ナイトドリーム
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
洒落たジャズの音楽、華やかな夜をそのまま音符に並び換えたかのような、弾むサックスの音色にフラッパードレスの裾飾りが揺れる。
煌びやかなクリスタルのシャンデリアがちらちらと視界の端で輝いて、足下に水晶色の影を落とす。
なんでこんな所にいるんだろう、欲しいとも言ってないのに手渡されたシャンパンのふつふつと湧き上がる金色の泡をじっと見つめながらニュートは呆然と壁際に立ち尽くしていた。
「来なけりゃ良かった気がする」
ソファに腰掛けて退屈そうにハイヒールをつま先に引っ掛けながらリジーはため息をつく。
ニュートが黙ったままグラスを揺らしてシャンパンの炭酸を抜くのに夢中になっているので、リジーは横目で怪訝な眼差しを向ける。
「昔はパーティーってすごく楽しかったのに……結局明日も仕事だからお酒は飲めないし、徹夜なんてもってのほかだし。それにこれすぐ落ちてくるのよ?なんなのもうっ」
小さな羽飾りのついた真珠のヘッドピースを気にしながらリジーは頬杖をつく。
「そんなうっとおしそうなもの、取ってしまえばいいのに」というのがニュートの正直な意見だった。
「きっと年を取ったんだよ」
大人ってそういうもんだよ、とかそんな感じの意味を込めたつもりだった。
自分でも何かを間違えたのは分かった、相手が彼女でなかったら確実にこの場が凍りついていたことだろう。
何だかんだと付き合い始めてもう数年経つ恋人の一言に今更とやかく言う気も起きない。
リジーは小さくふふっと笑って「早くうちに帰って寝たいわ」と辟易と呟いた。
「……帰る前に一曲、踊ってかない?」
気の抜けたシャンパンにちょびちょび口をつけながら、わざとそっぽを向いて何気ない口調で不意に尋ねる。
リジーは驚いてニュートの顔を見上げた、奥手な彼がまさかダンスに誘ってくるとは。
「……踊るのは別に構わないけど、帰るのはダメよ。ニュートのための出版記念パーティなんだから」
「みんな酔っ払ってるし、誰も近づいてこないし……」
「それは……こんな隅っこでぽつんとしてるのがミスター・スキャマンダーだとは誰も思わないからよ」
妙なプライドが邪魔して素直に手を取れなくてリジーはあれこれと話を逸らそうとする。
ニュートはちらりとリジーの目を見て、からかうように目元を綻ばせた。
「踊れないんだリジー」
何も言わなくても通じ合う仲というのは素敵なことだが、時に不便である。
リジーは照れくさそうに笑って赤く染った頬を手で覆い隠した。
「大丈夫だよ、僕も踊れないから」
ニュートもおかしそうに笑いながら手を差し伸べる。
「あなた酔ってるのね」とニュートのグラスを取って残りのシャンパンを飲み干すと、リジーはぎこちなくニュートの手に手を重ねた。
「……こっちの手はどうするんだっけ」
繋いだ片方の手と、空いたもう片方の手を見て二人で首を傾げる。
両方とも手を繋いでみたりして何か違うと気づき、リジーは堪えきれずに声を上げて笑った。
「いやだわもう、なにをするつもり?」
「大丈夫、ステップは覚えてるから……たぶん」
腰に添えられた手に自然と体を引き寄せられる。
はて、この人はこんなに紳士然とした人だったろうか。
どうしようもなく胸が締めつけられて、くすぐったくて視線を交じわわせるのを戸惑うような、熱のこもった見つめ方をするような人だったか。
しっとりとした低いピアノの音とともに、ぎこちなく歩みを合わせる。
きれいだよ、とため息をつくように小さな声で囁いた。
▶あとがき
煌びやかなクリスタルのシャンデリアがちらちらと視界の端で輝いて、足下に水晶色の影を落とす。
なんでこんな所にいるんだろう、欲しいとも言ってないのに手渡されたシャンパンのふつふつと湧き上がる金色の泡をじっと見つめながらニュートは呆然と壁際に立ち尽くしていた。
「来なけりゃ良かった気がする」
ソファに腰掛けて退屈そうにハイヒールをつま先に引っ掛けながらリジーはため息をつく。
ニュートが黙ったままグラスを揺らしてシャンパンの炭酸を抜くのに夢中になっているので、リジーは横目で怪訝な眼差しを向ける。
「昔はパーティーってすごく楽しかったのに……結局明日も仕事だからお酒は飲めないし、徹夜なんてもってのほかだし。それにこれすぐ落ちてくるのよ?なんなのもうっ」
小さな羽飾りのついた真珠のヘッドピースを気にしながらリジーは頬杖をつく。
「そんなうっとおしそうなもの、取ってしまえばいいのに」というのがニュートの正直な意見だった。
「きっと年を取ったんだよ」
大人ってそういうもんだよ、とかそんな感じの意味を込めたつもりだった。
自分でも何かを間違えたのは分かった、相手が彼女でなかったら確実にこの場が凍りついていたことだろう。
何だかんだと付き合い始めてもう数年経つ恋人の一言に今更とやかく言う気も起きない。
リジーは小さくふふっと笑って「早くうちに帰って寝たいわ」と辟易と呟いた。
「……帰る前に一曲、踊ってかない?」
気の抜けたシャンパンにちょびちょび口をつけながら、わざとそっぽを向いて何気ない口調で不意に尋ねる。
リジーは驚いてニュートの顔を見上げた、奥手な彼がまさかダンスに誘ってくるとは。
「……踊るのは別に構わないけど、帰るのはダメよ。ニュートのための出版記念パーティなんだから」
「みんな酔っ払ってるし、誰も近づいてこないし……」
「それは……こんな隅っこでぽつんとしてるのがミスター・スキャマンダーだとは誰も思わないからよ」
妙なプライドが邪魔して素直に手を取れなくてリジーはあれこれと話を逸らそうとする。
ニュートはちらりとリジーの目を見て、からかうように目元を綻ばせた。
「踊れないんだリジー」
何も言わなくても通じ合う仲というのは素敵なことだが、時に不便である。
リジーは照れくさそうに笑って赤く染った頬を手で覆い隠した。
「大丈夫だよ、僕も踊れないから」
ニュートもおかしそうに笑いながら手を差し伸べる。
「あなた酔ってるのね」とニュートのグラスを取って残りのシャンパンを飲み干すと、リジーはぎこちなくニュートの手に手を重ねた。
「……こっちの手はどうするんだっけ」
繋いだ片方の手と、空いたもう片方の手を見て二人で首を傾げる。
両方とも手を繋いでみたりして何か違うと気づき、リジーは堪えきれずに声を上げて笑った。
「いやだわもう、なにをするつもり?」
「大丈夫、ステップは覚えてるから……たぶん」
腰に添えられた手に自然と体を引き寄せられる。
はて、この人はこんなに紳士然とした人だったろうか。
どうしようもなく胸が締めつけられて、くすぐったくて視線を交じわわせるのを戸惑うような、熱のこもった見つめ方をするような人だったか。
しっとりとした低いピアノの音とともに、ぎこちなく歩みを合わせる。
きれいだよ、とため息をつくように小さな声で囁いた。
▶あとがき
1/2ページ