Ⅰ
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ニュート・スキャマンダーとリジー・ヴァンクスが初めて出会ったのは、二人がまだホグワーツの生徒だった頃。
ニュートが4年生、リジーが3年生の時だった。
冷たい木枯らしに身を竦めながら、ハッフルパフ寮生の証である黄色と黒のツートンのマフラーを巻いて、4年生になるニュート・スキャマンダーはホグワーツの中庭を歩いていた。
ひらひら舞い落ちる枯れ葉を見てもうそんな季節なのかと今更ながら実感する。
動物たちの多くはこれから冬に向けて冬眠の準備に入る季節だ。
考え事をしながらぼんやりと歩いていたらいつの間にかすぐ目の前まで木が迫ってきていて危うく激突しそうになったり
時には持っていた課題のファイルを道の真ん中でぶち撒けたりした。
その様子を見て他の生徒たちがくすくす笑う声が嫌でも耳に入ってくる。
口下手で要領が悪く、劣等生として知られる彼に手を差し伸べる者はいなかった。
寮監のマダム・ポモーナ・スプラウト教授に課題を提出した後
(その際ちゃんと前を見て歩くよう釘を刺された)
真っ先に兎小屋に向かった。
ここの兎たちは時折ニュートが面倒を見ていた。
生来コミュニケーションを取るのが苦手な彼にとっては、人と接するより動物たちといた方が気が楽だった。
どこまでもただひたすらに純粋で愛くるしい姿は何時間でも見ていられたし、その生態は彼の心を惹きつけてやまなかった。
次に温室に立ち寄った。
ここでは授業の一環でマンドレイクなどの魔法植物を育てている。
それらの水やりもニュートは自ら進んでやっていた。
特にマンドレイクは、植え替える時のあの悲鳴だけはどうにもならないが、水やりの時に土がたっぷりと水を吸って嬉しそうに葉が揺れるところなど、どうにも愛着を抱かずにはいられなかった。
しかし、この日は違った。
既に先客がいたのだ。
温室の隅にいつの間にかいた少女と目が合う。
驚いて思わずじょうろを取り落としそうになった。
「わっ、あ、ええっと、ごめん」
「こ、こちらこそごめんなさい……っ」
ニュートが謝ると、少女も目を白黒させて謝った。
「これ、急いで終わらせるから……」
「私は、大丈夫なので……お気になさらず……」
気を取り直して水やりに専念することにした。
「……あ、あの!」
少女が思い切った様子で一歩踏み出した。
「えっと……いつも兎のお世話をしてくれてますよね……?」
「あ、まあ、うん、たまに……」
「その、前からお礼を言わなきゃって……ほんとは、私のクラスが係なんですけど、私も中々行けなくて……ありがとうございますっ」
ニュートは驚き戸惑った。
指を指して笑われることはあったが礼を言われた事など一度もなかったから。
「僕が好きでやってるだけだから、お礼なんて……」
「いえ、ほんとに……ありがとうございます」
ましてや自分から好き好んでやってることなのに礼を言われるなど考えたこともなかったのだ。
「あの、お名前は……?」
「ニュート・スキャマンダー……君は?」
「リジー・ヴァンクス、です」
――
「……その、手に持ってるのは?」
リジーがずっと何かを大事そうに持っているのを見て、ニュートはたまらず尋ねた。
「ごめん……気にしないで」
リジーは小さく首を横に振って、そっと掌を開いて見せた。
「……小鳥?」
まだ羽も生え揃っていない小さな雛鳥が彼女の手の中でぐったりしていた。
「そこで拾って、たぶん巣から落ちちゃったんだと思うんですけど……」
「それで、ずっと?」
「ここは滅多に人も来ないし……何もしないよりはマシだから……」
彼女は小さく呟いた。
巣から落ちた雛はもう助からない。
親鳥がその子を育てないから。
寒さと飢えにより弱った雛はやがて死んでいく。
それでも、懸命に生きようとしている小さな命を見捨てることなど出来なかった。
(リーン、ゴーン……リーン、ゴーン……)
授業の開始を知らせる重厚な鐘の音が響く。
中庭にいた生徒たちも慌てて教室目指して走り出す。
「……予鈴、鳴ってますよ」
「……君は、どうするの?」
「私、は……この子を置いていくわけには……」
雛は弱り切っていた。
今誰かが見ていてやらないとすぐに死んでしまうだろう。
「……ちょっと待ってて」
ニュートは温室を飛び出して走った。
授業のことは頭になかった。
これを逃したら次の試験で欠点を取ることは確実だったが、それよりも優先すべきことが目の前にあった。
二人は懸命に生き長らえさせようとしたが、雛は一度も鳴くこともなく、静かに息を引き取った。
雛は、心優しい生徒たちの手により静かな湖の畔に埋葬された。
