黒須×旬
「黒須ハンター!」
「げ」
定例会議後、ロビーで4人話し込んでいると猫なで声で呼ばれ、嫌な予感がしてつい声が漏れてしまった。
拙い。本当に拙い。今この場には旬がいるのに。
「黒須ハンター!会議お疲れ様でした!ギルドに戻られますよね?俺と一緒に戻りましょう?」
俺が何も言っていないのに腕を絡ませ、媚びを売ってくるこいつは先日死神ギルドに迎え入れたA級のハンター。最初は態度がとても丁寧だったので、A級ということもあり目をかけていたのだが、いつの間にかこうなっていた。
旬には遠く及ばないものの、見目の良さに胡座をかいたような自信満々な態度でアプローチされて正直辟易していたが…まさか協会まで来るとは。
そうだ、旬はどうしている?と思って表情を伺えば…完全なる無表情。……何を考えているのか本当に読めない。いつも俺の前では表情豊かだったので忘れていたが、出会ったばかりの頃のように感情を微塵も宿していない顔をしている。お、怒ってるのか…?
「…はぁ…黒須ハンター。ギルドマスター同士の会話に割り込むような不躾な人間をギルドに入れたんですか?」
「礼儀作法から学ばせた方が良いのでは?」
最上と白川の視線が痛い。暗に「早く何とかしろ」という声が聞こえてくる。しかもこのふたりはなんだかんだ弟分として旬に目をかけている為、若干の殺意まで滲んでいるように感じる。
「あー…そうだな、悪い。…最上ハンターと白川ハンターの言う通りだ。ギルドマスター同士の会話に割り込んでくるな」
「ごめんなさい、黒須ハンターが見えたから嬉しくてつい…」
素直に謝罪し、悲しげに眉を下げる姿を見ても何ら心は動かない。というか媚び売りが露骨なんだよなこいつ…。どうしたものかと迷っていたら、旬が無表情のまま1歩俺の方に歩み寄ってきて。
「…黒須ハンター。それから、そこの人」
「なっ、なんだ…?」
「お、俺ですか…?」
背中に嫌な汗が流れる。まさか別れるとか言わねえよな…?
最上と白川に、助けろ!と目線を送った瞬間2人とも明後日の方を向きやがった。この薄情者が…!
「そう。……ん」
「んっ!?」
「………え?」
旬に胸ぐらを掴まれたから殴られるかと思いきや…キスをされた。
「…し、しゅん…?」
「はぁ…。あのさ、この人俺のだから。ギルド員としての距離を弁えろよ。それ以上を求めるのは許さない」
「っ!!」
俺の首元を掴んだままほんの僅か魔力を放出して宣言する旬に呆然としていると、耐えきれなかったのかあいつは顔を青くさせて背を向け走り去った。
「…やりますね」
「…こいつとは大違いだな」
感心したような声を出す最上と白川だが、俺はまだ呆然と旬を見つめ続ける事しかできない。
「…何。なんか文句ある?…向こうの方が良かったわけ?」
「っ、そんなわけねえだろ!?お前の方が性格も良いし美人だし何より俺の好みだって散々言ってるだろうが!」
「…そう。…なら、あんなの纏わりつかせるな」
勢いのままに告げると旬がそっぽを向いて小さく呟く。その姿を見て漸くじわじわと歓喜の感情が湧き出してきて、勢いのまま旬を抱き締めた。
「なっ!は、離せ!」
「なー、旬?嫉妬してくれたんだよな?不安にさせたのは悪かった。でも俺はお前以外に興味ねえからな!」
「ちょ、っと!ここどこだと思ってるんだ!人前で抱きつくな!」
「…人前でのキスは良いのか」
「あれは牽制の意味合いでしたからね。水篠ハンター的にはセーフなのでは?」
「旬、もう一回言ってくれよ。”この人は俺の”って」
「っうるさい!二度と言うか馬鹿!」
「っぐ…!」
真っ赤になっている旬を撫でまわしながらにやにやと笑っていたらみぞおちを殴られた。そこまでの痛みではなかったものの態勢を崩して膝をつく。
