Ⅱ
夢小説設定
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ショーン・フィネガンは優柔不断で流されやすくてお調子者で、紳士としては落第点。
成績は可もなく不可もなくといったところだったが、これは単純に本人のやる気の問題で、本来は記憶力も良く、所謂やればできる子で、やるかやらないかの違いだ。
生来人好きする性格ゆえか、寮を問わず友人も多く、常に人気者だった。
彼にとってリジーは実に一目惚れであった。
彼女と何とかお近づきになろうとあの手この手を尽くし、例えばフランス文学に出てくるような熱烈なラブレターを書いたり、彼女宛てに100本のバラの花束を贈ったり、それこそ小さな男の子が好きな子の気を引くためにやるような幼稚な悪戯まで。
とにかく思いつく限りの手を尽くした。
それなのに、一世一代の大告白は敢えなく玉砕に終わった。
それでも彼はめげずにすぐに他の道を考え始めた。
ある意味で図太いのもショーンの取り柄である。
そして、以前にも増して一層好意を全面に押し出した。
しかし、それもうまく行かなかった。
そしてある日、彼にとってそれはもう人類の敵といっても過言ではない奴が現れた。
奴はあろうことか、自分たちと一つしか違わないくせに見上げるほどに背が高くて、リジーと何だか知らないが楽しそうに話してて、二人でいるところを目にする度にショーンは打ちのめされた。
意気消沈し、それでもどこか諦めきれず、気持ちに収拾が付かないまま、失恋の痛みをずるずると引きずっていた。
夕方、太陽がオレンジ色の放射線を描きながら一日の終わりを告げ、名残惜しげに湖の向こうへ沈みかける頃。
グリフィンドールの談話室で偶然はち合わせた二人は、どこか居心地悪く二言三言、言葉を交わし、ショーンはそのまま部屋に引き下がろうとした。
リジーは心の中ではとっくに答えは出ていたがショーンを見た途端、罪悪感に胸が押し潰されそうになり一瞬心が揺らいだ。
「ごめんなさい、ショーン」
それでもやっぱり自分の気持ちに嘘はつけないし、彼と私は合わない。
肩を落として、疲れた様子で石階段の先に消えていくショーンの背中に小さく呟いた。
聞こえるか聞こえないかぐらいの小さな声だったのに、驚いたことにショーンは男子寮に続くドアの手前で引き返して石階段を駆け下りてきた。
「もう一度だけ、チャンスが欲しい」
僅かに息を弾ませながら、ショーンはリジーを真っ直ぐ見つめた。
彼のいつになく真剣な様子に思わず頷いてしまいそうだったが、リジーは静かに首を横に振った。
「……やっぱり、あいつには勝てないんだ」
「どういう意味?」
「あいつが、スキャマンダーのことが好きなんだろ」
「……」
「みんな言ってるよ、当人たちが知らないだけで」
リジーは数秒間の沈黙の後、「そうだよ」と呟いた。
「あいつの、どこがいいんだよ……っ」
ショーンは拳をぎゅっと握りしめながら、思わず声を詰まらせる。
「比べることなんてできないよ、そもそも違う人間なんだから」
「んだよそれ、男なんて中身はそう変わんねーよ」
悔しさと悲しみが苛立ちへと変わっていく。
ぽたぽたと溢れ出た涙が絨毯にしみをつくる。
「俺は、本気でリジーのこと好きなのに、どうして……っ」
よくよく慎重に言葉を選びながら、傷つけない言葉を探したが見つからなかった。
出来ればこのまま何もかも無かったことにしたい、曖昧にしたまま何もかも忘れて。
でも、どっちに行っても傷つく道しかないなら、私は。
「私は、あなたが思ってるほど可愛くもないし、賢くもないし、天使でもない」
「へ……」
「勉強はどっちかって言うと嫌いだし、平気で森に入るし、寮の点が減ってもさして気にならない」
思ったより悪いやつなんだよ、私。知らなかったでしょ。
「ショーンの気持ちはすごく嬉しい、勇気を持って伝えてくれた事も。でも私は、それに応えることはできない」
ごめんなさい、と一言。
彼女なりのショーンへの精一杯の誠意だった。
「俺、何も知らなかった、リジーのことなら何でも知ってると思ってたのに」
ショーンは服の袖で目元をゴシゴシ拭いながら小さく鼻を啜った。
「もう、これできっぱり諦めるよ、だから……これからも友達でいてくれる?」
うん、リジーは頷いて、すっと右手を差し出した。
ショーンはしばし呆然とその様子を眺めた後おずおずと握った。
騒動から数カ月後。
ホグワーツ恒例の一大イベントであるダンスパーティーをいよいよ間近に控え、生徒たちはみな浮き足立ち、授業も身に入らず、気もそぞろだった。
女子たちはドレスや夢のような一夜に胸を膨らませながら、男子たちは誰がいち早く女の子をダンスに誘えるか挙って競い合った。
