Ⅱ
夢小説設定
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白昼の校内に突如として異常を報せるベルが鳴り響いた。
『緊急事態発生、西側2階、魔法化学実験室より火災発生、生徒の皆さんは先生及び監督生の指示に従い、速やかに東側1階大広間へと避難して下さい、繰り返します――』
淡々と告げるアナウンスの声に、生徒たちはざわめき、教師たちに緊張が走る。
窓に近い席の生徒たちは、鍵を外して桟から身を乗り出した。
2階の魔法化学実験室では、硝子張りの窓の向こうに轟々と橙色に揺らめく炎が赤いカーテンを焼き尽くすところだった。
アナウンスを聞いて、真っ先に窓の外を確認しに走ったリジーは青ざめ、言葉を失った。
西側2階のフロアでは、通常通り5年生の授業が行われている最中であった。
―――
バタバタと忙しく廊下を走り去る生徒たち、火事だ!の声に教室の空気は一瞬にして停止した。
けたたましくベルが鳴り、アナウンスが入ったのはその直後のことであった。
魔法化学実験室の一つ挟んだ隣の教室では、魔法史の授業が行われていた。
焦げ臭い匂いが廊下を伝い、硝子の割れる音がすぐ間近で響く。
生徒たちは恐れをなして声を上げ、廊下へ雪崩出た。
大広間へ一番最短ルートの東側の階段は、白い煙が行く手を阻んで使えない。
生徒たちはパニックに陥り、一斉に西側の階段へ押し寄せた。
実験室から逃げてきた生徒たちの中には軽い火傷を負っている者もいる。
ニュートは壁際に身を寄せて、落ち着きを維持して群衆が過ぎるのを待った。
「何があったの?」
同級生の一人に事情を聞き出そうと声を掛けると、首を横に振りながら苦い顔をして答えた。
「誰かがジャービーの入った籠を閉め忘れて、ジャービーの火が薬に引火したんだ」
「じゃあ、そのジャービーはまだ教室に?」
「もう無理だ、捕まえようにも煙が酷くて死んでしまう」
諦めろ、と肩を一つ叩いて階段を駆け下りていった。
ニュートはゆっくりと実験室の方を振り返った。
白煙が充満し、廊下もあと何分ともたないだろう。
東側の階段は使えない、となると残されたのは西側の階段のみ。
この人混みでは、教師たちが到着するのは少なくともあと5分は掛かる。
火災により発生した熱で軽くなった煙は上昇し、天井にぶつかると横に向かって広がる。
低い場所に空気が残っていたとして、小動物の体力でどれくらいもつものか。
……今、今ならまだ――。
一縷の望みが頭を過ぎる。
無謀としか言いようのない考えに、一瞬躊躇した。
「っ……、ごめん!通して!戻ります!」
気づけば体が勝手に動き、ロンドンの霧のように濃くなった白煙の中に飛び出していた。
『緊急事態発生、西側2階、魔法化学実験室より火災発生、生徒の皆さんは先生及び監督生の指示に従い、速やかに東側1階大広間へと避難して下さい、繰り返します――』
淡々と告げるアナウンスの声に、生徒たちはざわめき、教師たちに緊張が走る。
窓に近い席の生徒たちは、鍵を外して桟から身を乗り出した。
2階の魔法化学実験室では、硝子張りの窓の向こうに轟々と橙色に揺らめく炎が赤いカーテンを焼き尽くすところだった。
アナウンスを聞いて、真っ先に窓の外を確認しに走ったリジーは青ざめ、言葉を失った。
西側2階のフロアでは、通常通り5年生の授業が行われている最中であった。
―――
バタバタと忙しく廊下を走り去る生徒たち、火事だ!の声に教室の空気は一瞬にして停止した。
けたたましくベルが鳴り、アナウンスが入ったのはその直後のことであった。
魔法化学実験室の一つ挟んだ隣の教室では、魔法史の授業が行われていた。
焦げ臭い匂いが廊下を伝い、硝子の割れる音がすぐ間近で響く。
生徒たちは恐れをなして声を上げ、廊下へ雪崩出た。
大広間へ一番最短ルートの東側の階段は、白い煙が行く手を阻んで使えない。
生徒たちはパニックに陥り、一斉に西側の階段へ押し寄せた。
実験室から逃げてきた生徒たちの中には軽い火傷を負っている者もいる。
ニュートは壁際に身を寄せて、落ち着きを維持して群衆が過ぎるのを待った。
「何があったの?」
同級生の一人に事情を聞き出そうと声を掛けると、首を横に振りながら苦い顔をして答えた。
「誰かがジャービーの入った籠を閉め忘れて、ジャービーの火が薬に引火したんだ」
「じゃあ、そのジャービーはまだ教室に?」
「もう無理だ、捕まえようにも煙が酷くて死んでしまう」
諦めろ、と肩を一つ叩いて階段を駆け下りていった。
ニュートはゆっくりと実験室の方を振り返った。
白煙が充満し、廊下もあと何分ともたないだろう。
東側の階段は使えない、となると残されたのは西側の階段のみ。
この人混みでは、教師たちが到着するのは少なくともあと5分は掛かる。
火災により発生した熱で軽くなった煙は上昇し、天井にぶつかると横に向かって広がる。
低い場所に空気が残っていたとして、小動物の体力でどれくらいもつものか。
……今、今ならまだ――。
一縷の望みが頭を過ぎる。
無謀としか言いようのない考えに、一瞬躊躇した。
「っ……、ごめん!通して!戻ります!」
気づけば体が勝手に動き、ロンドンの霧のように濃くなった白煙の中に飛び出していた。