この一件をきっかけに、二人が互いに親しい間柄となる
……のは、もう少し先のことだった。
ニュートが4年生、リジーが3年生の時だった。
冷たい木枯らしに身を竦めながら、ハッフルパフ寮生の証である黄色と黒のツートンのマフラーを巻いて、4年生になるニュート・スキャマンダーはホグワーツの中庭を歩いていた。
ひらひら舞い落ちる枯れ葉を見てもうそんな季節なのかと今更ながら実感する。
動物たちの多くはこれから冬に向けて冬眠の準備に入る季節だ。
考え事をしながらぼんやりと歩いていたらいつの間にかすぐ目の前まで木が迫ってきていて危うく激突しそうになったり
時には持っていた課題のファイルを道の真ん中でぶち撒けたりした。
その様子を見て他の生徒たちがくすくす笑う声が嫌でも耳に入ってくる。
口下手で要領が悪く、劣等生として知られる彼に手を差し伸べる者はいなかった。
寮監のマダム・ポモーナ・スプラウト教授に課題を提出した後
(その際ちゃんと前を見て歩くよう釘を刺された)
真っ先に兎小屋に向かった。
ここの兎たちは時折ニュートが面倒を見ていた。
生来コミュニケーションを取るのが苦手な彼にとっては、人と接するより動物たちといた方が気が楽だった。
どこまでもただひたすらに純粋で愛くるしい姿は何時間でも見ていられたし、その生態は彼の心を惹きつけてやまなかった。
次に温室に立ち寄った。
ここでは授業の一環でマンドレイクなどの魔法植物を育てている。
それらの水やりもニュートは自ら進んでやっていた。
特にマンドレイクは、植え替える時のあの悲鳴だけはどうにもならないが、水やりの時に土がたっぷりと水を吸って嬉しそうに葉が揺れるところなど、どうにも愛着を抱かずにはいられなかった。
しかし、この日は違った。
既に先客がいたのだ。
温室の隅にいつの間にかいた少女と目が合う。
驚いて思わずじょうろを取り落としそうになった。
「わっ、あ、ええっと、ごめん」
「こ、こちらこそごめんなさい……っ」
ニュートが謝ると、少女も目を白黒させて謝った。
「これ、急いで終わらせるから……」
「私は、大丈夫なので……お気になさらず……」
気を取り直して水やりに専念することにした。
「……あ、あの!」
少女が思い切った様子で一歩踏み出した。
「えっと……いつも兎のお世話をしてくれてますよね……?」
「あ、まあ、うん、たまに……」
「その、前からお礼を言わなきゃって……ほんとは、私のクラスが係なんですけど、私も中々行けなくて……ありがとうございますっ」
ニュートは驚き戸惑った。
指を指して笑われることはあったが礼を言われた事など一度もなかったから。
「僕が好きでやってるだけだから、お礼なんて……」
「いえ、ほんとに……ありがとうございます」
ましてや自分から好き好んでやってることなのに礼を言われるなど考えたこともなかったのだ。
「あの、お名前は……?」
「ニュート・スキャマンダー……君は?」
「リジー・ヴァンクス、です」
――
「……その、手に持ってるのは?」
リジーがずっと何かを大事そうに持っているのを見て、ニュートはたまらず尋ねた。
「ごめん……気にしないで」
リジーは小さく首を横に振って、そっと掌を開いて見せた。
「……小鳥?」
まだ羽も生え揃っていない小さな雛鳥が彼女の手の中でぐったりしていた。
「そこで拾って、たぶん巣から落ちちゃったんだと思うんですけど……」
「それで、ずっと?」
「ここは滅多に人も来ないし……何もしないよりはマシだから……」
彼女は小さく呟いた。
巣から落ちた雛はもう助からない。
親鳥がその子を育てないから。
寒さと飢えにより弱った雛はやがて死んでいく。
それでも、懸命に生きようとしている小さな命を見捨てることなど出来なかった。
(リーン、ゴーン……リーン、ゴーン……)
授業の開始を知らせる重厚な鐘の音が響く。
中庭にいた生徒たちも慌てて教室目指して走り出す。
「……予鈴、鳴ってますよ」
「……君は、どうするの?」
「私、は……この子を置いていくわけには……」
雛は弱り切っていた。
今誰かが見ていてやらないとすぐに死んでしまうだろう。
「……ちょっと待ってて」
ニュートは温室を飛び出して走った。
授業のことは頭になかった。
これを逃したら次の試験で欠点を取ることは確実だったが、それよりも優先すべきことが目の前にあった。
二人は懸命に生き長らえさせようとしたが、雛は一度も鳴くこともなく、静かに息を引き取った。
雛は、心優しい生徒たちの手により静かな湖の畔に埋葬された。
この一件をきっかけに、二人が互いに親しい間柄となる
……のは、もう少し先のことだった。