Ⅱ
夢小説設定
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屋敷しもべ妖精たちの朝は早い。
早朝、まだ日が登りきってないうちから朝食の準備に取り掛かる。
朝の一時、厨房は戦場と化す。
サラダをこしらえ、パンをトーストにして、デザートまで完璧に。
前日から下ごしらえをしておいたスープが鍋の中で温まってきた頃、錫製の大鍋が床に叩きつけられ悲鳴を上げる音と、新入りの屋敷しもべ妖精のか細い頓狂な声が重なった。
一番古株の料理長と呼ばれている屋敷しもべ妖精の怒号が飛ぶ。
慌てふためいて泡を食った新入りは、床で公転しながら泣き喚く鍋を捕まえて、青白い顔で食器棚の方を指さした。
“銀食器が、元通りになってます! ”
朝、いつも通り一番に目が覚めたミニーは、寝ぼけ眼を擦りながら、何気なくベッド脇のキャビネットを見た。
二、三度ぱちぱちと目を瞬き、ごしごし擦って、夢でも見ているような心地で恐る恐る手を伸ばす。
失くしたはずのロケットが朝日を受けてきらきらと輝いていた。
「……オルガ、リジー、 二人とも起きて! 早く! 」
そうして、リジーとニュートの暗躍により、なくしものは元の持ち主の手元に戻っていった。
聞き込みにより得た情報と照らし合わせながら、一つまた一つと数日間掛けてリストを全部消化していき、最後にリジーの手元には、持ち主の分からないブローチが一つ残った。
「リタ、」
「ああ、リジーちゃん。どうしたの?」
「お願いがあるんだけど……」
リジーがブローチを取り出すとリタは小さくあっ、と声を上げる。
「これ、シエナに返しといてくれない?」
リタはブローチを手の上に乗せ、ターコイズブルーの花をそっと撫でた。
色褪せた幼い日の記憶がふつふつと蘇る。
大きな書斎、ステキなものがいっぱい飾られたガラスのショーケース、可愛いブロンド。
「このブローチ、どこで……」
「森で拾ったの」
「森? ……あんたたち、まさか」
彼女は察した様子で、思わず声を張り上げ、慌てて口元を抑えた。
「何も言わないで。適当に机の上にでも置いといてくれたらいいの、それかあなたが拾ったことにして」
「だめよ、そんなの」
「お互い気まずい思いをしたくないの、お願い」
リタはほんの数秒迷った挙句、一つ息をついてブローチをローブの内ポケットに滑り込ませた。
「……分かった、私から彼女に渡しておくわ」
「お願いね、大切なものだろうから」
「ええ、とても。ありがとうリジーちゃん」
ーー
「どこでこれを……?」
リジーちゃんが。
リタが短く答えると、シエナは僅かに目を見開いた。
「あなたには言わないでって、口止めされたわ」
「そう、だったの……」
シエナはブローチをそっと手の中に収めて目を伏せた。
「もう意地を張るのは止しなさいな」
幼い頃から姉妹同然のように育ってきた二人。
リタはシエナを実の妹のように可愛がり、シエナも彼女を姉と慕い、それは互いに成長してホグワーツに入っても変わらず。
リタはシエナの良き理解者で、彼女の苦悩もよく知っていた。
幼い頃からそうしてきたように、優しく諭し、妹のブロンドの髪をそっと撫でた。
じわっと視界が滲んで、涙が溢れ、ぽたぽたと手の甲を濡らす。
母の形見のブローチを胸に抱いて、リタの肩で声を押し殺して涙した。
早朝、まだ日が登りきってないうちから朝食の準備に取り掛かる。
朝の一時、厨房は戦場と化す。
サラダをこしらえ、パンをトーストにして、デザートまで完璧に。
前日から下ごしらえをしておいたスープが鍋の中で温まってきた頃、錫製の大鍋が床に叩きつけられ悲鳴を上げる音と、新入りの屋敷しもべ妖精のか細い頓狂な声が重なった。
一番古株の料理長と呼ばれている屋敷しもべ妖精の怒号が飛ぶ。
慌てふためいて泡を食った新入りは、床で公転しながら泣き喚く鍋を捕まえて、青白い顔で食器棚の方を指さした。
“銀食器が、元通りになってます! ”
朝、いつも通り一番に目が覚めたミニーは、寝ぼけ眼を擦りながら、何気なくベッド脇のキャビネットを見た。
二、三度ぱちぱちと目を瞬き、ごしごし擦って、夢でも見ているような心地で恐る恐る手を伸ばす。
失くしたはずのロケットが朝日を受けてきらきらと輝いていた。
「……オルガ、リジー、 二人とも起きて! 早く! 」
そうして、リジーとニュートの暗躍により、なくしものは元の持ち主の手元に戻っていった。
聞き込みにより得た情報と照らし合わせながら、一つまた一つと数日間掛けてリストを全部消化していき、最後にリジーの手元には、持ち主の分からないブローチが一つ残った。
「リタ、」
「ああ、リジーちゃん。どうしたの?」
「お願いがあるんだけど……」
リジーがブローチを取り出すとリタは小さくあっ、と声を上げる。
「これ、シエナに返しといてくれない?」
リタはブローチを手の上に乗せ、ターコイズブルーの花をそっと撫でた。
色褪せた幼い日の記憶がふつふつと蘇る。
大きな書斎、ステキなものがいっぱい飾られたガラスのショーケース、可愛いブロンド。
「このブローチ、どこで……」
「森で拾ったの」
「森? ……あんたたち、まさか」
彼女は察した様子で、思わず声を張り上げ、慌てて口元を抑えた。
「何も言わないで。適当に机の上にでも置いといてくれたらいいの、それかあなたが拾ったことにして」
「だめよ、そんなの」
「お互い気まずい思いをしたくないの、お願い」
リタはほんの数秒迷った挙句、一つ息をついてブローチをローブの内ポケットに滑り込ませた。
「……分かった、私から彼女に渡しておくわ」
「お願いね、大切なものだろうから」
「ええ、とても。ありがとうリジーちゃん」
ーー
「どこでこれを……?」
リジーちゃんが。
リタが短く答えると、シエナは僅かに目を見開いた。
「あなたには言わないでって、口止めされたわ」
「そう、だったの……」
シエナはブローチをそっと手の中に収めて目を伏せた。
「もう意地を張るのは止しなさいな」
幼い頃から姉妹同然のように育ってきた二人。
リタはシエナを実の妹のように可愛がり、シエナも彼女を姉と慕い、それは互いに成長してホグワーツに入っても変わらず。
リタはシエナの良き理解者で、彼女の苦悩もよく知っていた。
幼い頃からそうしてきたように、優しく諭し、妹のブロンドの髪をそっと撫でた。
じわっと視界が滲んで、涙が溢れ、ぽたぽたと手の甲を濡らす。
母の形見のブローチを胸に抱いて、リタの肩で声を押し殺して涙した。