Ⅱ
夢小説設定
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「やあ、リタ」
本棚の陰からひょっこり姿を現した彼女に、ニュートはいつもの調子で軽く声を掛けた。
本を片手に、ぎっしり詰まった本棚の中身を一冊ずつ立てて詰め直して、空いたスペースに並べていく。
それでも足りないため、手狭なところに無理やりぎちぎちに押し込む。
「君、ずいぶん余裕みたいだけど、ほんとに大丈夫かい?」
「そっちこそ、恋愛ごっこに構けて単位落としても知らないわよ」
「分かってるよ、それぐらい」
おざなりな返事を返すと、彼女は不満そうに小さくため息をついた。
「どうしたんだい?なんか悩みごと?」
「なんで?」
「やけに静かだから」
「……」
リタはすぐには答えず、ただ曖昧に肩を竦めた。
「別に、ちょっと寝不足気味なだけ」
ニュートは怪訝な眼差しで彼女を見つめたが、「そっか」とだけ納得して本棚の方に視線を戻した。
「リジーちゃんは?元気?」
「ああ、元気だよ」
「そう……なら良かった」
「……ほんとに大丈夫かい?顔色が悪い」
ニュートは心配そうに彼女の顔を覗き込んだ。
頬は青白く、僅かに震えている。
血の気の薄い唇をぎりっと噛み締めると、本棚に寄りかかってしゃがみこんだ。
「リタ? え、ちょっと、しっかり、!」
体を支えようと、とっさに彼女の背中に腕をのばした。
女子特有の華奢な白い手が、おもむろにタイを引っ張る。
必然的に首が締まり、恐怖に似た息苦しさに無意識にその手を掴んだ。
それは一瞬の出来事で、穏やかとは程遠い、もっと短絡的なもの。
歯と歯がぶつかり合い、鋭い痛みとともにぬるりとした鉄の味が口の中に広がる。
後頭部を思いっきり殴られたような衝撃に驚いて後ろに飛び退いた。
「な、なにを」
状況に頭が追いつかずにいると、ふっと彼女の指が唇に触れ、ぴりりとした痛みが走る。
反射的に手を払いのけると思ったよりあっさりと離れ、触れた指先を口元に持っていくと幼子のように口に含んだ。
どくりどくりと心臓が嫌な音を立てる。
彼女の、見たこともないような暗い底なし沼のような瞳が悲しいほどに恐ろしかった。
「どうして」
バサバサ――分厚い紙の束が落ちる、床に叩きつけられページがぐにゃりとひしゃげた。
傍には獅子のローブを身にまとった少女が、ただ呆然と立ち尽くしていた。
本棚の陰からひょっこり姿を現した彼女に、ニュートはいつもの調子で軽く声を掛けた。
本を片手に、ぎっしり詰まった本棚の中身を一冊ずつ立てて詰め直して、空いたスペースに並べていく。
それでも足りないため、手狭なところに無理やりぎちぎちに押し込む。
「君、ずいぶん余裕みたいだけど、ほんとに大丈夫かい?」
「そっちこそ、恋愛ごっこに構けて単位落としても知らないわよ」
「分かってるよ、それぐらい」
おざなりな返事を返すと、彼女は不満そうに小さくため息をついた。
「どうしたんだい?なんか悩みごと?」
「なんで?」
「やけに静かだから」
「……」
リタはすぐには答えず、ただ曖昧に肩を竦めた。
「別に、ちょっと寝不足気味なだけ」
ニュートは怪訝な眼差しで彼女を見つめたが、「そっか」とだけ納得して本棚の方に視線を戻した。
「リジーちゃんは?元気?」
「ああ、元気だよ」
「そう……なら良かった」
「……ほんとに大丈夫かい?顔色が悪い」
ニュートは心配そうに彼女の顔を覗き込んだ。
頬は青白く、僅かに震えている。
血の気の薄い唇をぎりっと噛み締めると、本棚に寄りかかってしゃがみこんだ。
「リタ? え、ちょっと、しっかり、!」
体を支えようと、とっさに彼女の背中に腕をのばした。
女子特有の華奢な白い手が、おもむろにタイを引っ張る。
必然的に首が締まり、恐怖に似た息苦しさに無意識にその手を掴んだ。
それは一瞬の出来事で、穏やかとは程遠い、もっと短絡的なもの。
歯と歯がぶつかり合い、鋭い痛みとともにぬるりとした鉄の味が口の中に広がる。
後頭部を思いっきり殴られたような衝撃に驚いて後ろに飛び退いた。
「な、なにを」
状況に頭が追いつかずにいると、ふっと彼女の指が唇に触れ、ぴりりとした痛みが走る。
反射的に手を払いのけると思ったよりあっさりと離れ、触れた指先を口元に持っていくと幼子のように口に含んだ。
どくりどくりと心臓が嫌な音を立てる。
彼女の、見たこともないような暗い底なし沼のような瞳が悲しいほどに恐ろしかった。
「どうして」
バサバサ――分厚い紙の束が落ちる、床に叩きつけられページがぐにゃりとひしゃげた。
傍には獅子のローブを身にまとった少女が、ただ呆然と立ち尽くしていた。