黒須×旬


協会ロビーにて白川と最上がいつものように睨み合っていると水篠が通りかかった

「水篠ハンター」

「おや、今日はおひとりですね」

「最上ハンター、白川ハンター、こんにちは。…ひとり?」

基本協会に来るときは一人なのに変なことを言うな、と首をかしげて最上を見る

「ええ。いつも邪魔者がいるでしょう」

その言葉で直ぐに誰を指しているのかが判り、げんなりした顔を浮かべる

「ああ…。」

「随分と苦労している様ですね」

白川が苦笑しながら頭を撫でると避けるわけでもなく大人しく撫でられるものだから白川の機嫌も上がる。

「付き纏われてる」

「「ん゛っ」」

この前もそうだったが、黒須に対してあんまりな言い方に二人ともつい笑ってしまう

「ふ、ふふっ、可哀想に」

「くくっ、確かにしつこいですからね」

「前も聞きましたけど、あの人何とかなりませんか?」

「何とかは僕らもしたいと常々思っていますが、なんせあの性格ですからねえ」

「なんだかんだ最古参ギルドのマスターとしてやっていける実力はあるからな…」

こちらも複雑そうな顔を浮かべる2人に改めて厄介な人間だと思う。

「ですが、水篠ハンターがどうしてもやり返したいというのならば良い方法がありますよ」

「!なんですか?」

「僕たちともっと親密になってください。」

「…?」

「いいですか?黒須ハンターは貴方と距離を縮めたくてあれだけちょっかいをかけているんです。そんな中、僕たちと水篠ハンターが仲良くしていたら悔しがる顔くらいはきっと見れますよ」

如何ですか?といかにも親切な顔をして提案する最上を呆れた顔で白川が見る。
自分が水篠ハンターと親しくなりたいだけだろうに上手いこと黒須ハンターをだしにしたな。

「仲良く…どうやって?」

水篠が最上と白川を交互に見て問い掛ける。

「そうですね…先ずは飯でも一緒にどうですか?」

白川に誘われて言われてみれば何回も誘われているのに一緒に食事した事が無かったな、と了承する。

「行きます」

「それは良かった。それともう少し呼び方も親しくしましょうか。水篠ハンターを名前で呼んでも?」

「おい、それはいくらなんでも馴れ馴れしいだろう」

「いいですよ」

「ほら、本人は良いそうですよ。では旬、食事に行きましょう」

素直に言う事を聞く水篠に上機嫌になりながら背中を軽く押して車へと誘導し、先に助手席へと座らせた。
───あの日からこの警戒心の強い水篠とどうやって仲良くなろうかと考えていたが黒須も良い仕事をする。

最上の口が弧を描くのを見ていた白川が訝しげに問い掛けた

「…今度は何を企んでる?」

「企んでるとは人聞きが悪い。本音しか言っていませんよ。不運な事にあの男の手癖の悪さに引っかかってしまったようですが、本気では無いでしょうしその間にもっと親しくなろうかと」

「…はあ、手癖の悪さはお前も同じ様なものだろう」

「心外ですね。僕はそう言った意味では旬に興味はありません。ですが折角可愛い弟が出来たのですから懐いて欲しいと思うのは道理でしょう。白川社長は違うんですか?」

「…否定はしない」

「そうでしょうね。あの日の旬は可愛らしかったですから。さて、話していても仕方ありません。貴方も食事に行くんでしょう?」

「そもそも誘ったのは俺だが」

「そんなこと忘れました。ほら行きますよ。店はいつもの場所を予約してありますから。」

さっさと自分の車に乗り込んで発進させようとする最上にため息をついて自身の車に乗る。
まあ黒須の悪い話を聞かせてやろうと思っていたところだし、調度良いと思いながらアクセルを踏み最上の車を追いかけた。

***

後日

「白川さん、最上さん。この間のご飯美味しかった。また食べたい…駄目?」

「勿論良いですよ。旬が望むのなら今日でも行きましょうか」

「ああ、そうだな。他にも美味い店はあるが、そっちにするか?」

「ん…任せる」

2人に頭を撫でられるのが当たり前のようになっている水篠を見て黒須が大声で叫ぶ

「…はぁ!?今水篠ハンター最上と白川の事を【さん】付けで呼んだか!?しかも最上にいたっては今名前で呼んでただろ!!」

案の定焦ったような声をあげる黒須に3人はケラケラと笑い声をあげた

「ふ、はははっ!ええ、あなたの知らぬ間に仲良くなりまして。名前で呼ぶ様になったんですよ。ねえ、旬」

「ん゛っふふ、そう、最上さんと白川さんと仲良くなった。ね?」

「くっ、ははっ!そうだな。旬と飯にも行ったしな」

水篠は兎も角最上と白川は明らかに日頃の恨みを発散させようとしているのが目に見えて腹が立つ。

「…チッ、水篠ハンター、俺も名前で呼んでいいか?良いよな?」

「絶対嫌」

「なんでだよ!」

「減る」

「減る訳ないだろ!?」

「精神が減る」

「「ぶっ」」

バッサリと切り捨てていく水篠が面白くて堪らない。

「まるで相手にされていないな」

「本当ですね、可哀想に。…旬、此方に来なさい」

最上が手招きをすると素直に寄ってくる旬の頭を撫で顔を寄せる

「?最上さん、どうしたの?」

「いいえ、何でもありませんよ。」

「?ふーん」

そのまま軽く頬に口付けた

「えっ!?」

「おい、最上」

「ふふ、可愛らしかったものでつい…嫌でしたか?」

「え…や、別に嫌じゃない。びっくりはしたけど」

流石に焦って白川が止めようとするが最上はどこ吹く風で旬に問いかける。旬も嫌では無かったので照れたようにはにかんでいて、またそれが可愛らしい。
そして旬に見えないよう、黒須に見せつける様ににやりと笑う最上を見て黒須が旬の背後へ黙って近づき、腕を掴む

「え?…なに」

「…」

ムッとした顔で腕を解こうとする旬だが、手はがっしりと握られていて解けない

「ちょっと来い」

「やだ」

「チッ、いいから来い」

いつもの軽い調子では無く本気で怒っている様子に少し戸惑うが、旬はもう意地でもいうことは聞かないと決めているのだ。誰がついていくものか、の気持ちで振り払おうとしたのだが思った以上に力を籠められている。

「黒須ハンター、離して」

「…」

「黒須、離してやれ」

「本気で嫌われますよ」

黙って旬を引っ張りどこかへ連れて行こうとする黒須を白川と最上が止める。

「白川、最上。黙ってろ。…水篠、来い」

「行かない!離せって!」

「煩い。いい加減にしろ。」

「っ!」

白川と最上の両名を睨みつけ、少し怯んだ旬の手を無理矢理引いて連れ出した。

「…お前、とんでもなく余計な事をしたんじゃないか?」

「…僕もそんな気がしますね。…まさか黒須ハンターがあそこまで旬に本気だとは思いもしませんでした」

2人とも黒須の手癖の悪さは知っていたし、今回も旬の見目が良いばかりに運悪く気に入られてしまっただけで黒須も一時的な悪ふざけをしているだけだと思っていたのだ。落ち着いたのなら弟扱いに戻るだろう、と。だがあれはまるで…

「…旬には後で謝りましょう」

「そうしろ。…もうあの状態まで来たら逃げられないだろうしな」

旬のこの後を想像して可哀想な気持ちになりながら黙って出ていった扉を見つめていた。












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