黒須×旬


ゲート内で新種モンスターに遭遇した。バルカのように言葉を話すタイプは遭遇すれど出会った人間に擬態するタイプは初めてだ。
転職クエストの時のように弱い過去の自分の幻影を見たのかと思ったが、コイツは実態があった。
言葉も簡単なものならば喋れる様だし、今後何かの役に立つかもしれないと思い影を抽出する。
抽出すると小さくなるとは予想していたのだが…

「お前、なんでその姿な上にそんなに小さいんだ」

「う?」

現れたのは昔の俺、というよりも今の俺を縮めて3歳時位の姿にしたような影で。
しかもベルやイグリッドのように影の兵士、というよりはパッと見普通の子供にしか見えない。

「特殊能力か…?おい、他の姿にもなれるのか」

「うあ??ママ?」

「誰がママだ。…まさかコイツ、今の見た目が本当の年齢なのか…?」

他の姿になれるのならば身代わり等使い道があると思ったのに。面倒な事になった。ただでさえベルがうるさいのに子守なんてしてられないぞ。
とりあえず影に戻して協会に報告するか…。俺は単独で潜っているから良いけど他のギルドは擬態するモンスターが出たら惑わされて甚大な被害が出るかもしれない。

「はぁ…とりあえず戻れ」

「?…や!!!」

「は?」

「や!!ママといっしょ!!」

いや待て。影は絶対の忠誠を誓ってるんじゃなかったのか?戻そうとしても戻らないし…

「まさか精神年齢が幼過ぎて忠誠がわからないとか言わないよな?」

「???」

マジかよ。どうするんだこれ。
…仕方ない、勿体ないが協会に報告したら影の抽出解除しよう。
俺の目の届くところにいるうちならいいが、命令が聞かないんじゃ危険過ぎる。

「仕方ない…協会まで行くぞ」

「あーい!」

目を離すわけには行かないのでしょうがなく抱えてゲートを出る。
出た瞬間、待っていた諸菱君から大騒ぎされたが面倒になって全部無視して協会へ向かわせる。
何故か号泣していたが知った事じゃない。

***

ハンター協会ロビーにて


「えっ」

「ひぇ」

「こ、ども?」

「水篠ハンターだよなあれ…」

「そっくりな子供が見えるんだけど」

「産んだ…?」

「水篠ハンターなら産めるのか…?」

ヒソヒソヒソヒソ

犬飼課長へ事前に連絡は入れたもののうまく伝わっていなかったのか人目を避けることが出来ずに今見世物状態になっている。

「(産めるわけないだろ!?犬飼課長頼むから早く来てくれないか…!!!)」

「水篠ハンターお待たせし…????」

「ああ、犬飼課長。待ってました。コイツの事なんですが」

ぷらん、と首根っこを掴んだ影を目の前に突き出す。

「…え、お子さん、ですか?」

「そんなわけないだろ。」

珍しくぽかんとした顔で尋ねてきた犬飼の言葉に思わずツッコんでしまう。

「違います。コイツが電話で話したモンスターなんです。」

「は?あの、いえ、申し訳ございません。ですがこれは…どう見ても人間にしか見えませんね…」

想定以上の擬態に深刻性も伝わったのか鋭く観察するような目で影を見つめ、首を振る。

「水篠ハンターが急ぎの報告というのが理解出来ました。会長がお待ちですので恐れ入りますがそちらでご説明頂いても宜しいでしょうか?」

「はい。勿論です」

***

「―――と、いうわけでコイツの精神年齢は恐らく見た目通り、俺しかいなかったので俺の姿になっていますが複数人いた際にどうなるかは不明です」

「成程。確かに魔力反応もある。…この形状のモンスターが事前知識無しに現れたらパニックは避けられなかったでしょうな。すぐさまハンター協会より緊急で注意喚起を流します。水篠ハンターのご報告に心より感謝致します。」

