Ⅲ
夢小説設定
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「新しい闇祓いを秘書につけたそうね」
MACUSAの長い廊下を闊歩しながらピッカリーは素っ気なく尋ねる。
後ろを歩いていたグレイブスは、彼女が歩く度に翻る長いローブについていくように歩みを進めた。
「英国からの出向要員です。まだ若いですが、優秀で」
「そう……あなたにも手伝いが必要よね」
「……こう見えても、人の子ですので」
「その件について、内部では疑問の声も上がってるけど」
グレイブスは控えめに咳払いする、ピッカリーは彼に背を向けたまま薄く笑みを浮かべる。
しかしそれも一瞬のことですぐに笑みを引っ込めて表情を鋭くさせた。
「良くない噂を聞きました」
「……何について?」
「戦争の英雄についてです、イギリスの。ご友人だとか」
「友人と言えるほどよくは知りませんが」
「公私の区別に問題があるそうで」
ピッカリーは足をとめ、グレイブスに向き直った。
グレイブスはちらりと周囲に視線を巡らせ、首を傾げて耳を傾ける。
ピッカリーはワントーン抑えた静かな声で口を開いた。
「とある事件関係者の親族と極秘結婚したとか」
「まさか……重要事件の?」
「名前を言えば誰でもすぐに分かる……レストレンジ」
ああ、とグレイブスは思わずため息をもらす。
アーチボルド・レストレンジの逮捕の報せは海を越え、ヨーロッパ各国の魔法省、魔法議会にどよめきをもたらしたことはまだ記憶に新しい。
「局内で単独行動してるとの噂も……信奉者ではないかと案じている者もいます」
「若さゆえ少々感情的になることはありましたが、芯の通った男です」
「……あなたの新しい秘書は、元上司の影響を反映してないと言えますか?」
ピッカリーは真っ直ぐにグレイブスの目を見つめて尋ねる。
――全く心当たりがないか、と言われれば嘘だった。
セーレム救世軍の少年と接触して以来、彼女が人目を忍んで陰で動いていることにグレイブスも薄々気づいていたのだ。
しかし、あえて静観していたのも事実だった。
一目会った時から感じていた、あの少年……クリーデンス・ベアボーン。
恐らくスクイブだろうが、それとは違う"何か"を怯えた瞳の奥に宿していた。
立場上、自分は表立って動けない。しかし、もし彼女が失態を犯したとしても。
彼女があくまで「英国からの出向要員」である限り、こちらの醜聞は比較的少なく済む。
つまり、ある程度野放しにしておいた方がこちらにとっても都合が良いのだ。
「……少し、様子を見させてください。何かあれば私の方から注意します」
グレイブスは表情を変えぬまま静かに答える。
それを聞いてピッカリーは安堵したように小さく頷いた。
「あなたに一任します、グレイブス」
MACUSAの長い廊下を闊歩しながらピッカリーは素っ気なく尋ねる。
後ろを歩いていたグレイブスは、彼女が歩く度に翻る長いローブについていくように歩みを進めた。
「英国からの出向要員です。まだ若いですが、優秀で」
「そう……あなたにも手伝いが必要よね」
「……こう見えても、人の子ですので」
「その件について、内部では疑問の声も上がってるけど」
グレイブスは控えめに咳払いする、ピッカリーは彼に背を向けたまま薄く笑みを浮かべる。
しかしそれも一瞬のことですぐに笑みを引っ込めて表情を鋭くさせた。
「良くない噂を聞きました」
「……何について?」
「戦争の英雄についてです、イギリスの。ご友人だとか」
「友人と言えるほどよくは知りませんが」
「公私の区別に問題があるそうで」
ピッカリーは足をとめ、グレイブスに向き直った。
グレイブスはちらりと周囲に視線を巡らせ、首を傾げて耳を傾ける。
ピッカリーはワントーン抑えた静かな声で口を開いた。
「とある事件関係者の親族と極秘結婚したとか」
「まさか……重要事件の?」
「名前を言えば誰でもすぐに分かる……レストレンジ」
ああ、とグレイブスは思わずため息をもらす。
アーチボルド・レストレンジの逮捕の報せは海を越え、ヨーロッパ各国の魔法省、魔法議会にどよめきをもたらしたことはまだ記憶に新しい。
「局内で単独行動してるとの噂も……信奉者ではないかと案じている者もいます」
「若さゆえ少々感情的になることはありましたが、芯の通った男です」
「……あなたの新しい秘書は、元上司の影響を反映してないと言えますか?」
ピッカリーは真っ直ぐにグレイブスの目を見つめて尋ねる。
――全く心当たりがないか、と言われれば嘘だった。
セーレム救世軍の少年と接触して以来、彼女が人目を忍んで陰で動いていることにグレイブスも薄々気づいていたのだ。
しかし、あえて静観していたのも事実だった。
一目会った時から感じていた、あの少年……クリーデンス・ベアボーン。
恐らくスクイブだろうが、それとは違う"何か"を怯えた瞳の奥に宿していた。
立場上、自分は表立って動けない。しかし、もし彼女が失態を犯したとしても。
彼女があくまで「英国からの出向要員」である限り、こちらの醜聞は比較的少なく済む。
つまり、ある程度野放しにしておいた方がこちらにとっても都合が良いのだ。
「……少し、様子を見させてください。何かあれば私の方から注意します」
グレイブスは表情を変えぬまま静かに答える。
それを聞いてピッカリーは安堵したように小さく頷いた。
「あなたに一任します、グレイブス」