「圭介さんがべたべたくっつかれていた分俺も最上ハンターと白川ハンターにくっつくからな!」
「おい、急に巻き込まれたが」
「僕なら歓迎ですよ。どうぞ?」
愉快そうに腕を差し出す最上に対し、宣言通り旬が腕にしがみ付く。
「おい旬!それは話が変わるだろうが!早く離れろ!浮気は許さねえぞ!?」
「自分もしておいて相手がするのは許さないとは…棚上げが凄いですね」
「しかも見知らぬ人間にするよりもまだ最上の方がマシだろう」
「最上だから駄目なんだろうが!旬、今すぐ離れろ。俺も悪かったから今なら許してやる」
「…許してやる?」
旬が最上の腕にしがみついたまま、先ほどと同じ感情の読めない目を俺に向ける。やっぱりあれ怒ってるのか…。
「あ、いや…言葉が悪かった。充分に反省したので許してください」
「…次同じことしたら本気で殴るからな」
「わかった。ちゃんとあいつには話す。それに今後そういうやつが出てきたとしてもすぐに断るから。信じてくれ」
俺が宣言するとため息をついて最上に絡めていた腕を外す。
「もういいんですか?」
「まあ反省したみたいなので。…急に抱き着いてすみません」
「いえ、役得でしたよ」
俺と目線を合わすように屈みこんだ旬が今度は無表情ではなく、不貞腐れた顔を見せる。
「仕方ないから許してあげる。…帰ろ」
先程散々露骨な媚びを見たせいか、手を差し伸べて俺を立たせた旬の拗ねた顔がいつも以上に可愛く見え衝動的に腰を抱いて口付けていた。
「ん!?っふ…ん、んぅ…」
「…旬。悪かった。…でも本当にお前以外は眼中に無いからな」
「…うん」
こうして何とか許してもらい、その場は収まったのだが協会のロビーで騒げばそれは噂が広まるのも時間の問題で。
後日テレビで交際についての報道がされた後、羞恥心の限界を迎えた旬により1週間もの間口を聞いて貰えないという理不尽が俺を待ち受けていた。
「げ」
定例会議後、ロビーで4人話し込んでいると猫なで声で呼ばれ、嫌な予感がしてつい声が漏れてしまった。
拙い。本当に拙い。今この場には旬がいるのに。
「黒須ハンター!会議お疲れ様でした!ギルドに戻られますよね?俺と一緒に戻りましょう?」
俺が何も言っていないのに腕を絡ませ、媚びを売ってくるこいつは先日死神ギルドに迎え入れたA級のハンター。最初は態度がとても丁寧だったので、A級ということもあり目をかけていたのだが、いつの間にかこうなっていた。
旬には遠く及ばないものの、見目の良さに胡座をかいたような自信満々な態度でアプローチされて正直辟易していたが…まさか協会まで来るとは。
そうだ、旬はどうしている?と思って表情を伺えば…完全なる無表情。……何を考えているのか本当に読めない。いつも俺の前では表情豊かだったので忘れていたが、出会ったばかりの頃のように感情を微塵も宿していない顔をしている。お、怒ってるのか…?
「…はぁ…黒須ハンター。ギルドマスター同士の会話に割り込むような不躾な人間をギルドに入れたんですか?」
「礼儀作法から学ばせた方が良いのでは?」
最上と白川の視線が痛い。暗に「早く何とかしろ」という声が聞こえてくる。しかもこのふたりはなんだかんだ弟分として旬に目をかけている為、若干の殺意まで滲んでいるように感じる。
「あー…そうだな、悪い。…最上ハンターと白川ハンターの言う通りだ。ギルドマスター同士の会話に割り込んでくるな」
「ごめんなさい、黒須ハンターが見えたから嬉しくてつい…」
素直に謝罪し、悲しげに眉を下げる姿を見ても何ら心は動かない。というか媚び売りが露骨なんだよなこいつ…。どうしたものかと迷っていたら、旬が無表情のまま1歩俺の方に歩み寄ってきて。
「…黒須ハンター。それから、そこの人」
「なっ、なんだ…?」
「お、俺ですか…?」
背中に嫌な汗が流れる。まさか別れるとか言わねえよな…?