会長に経緯を話し、やっと一息吐くことが出来た。

「しかし、本当にただの子供のようにしか見えませんな」

「知能も見た目通りみたいです。一応今のところ危険性はありませんが…」

「???」

不思議そうに俺と会長を見比べる影。ややあって会長の方に近づいて行くものだから抱えて止めた

「何しようとしてるんだお前」

「じぃじ?」

突然会長の方に手を伸ばし、だっこを強請るようなポーズでまさかのじぃじ呼びに犬飼課長と俺が固まる。だが呼ばれた当の本人は相好を崩して俺の手から影を受け取ろうとするので驚いた

「会長!?」

「ふむ、じぃじか…良い響きだ。水篠ハンターその子を抱き抱えても良いでしょうか?」

「いえあの、一応コイツはモンスター…」

「水篠ハンターの召喚獣になったのならば問題ないでしょう。」

戸惑っている間にすっと影を抱えられ、膝に乗せてしまった。

「じぃじ!」

「おお、じぃじだぞ!…これは中々良い。水篠ハンター、食べ物を与えても?」

モンスターだって言ってるだろ!話聞いてたのか!と喉元まで出かかったが会長に言えるはずも無く、ベルがまあ葵とお菓子の取り合いしてるくらいだし食べられはするだろうと答えると上機嫌で犬飼課長に指示してジュースとお菓子を持ってこさせ本当に与え始めてしまった。

「んま!おいち!」

「そうかそうか、沢山食べなさい」

にこにことお菓子を食べさせる姿は完全に爺と孫の構図が出来上がっていて。犬飼課長と二人で諦めの視線を交わした。
その後ももう少し居ないか、水篠ハンターも最近の話を聞かせてくれやら何やらなんとか理由を付けて孫(影)を引き留めようとするものだから課長と協力して強制的に退出してきた。

***

会長室を出て、満腹の概念があるからなのかわからないがうとうとし始めた影を抱えて裏口へと歩いていると見知った人影が見えた。

「よう、水篠ハンター」

「黒須ハンター?こんにちは、黒須ハンターも協会に用事だったんですか?」

死神ギルドのギルドマスターである黒須が壁に背を預けて此方を見ていた。
実をいうと水篠は黒須の事が余り得意では無い。
理由として先ず何をするにも距離が近いのだ。会話するときもすぐに肩を組んできたり腰に手を回してくるし、やたらと食事に誘ってくる。
その社交術は同じギルドマスターとして見習うべきところもあるとは思っているのだが、如何せん水篠はグイグイ来られるとどう対応していいのかわからなくなるので意図的に二人で話さないようにしていたのだが、こうして会ってしまっては回避方法が無い。

「いーや?お前さんに用事があってな」

「俺?」

約束事はしないようにしていたのだが何かあっただろうか?

「ああ。…そいつ。話題になってたぜ?」

成程。もうハンター協会から連絡が回ってきたのか。流石仕事が早い。
そして黒須ハンターにしてもギルドマスターとして直ぐ確認に来るなんてこういうところは見習うべきなんだよな、と感心した。

「えっと、コイツを見に来たって事ですよね?」

「…ああ。詳しい話を聞きたくてな。死神ギルドに来て貰っても良いか?」

ここではダメなのだろうか?と一瞬思ったが影にするのは俺のスキルでもあるし、情報流出に気を使ってくれているのかもしれないと思い直し了承する。

「わかりました。大丈夫です」

「そうか。じゃあ乗せていく。こっちだ」

何故かいつもよりもテンションの低い黒須に若干の不信感を覚えながらもそのまま車に乗せられ、死神ギルドへと向かう。
いつもうるさいくらい話しかけてくるのに道中は何故か一言も話さない。影は車の振動でぐっすりで会話も出来ないし、更に不信感を募らせながらもギルドのオフィスへ到着し、部屋へと通された。

「あの、黒須ハンター…?」

無言でエグゼクティブチェアに腰掛け此方を見る黒須に恐る恐る話しかけると、手招きをされる。わからないままにデスク横まで近づいた

「ま、まずその子ソファに寝かせときな」

抱えてると大変だろ?と背中を軽く叩きいつもの軽い調子で話す黒須に先ほどまでのは俺が何か気にし過ぎだっただけかもしれないな、と安心してソファに影を寝かせ、再び黒須に近づいた瞬間。腕を引かれデスクの上へ押し倒された。