ある者は歓喜し、大いに青春を謳歌し、
またある者は時に涙して、苦い思い出をその胸に刻んだ。
成績は可もなく不可もなくといったところだったが、これは単純に本人のやる気の問題で、本来は記憶力も良く、所謂やればできる子で、やるかやらないかの違いだ。
生来人好きする性格ゆえか、寮を問わず友人も多く、常に人気者だった。
彼にとってリジーは実に一目惚れであった。
彼女と何とかお近づきになろうとあの手この手を尽くし、例えばフランス文学に出てくるような熱烈なラブレターを書いたり、彼女宛てに100本のバラの花束を贈ったり、それこそ小さな男の子が好きな子の気を引くためにやるような幼稚な悪戯まで。
とにかく思いつく限りの手を尽くした。
それなのに、一世一代の大告白は敢えなく玉砕に終わった。
それでも彼はめげずにすぐに他の道を考え始めた。
ある意味で図太いのもショーンの取り柄である。
そして、以前にも増して一層好意を全面に押し出した。
しかし、それもうまく行かなかった。
そしてある日、彼にとってそれはもう人類の敵といっても過言ではない奴が現れた。
奴はあろうことか、自分たちと一つしか違わないくせに見上げるほどに背が高くて、リジーと何だか知らないが楽しそうに話してて、二人でいるところを目にする度にショーンは打ちのめされた。
意気消沈し、それでもどこか諦めきれず、気持ちに収拾が付かないまま、失恋の痛みをずるずると引きずっていた。
夕方、太陽がオレンジ色の放射線を描きながら一日の終わりを告げ、名残惜しげに湖の向こうへ沈みかける頃。
グリフィンドールの談話室で偶然はち合わせた二人は、どこか居心地悪く二言三言、言葉を交わし、ショーンはそのまま部屋に引き下がろうとした。
リジーは心の中ではとっくに答えは出ていたがショーンを見た途端、罪悪感に胸が押し潰されそうになり一瞬心が揺らいだ。
「ごめんなさい、ショーン」
それでもやっぱり自分の気持ちに嘘はつけないし、彼と私は合わない。
肩を落として、疲れた様子で石階段の先に消えていくショーンの背中に小さく呟いた。
聞こえるか聞こえないかぐらいの小さな声だったのに、驚いたことにショーンは男子寮に続くドアの手前で引き返して石階段を駆け下りてきた。
「もう一度だけ、チャンスが欲しい」
僅かに息を弾ませながら、ショーンはリジーを真っ直ぐ見つめた。
彼のいつになく真剣な様子に思わず頷いてしまいそうだったが、リジーは静かに首を横に振った。
「……やっぱり、あいつには勝てないんだ」
「どういう意味?」
「あいつが、スキャマンダーのことが好きなんだろ」
「……」
「みんな言ってるよ、当人たちが知らないだけで」
リジーは数秒間の沈黙の後、「そうだよ」と呟いた。
「あいつの、どこがいいんだよ……っ」
ショーンは拳をぎゅっと握りしめながら、思わず声を詰まらせる。
「比べることなんてできないよ、そもそも違う人間なんだから」
「んだよそれ、男なんて中身はそう変わんねーよ」
悔しさと悲しみが苛立ちへと変わっていく。
ぽたぽたと溢れ出た涙が絨毯にしみをつくる。
「俺は、本気でリジーのこと好きなのに、どうして……っ」
よくよく慎重に言葉を選びながら、傷つけない言葉を探したが見つからなかった。
出来ればこのまま何もかも無かったことにしたい、曖昧にしたまま何もかも忘れて。
でも、どっちに行っても傷つく道しかないなら、私は。
「私は、あなたが思ってるほど可愛くもないし、賢くもないし、天使でもない」
「へ……」
「勉強はどっちかって言うと嫌いだし、平気で森に入るし、寮の点が減ってもさして気にならない」
思ったより悪いやつなんだよ、私。知らなかったでしょ。
「ショーンの気持ちはすごく嬉しい、勇気を持って伝えてくれた事も。でも私は、それに応えることはできない」
ごめんなさい、と一言。
彼女なりのショーンへの精一杯の誠意だった。
「俺、何も知らなかった、リジーのことなら何でも知ってると思ってたのに」
ショーンは服の袖で目元をゴシゴシ拭いながら小さく鼻を啜った。
「もう、これできっぱり諦めるよ、だから……これからも友達でいてくれる?」
うん、リジーは頷いて、すっと右手を差し出した。
ショーンはしばし呆然とその様子を眺めた後おずおずと握った。
騒動から数カ月後。
ホグワーツ恒例の一大イベントであるダンスパーティーをいよいよ間近に控え、生徒たちはみな浮き足立ち、授業も身に入らず、気もそぞろだった。
女子たちはドレスや夢のような一夜に胸を膨らませながら、男子たちは誰がいち早く女の子をダンスに誘えるか挙って競い合った。
ある者は歓喜し、大いに青春を謳歌し、
またある者は時に涙して、苦い思い出をその胸に刻んだ。