物してかないと、りんごは食後にね」
「うん……」
赤信号がぱっと消えて青緑色に切り替わる。
進行の合図をきっかけに繋がれた手が名残惜しげに解放された。
窓の外を通りがゆっくりと流れていく。
夕暮れがもうすぐそこまで迫ってきてて、空に追いかけられるみたいに「早く帰ろう」と心の中で呟いた。
時々、彼が苦しそうな表情を見せるのに気づかないフリをしていた。
それは些細な日常の一コマの一部で、淡々とした仕事をこなしながら、ふと集中力が切れた時だったり。夕焼けに紅く染まるロンドンの街並みだったり。
向こうで何があったのか、どう過ごしていたのか。
4年経った今も、ニュートは何も語ろうとしない。
私は、ただ見守ることしか出来ずにいた。