「っ!?黒須ハンターなにを!?」

「水篠ハンター、それ誰との子なんだ?白川か最上かはたまた犬飼か…なぁ、オニイサンに教えてくれよ」

押さえつけられたまま耳元で低く囁くように問いかけてくる黒須に背筋がゾクリと震えた。

「誰の子って…!」

「なんだ、言うつもりが無いのか?」

俺と水篠ハンターの仲なのに悲しいな、と囁く黒須にここにきてようやく何か盛大な勘違いをされているのでは、と気付いた。

「あの何か勘違、っん!ん、ふぁ、は、んン、っ!?」

説明しようと思い口を開いた瞬間噛みつくようにキスをされる。
何とか離れようともがくのだが力づくで怪我をさせるわけにはいかないし、デスクに仰け反る様に押さえつけられては身動きも上手く取れず抵抗も難しかった。

「ンっ、ぅ、ぁ、やっ!くろ、す、ッ、はんた、ま、てぁ、っ!」

「はぁ、酷いよな。慣れてないみたいだったから珍しく俺がゆっくり進めていこうとしてたのに」

「ッ、ぁっ…な、んのはなしを…し、て?」

「んー、やっぱり気付いてなかったか?かなりわかりやすくアピールしてたと思ったんだけど」

酸素を奪われぼうっとした頭では黒須の言っている意味がよく解らず困惑しながら見つめる事しか出来ない。

「なんだ、そんな潤んだ目で見て。続きがしたいのか?…それならお望みのままにしてやるよ」

子供がいたってのめり込ませちまえばこっちのものだしな、と呟きながらシャツを捲り素肌に触れてくる黒須を急いで静止させる。

「っん、ふ、ちょ、っと…待てってば!」

止めると明らかに不機嫌そうになり、押さえつける力が強くなった。

「あのなぁ、優しくしてる内に大人しくなった方がいいぜ?」

無理矢理突っ込まれたくはないだろ?それともそういう趣味か?と続ける言葉に本気で危機感を感じ早口で説明する。

「違うっつってんだろ!話聞けよ!!俺の子じゃなくてあれは召喚獣!モンスター!!」

「…は?」

何言ってんだこいつと言わんばかりの目で見つめてくる黒須にかなり苛ついたがこのまま続けられては堪らないのでなるべく冷静に説明をする。

「…いいですか、あれは人間のナリをしていますが元はモンスターです。先ほど会長の前で魔力測定もしていますし、協会からも各ギルドへ注意喚起が流されているはずです」

「…水篠ハンターが産んだから魔力があるって事じゃないのか?」

「ぶち殺すぞ。そもそも魔力は遺伝しないだろうが。いいからさっさと協会からの知らせ確認しろよ」

なんでどいつもこいつも俺が産んだとかほざくのか。産めるわけないし産むわけないだろ。
どんどん口が悪くなっていく水篠にもしや本当に早とちりだったのかもしれないと水篠を一先ずデスクの上から解放し、PCで協会からの知らせを見る。

「…人に擬態するモンスター?」

「それ」

「…これ?」

ソファの上に寝ている子供を指して水篠を伺う。

「これ」

先ほどの雰囲気は霧散し、今や無表情で頷く水篠と気まずそうな黒須と、すっかり立場が逆転していた。

「あー…水篠ハンター?」

「なんですか黒須ハンター」

「…悪かった」

「なんに対しての謝罪ですか」

「…お前の子供だと思って押し倒したことについて…です」

すっかりとしおらしくなった黒須に満足し、一旦は怒りを納める。だが先ほども聞いたが何故俺の子供だと思って怒るのか。

「なんであんなに怒ったんですか?それにその、き、キスまでして…」

今更ながらにされたことの恥ずかしさが湧いてきて顔を赤くしそっぽを向きながら問いかける。

「お前な…ここまで来てそれは鈍いにも程があるんじゃないか?そりゃ惚れて落とそうとしてた相手が知らない間に子持ちになってたら怒るだろうが」

「は!?惚れっ!?」

「おーおー、茹で蛸みたいに真っ赤だな。…なんだ、最初から脈アリだったか?」

そう言いながら再び距離を詰め腰を抱いて引き寄せて来た

「…まあそういうわけで、だ。お前が欲しくて色々やっていたのにどこぞで子供を作られてきてみろ。今までの苦労が水の泡かと思ったじゃねえか。少し乱暴にしちまったが満更でも無さそうだし…」

