Ⅱ
夢小説設定
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中庭のひっそりと奥まった所に小さな花壇がある。
ハンカチを広げたくらいのスペースに、小さいオレンジの木が一本と、甘酸っぱい実をつける草花が伸びっぱなしで放置されていて、元々狭い場所が更に窮屈になっている。
教師でも滅多に立ち入らないので、恋人同士が逢瀬に使ったり、いたずら好きの生徒たちが集まって悪戯の算段を立てたり。
隠れて何かをするにはうってつけの場所だ。
点々と続くキャンドルに誘われて細い道を行くと小さな門に出くわした。
長いこと開かれていないようで蔦が複雑に絡まっている。
木製の門を数回、一定のリズムでノックすると、内側から掛けられた錠がひとりでに開き、古い木枠がギイィィ……と軋みながら重苦しく開いた。
門をくぐった瞬間、微かに空気が変わるのを感じた。
道の真ん中に立つオレンジの木、その足元に立てられた看板に従って、向かって右手側を通ると見えないカーテンを知らずに潜り抜けた。
カーテンを潜った先はまるで別世界だった。
どこからともなく漂ってくる甘い香り、賑やかなバグパイプの音、頭上にぶら下がる無数の色とりどりのランタン。
参加者たちは談笑したり、ひたすらケーキを食べたり、ダンスに興じたりと、みな思い思いに過ごしている。
一際目を引くクイディッチの競技場を模した大きなケーキの上では、飴細工で出来た選手たちが激しいゲームを繰り広げていた。
魔法で広げられたパーティー会場には、ざっと数えても300人程の生徒が出入りしているがスペース的には全く問題はない。
ニュートはあまりの賑やかさにすっかり圧倒され、リジーは大喜びで彼の腕を引っ張って踊り出た。
手拍子を交えた愉快なポルカに合わせて跳ね回る。
踊り方も知らずに、見よう見まねででたらめなステップを踏んでくるくる舞い踊る。
腰に腕をまわして、手を取り合って。
一歩踏み出すたびに若草色が風に揺られて宙を掠める。
時間は決して波長を乱さず、いつも通りのんびりと後から付いてきて一瞬一瞬が恐ろしく長く感じる。
待ちかねていたその瞬間が目の前まで迫っていた。
言うか、言わないか。
時期を逃したらきっともう二度とタイミングは訪れない、今ここで当たって砕けるか。
運良く実るかのどちらか。
曲が終盤に差し掛かり、最骨頂を迎え、最後を結ぶとあちこちから拍手が起こった。
「楽しいね、ニュート」
「ああ、そうだね」
リジーが何か言った気がしたが、緊張でそれどころでなかったニュートは、半分上の空で返した。
「誘ってくれてありがとう」
目が合うと、ほんの少しはにかみながら、僅かに朱く上気した頬に笑みを浮かべた。
ふといつもと違う違和感を感じ、目線が近いことに気づく。
ほんの数センチの差にも関わらず、いつもと違う感覚に胸が高鳴る。
どくり、どくりと心臓が嫌な鼓動を打つ。
――今がその時なのだろうか。
「……あのさ、リジー」
ハンカチを広げたくらいのスペースに、小さいオレンジの木が一本と、甘酸っぱい実をつける草花が伸びっぱなしで放置されていて、元々狭い場所が更に窮屈になっている。
教師でも滅多に立ち入らないので、恋人同士が逢瀬に使ったり、いたずら好きの生徒たちが集まって悪戯の算段を立てたり。
隠れて何かをするにはうってつけの場所だ。
点々と続くキャンドルに誘われて細い道を行くと小さな門に出くわした。
長いこと開かれていないようで蔦が複雑に絡まっている。
木製の門を数回、一定のリズムでノックすると、内側から掛けられた錠がひとりでに開き、古い木枠がギイィィ……と軋みながら重苦しく開いた。
門をくぐった瞬間、微かに空気が変わるのを感じた。
道の真ん中に立つオレンジの木、その足元に立てられた看板に従って、向かって右手側を通ると見えないカーテンを知らずに潜り抜けた。
カーテンを潜った先はまるで別世界だった。
どこからともなく漂ってくる甘い香り、賑やかなバグパイプの音、頭上にぶら下がる無数の色とりどりのランタン。
参加者たちは談笑したり、ひたすらケーキを食べたり、ダンスに興じたりと、みな思い思いに過ごしている。
一際目を引くクイディッチの競技場を模した大きなケーキの上では、飴細工で出来た選手たちが激しいゲームを繰り広げていた。
魔法で広げられたパーティー会場には、ざっと数えても300人程の生徒が出入りしているがスペース的には全く問題はない。
ニュートはあまりの賑やかさにすっかり圧倒され、リジーは大喜びで彼の腕を引っ張って踊り出た。
手拍子を交えた愉快なポルカに合わせて跳ね回る。
踊り方も知らずに、見よう見まねででたらめなステップを踏んでくるくる舞い踊る。
腰に腕をまわして、手を取り合って。
一歩踏み出すたびに若草色が風に揺られて宙を掠める。
時間は決して波長を乱さず、いつも通りのんびりと後から付いてきて一瞬一瞬が恐ろしく長く感じる。
待ちかねていたその瞬間が目の前まで迫っていた。
言うか、言わないか。
時期を逃したらきっともう二度とタイミングは訪れない、今ここで当たって砕けるか。
運良く実るかのどちらか。
曲が終盤に差し掛かり、最骨頂を迎え、最後を結ぶとあちこちから拍手が起こった。
「楽しいね、ニュート」
「ああ、そうだね」
リジーが何か言った気がしたが、緊張でそれどころでなかったニュートは、半分上の空で返した。
「誘ってくれてありがとう」
目が合うと、ほんの少しはにかみながら、僅かに朱く上気した頬に笑みを浮かべた。
ふといつもと違う違和感を感じ、目線が近いことに気づく。
ほんの数センチの差にも関わらず、いつもと違う感覚に胸が高鳴る。
どくり、どくりと心臓が嫌な鼓動を打つ。
――今がその時なのだろうか。
「……あのさ、リジー」