最上と白川に、助けろ!と目線を送った瞬間2人とも明後日の方を向きやがった。この薄情者が…!
「そう。……ん」
「んっ!?」
「………え?」
旬に胸ぐらを掴まれたから殴られるかと思いきや…キスをされた。
「…し、しゅん…?」
「はぁ…。あのさ、この人俺のだから。ギルド員としての距離を弁えろよ。それ以上を求めるのは許さない」
「っ!!」
俺の首元を掴んだままほんの僅か魔力を放出して宣言する旬に呆然としていると、耐えきれなかったのかあいつは顔を青くさせて背を向け走り去った。
「…やりますね」
「…こいつとは大違いだな」
感心したような声を出す最上と白川だが、俺はまだ呆然と旬を見つめ続ける事しかできない。
「…何。なんか文句ある?…向こうの方が良かったわけ?」
「っ、そんなわけねえだろ!?お前の方が性格も良いし美人だし何より俺の好みだって散々言ってるだろうが!」
「…そう。…なら、あんなの纏わりつかせるな」
勢いのままに告げると旬がそっぽを向いて小さく呟く。その姿を見て漸くじわじわと歓喜の感情が湧き出してきて、勢いのまま旬を抱き締めた。
「なっ!は、離せ!」
「なー、旬?嫉妬してくれたんだよな?不安にさせたのは悪かった。でも俺はお前以外に興味ねえからな!」
「ちょ、っと!ここどこだと思ってるんだ!人前で抱きつくな!」
「…人前でのキスは良いのか」
「あれは牽制の意味合いでしたからね。水篠ハンター的にはセーフなのでは?」
「旬、もう一回言ってくれよ。”この人は俺の”って」
「っうるさい!二度と言うか馬鹿!」
「っぐ…!」
真っ赤になっている旬を撫でまわしながらにやにやと笑っていたらみぞおちを殴られた。そこまでの痛みではなかったものの態勢を崩して膝をつく。
「圭介さんがべたべたくっつかれていた分俺も最上ハンターと白川ハンターにくっつくからな!」
「おい、急に巻き込まれたが」
「僕なら歓迎ですよ。どうぞ?」
愉快そうに腕を差し出す最上に対し、宣言通り旬が腕にしがみ付く。
「おい旬!それは話が変わるだろうが!早く離れろ!浮気は許さねえぞ!?」
「自分もしておいて相手がするのは許さないとは…棚上げが凄いですね」
「しかも見知らぬ人間にするよりもまだ最上の方がマシだろう」
「最上だから駄目なんだろうが!旬、今すぐ離れろ。俺も悪かったから今なら許してやる」
「…許してやる?」
旬が最上の腕にしがみついたまま、先ほどと同じ感情の読めない目を俺に向ける。やっぱりあれ怒ってるのか…。
「あ、いや…言葉が悪かった。充分に反省したので許してください」
「…次同じことしたら本気で殴るからな」
「わかった。ちゃんとあいつには話す。それに今後そういうやつが出てきたとしてもすぐに断るから。信じてくれ」
俺が宣言するとため息をついて最上に絡めていた腕を外す。
「もういいんですか?」
「まあ反省したみたいなので。…急に抱き着いてすみません」
「いえ、役得でしたよ」
俺と目線を合わすように屈みこんだ旬が今度は無表情ではなく、不貞腐れた顔を見せる。
「仕方ないから許してあげる。…帰ろ」
先程散々露骨な媚びを見たせいか、手を差し伸べて俺を立たせた旬の拗ねた顔がいつも以上に可愛く見え衝動的に腰を抱いて口付けていた。
「ん!?っふ…ん、んぅ…」
「…旬。悪かった。…でも本当にお前以外は眼中に無いからな」
「…うん」
こうして何とか許してもらい、その場は収まったのだが協会のロビーで騒げばそれは噂が広まるのも時間の問題で。
後日テレビで交際についての報道がされた後、羞恥心の限界を迎えた旬により1週間もの間口を聞いて貰えないという理不尽が俺を待ち受けていた。