続きしような、と耳に吹き込まれる声にガクリと力が抜ける。
流される訳にはいかない…!と力を込めてみるのだがその前に黒須に横抱きにされてしまう

「流石にデスクの上は良くなかったなー。こっちのソファにするか」

そっとソファの上に寝かされ、黒須に上から覆い被される。

「っ、あ、の…」

「安心しろって。さっきみたいに性急に進めたりしないさ」

再び近づいてくる顔にギュッと目を瞑った。

「…んぅ、ママ…?」

その時隣のソファから影が目を擦りながら起き出してきて、我に返り黒須を押し返す。

「あ、お、起きたのか!?」

「ん、おきた…ママ…そのひとだぁれ?」

キョトンとした顔のまま俺と黒須を交互に見つめる影に黒須が叫ぶ

「は!?やっぱり水篠ハンターがママなんじゃねえか!嘘ついたのか!?無理やり犯すぞ!?」

「ふざけんな馬鹿!勝手にこいつが呼んでるだけだ!」

こちらも負けじと叫び返すが、黒須の疑惑の目がとけない

「本当か?」

ジトっとした目でこちらを見る黒須にまたしても影が爆弾を放り投げてきた。

「…パパ?」

「おい、止めろ。絶対に止めろ。黙れ」

「パパか…悪くないな」

「悪いに決まってるだろ。あんたもふざけるな」

「よし、こっちは?」

「ママ」

「だよな。俺は?」

「パパ?」

「よーし、じゃあそういうことだな!これから宜しくな奥さん!」

急に手のひらを返し影を抱き上げてこちらを奥さん等とふざけた呼び方をする黒須にブチ切れる

「何がそういうことだ!勝手に父親になるな!誰が奥さんだ!!!」

「ふふふっパパママなかよしー」

「お、よくわかってるな。偉いぞー。」

撫でまわす黒須にご機嫌な影

「…抽出解除」

もう問答無用で解除して消してやろうと思ったのだが、何故か出来ない。

「は?抽出解除!」

「もー!ママだめなのー!まだかえらないもん!」

「まさかお前、俺の命令聞かないどころか自分の意思じゃないと還らないのか…?」

黒須の腕の中でぷりぷりと怒る影に恐る恐る訊ねるとドヤっとした顔をして肯定してきた

「そなの!かえりたいなーってならないとかえらないの!」

最悪だ。俺の魔力で影にしてるっていうのにこんな事があるのか!?

「つまりおチビさんはまだ遊び足りないって事か?」

「そ!あそぶの!ママとパパとあそぶ!」

「…こうなったらおチビが満足するまで付き合うしかないんじゃないか?」

「はぁ…。それしかないか…一先ず連れ帰って考えます」

黒須から影を受け取ろうと手を伸ばすと伸びて抵抗する

「や”ー!!!パパがいいの!!!」

「やじゃないんだよ!帰るぞ!!!」

「お、俺モテモテだな」

この大変な時にふざけた事を抜かす黒須に殺意が沸く。

「なに嬉しそうにしてるんですか!?」

「いやだってなあ、このチビは水篠ハンターそっくりだし。本当に水篠ハンターとの子供を持った気になるだろ」

「ならなくて良い!ほら、いい加減にしろ!…はぁ。黒須ハンター、今日はこれで失礼します」

ベリっと黒須から影を引き剝がしお暇しようとした瞬間、影が大声で泣き叫んだ

「い”や”ぁ”ー!!!!!パパとママいっしょじゃなきゃや”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”!!!」

物凄い声量で叫ぶものだから近くにいた俺たちの鼓膜が破れそうになる。
ただでさえS級ハンターは常人よりも五感が優れているのに、これは最早拷問の域だが!?

「ぅ、うるさ…!!」

「ぐっ…まてまてまて、おチビ落ち着け!!!な!?パパいるから!!!ほらママもいるぞ!?」

俺の方が抱えていた分ダメージが大きかったのに気付いたのか眉間に皺を寄せながらも俺から影をさっと取り上げてあやし出す。

「う”ぇ”ぇ”ん”!!や”だぁ”!!パパとママはいっしょにいるのぉ…!!!」

グスグスと泣き出した影にイラつきながらも如何したら良いのか解決方法を考えていると黒須がこっちを見て何か思い付いたように笑った。その笑顔にとてつもなく嫌な予感がしたのだが今は泣き止まさないと此方の鼓膜が先に音を上げるので止めたい気持ちをぐっと耐えて聞いてみることにする。

「そうか、チビはパパとママと一緒がいいんだな?」

「…グズっ、…うん、いっしょがいいの…」

「そっかそっか、じゃあお願いは叶えてやらないと可哀想だよな。…じゃあチビとママはパパの家に泊まろうな」

「は?」

「ぱぱとままいっしょ…?」

「ああ、それならこの後も一緒にいられるぜ?な、だから泣き止んでくれるか?」

「おい、」

「…うん!!」

一転してご機嫌に鼻歌を歌いだした影を再びソファに座らせ、此方へ向き直る黒須に勝手に話を決めた抗議の意を込めて睨みつけるがどこ吹く風で肩を竦められてしまう

「仕方ないだろ?ああでも言わないと俺たちの鼓膜が破れちまう」

「だからってあんなこと言ってどうするつもりなんですか」

「どうもこうも、言った通り泊っていけばいいだろ?」

「はぁ?」

「今のままじゃ連れ帰ってもギャン泣きだぜ?しかも水篠ハンター実家暮らしだろ?連れ帰っても大騒ぎだろうに更に泣き喚かれたら困るんじゃないか?」

そう言われるとぐうの音も出ない。
確かにこのまま連れて帰ろうものなら葵と母さんがどんな反応するのか、想像するだけで恐ろしい。
しかも賃貸マンションじゃあ防音も無いし、泣き喚かれた時に困るというのは一見正論に思える。だが、

「ならわざわざ黒須ハンターの家に行かなくてもホテルに泊っても同じですよね」

「いいか、あのチビは俺と水篠ハンターが揃ってるって所に反応してるんだから一緒に居ないとさっきの二の舞を演じる事になるぜ?」

それでもいいのか?と若干の脅しのようなことを言ってくる黒須に最後の足掻きを出す

「そもそもこれは俺の問題なので黒須ハンターにご迷惑をお掛けするわけには…」

「何を今更言ってるんだ。パパとして指名されたからには俺にも関係あるだろ?…ま、このまま本当に嫁に来てパパとママになってもいいけどな」

つい、と俺の顔を上に向けさせて笑う黒須に顔が赤くなっていくのを自覚する。

「っな、なに言って…っ!」

「…やっぱり良いな」

ぽつりと呟かれた言葉に反応する前にキスをされた。先ほどとは違い、ただ触れるだけのキス。

「んっ…」

「…なあ、本当に付き合わないか?」

見た事無い程真剣な顔をしている黒須に心臓がドクドクと煩くなる。こんなのおかしい、黒須ハンターの事は苦手だった筈なのに。流されそうになるが断らないと駄目だ。顔をそむけてなんとか言葉を絞りだす。

「…やだ。つ、つきあわない」

「へぇ…なら俺の家に居るうちに頷かせてみせるから覚悟しろよ?」

拙い、言葉の選択を間違えたかもしれないと思った時には既に遅く、黒須の目が薄く発光して完全に獲物を狙う目で射貫かれる。
そむけた顔を無理矢理自分の方に向かせ、吐息がかかる距離で宣言された。

「…さっきの続きも夜に、な」

「っ」

本当に余計な事をしてくれやがってとにこにこと呑気に此方を見ている影に向かって心の中で悪態を付く。
何としてでも影が消えるまで逃げ切ってやる、と意気込んでまだ赤い顔のまま黒須をキッと睨み付けた。
—――その顔がまた黒須のハンターとしての本能に火を付けるとも知らないで。

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