最上×旬

「も、最上ハンター!お誕生日おめでとうございますっ!…あ、あのこれ…ぷ、プレゼントです!受け取ってください!」

ハンター協会ロビーにて。会議が始まる前に最上ハンター、白川ハンター、黒須ハンターと俺の四人で話していると、背後から女性職員が近付いてきてなにやらラッピングした小箱を最上ハンターへと差し出した。…誕生日?

「…ああ、ありがとうございます」

にこやかに微笑んで小箱を受け取った最上ハンター。女性職員が頭を下げて去っていったのを確認すると、溜息を吐いた。

「…犬飼課長にもう一度頼んでおかなければなりませんでしたね」

「見た目20代前半ぐらいだったからな。前の騒ぎを知らんのだろう」

「あれで思い出したが今日誕生日かー。四十に近付いた記念に祝ってやろうか?」

「黒須ハンター、燃やしますよ」

三人のやり取りを黙って眺めていたが、内容が気になってしまったので口を挟む。

「最上ハンター、今日が誕生日だったんですね。おめでとうございます」

「ありがとうございます」

「あの、それで…騒ぎって何かあったんですか?」

俺の問いかけに黒須ハンターが目を瞬かせた。

「ああ、そうか…悪い、水篠ハンターは居なかったもんな。なんか居たような気がして話しちまったわ。去年のこいつの誕生日に、プレゼントを渡すついでに告白してきた職員がいてな」

「その場で振ったまでは良かったのだが…」

「…大泣きされまして。それ以来、直接のプレゼントは受け取らないと通告して貰って居たんですが…流石に来てしまった場合は断れないので…」

成程。だから溜息を吐いたのか。

「最上ハンター格好良いですからね」

俺の一言を聞いた三人が、一斉に勢い良く目を向けた。最上ハンターなんか口まで開けて呆然とした顔をしている。

「えっ?」

「…水篠ハンター、こいつの事格好良いって思うのか?」

「最上だぞ?」

黒須ハンターと白川ハンターが真面目な顔をして俺に詰め寄る。
え、俺なんか変な事言ったか!?

「見た目もそうですけど、落ち着いていて実力もありますし…格好良いと思うのは普通では…?」

「実力は兎も角、こいつが落ち着いている…!?」

「水篠ハンター、騙されてるぜ。こいつ俺らの中で一番気が短「黙りなさい」っぐ、いってえな!」

愕然とした白川ハンターの言葉の後に黒須ハンターがなにやら言いかけたが、最上ハンターからわき腹を殴られて屈みこんでしまった。

「えっ、く、黒須ハンター、大丈夫ですか…?」

「あれは気にしないで構いません。それよりも水篠ハンターが僕を格好良いと思ってくれていたとは…光栄ですね」

大丈夫かと近くに寄ろうとしたが、その前に黒須ハンターとの間に最上ハンターが立ち塞がり、俺の頬に触れる。

「や、あの一般論としてそうじゃないかって…最上ハンター、顔が近い…!」

「近付けていますから。…所で水篠ハンター、今日は僕誕生日なんです」

「へ?い、今聞きましたが…?」

「プレゼントを頂けませんか?」

俺の頬に触れたまま唐突に強請られ、思考が止まる。…まあ、本人が何か欲しいものがあるようだし、誕生日と知って何もしないのもな…。そう思って返事をしようとしたら口を白川ハンターに抑えられ、身体ごと後ろに引かれる。

「むぐっ!?」

「そこまでだ」

「あー、いってえ。水篠ハンターを毒牙にかけようとしてんじゃねえよ」

「チッ。邪魔をするんじゃありませんよ。僕は水篠ハンターに聞いているんですから退きなさい」

「どう考えても丸め込もうとしているだろうが」

白川ハンターに抑えられたまま、今度は間に黒須ハンターが立ち塞がった。そのまま睨み合いが始まってしまい、俺だけが蚊帳の外で。この状況を何とかしてほしいと切実に願った時、背後から救いの声が聞こえてきた。

「…ご歓談中失礼いたします。お待たせして申し訳ございません。会議の準備が整いましたのでご移動をお願いいたします」

犬飼課長がなんとも微妙そうな顔で俺たちを眺め、声をかけた。

「チッ…時間切れですね」

「危なかったなー」

「はぁ。…水篠ハンター、失礼しました。ですが最上ハンターには気を付けた方が良い」

「わかりました…?」

白川ハンターに忠告を受け、よくわからないままに頷く。
そのまま全員で会議室へと移動を開始したのだが、廊下を歩く途中ふと腕を引かれ、振り向くと最上ハンターの笑った顔が直ぐ近くにあって…唇に何か柔らかいものが触れた。

「…え?」

「素敵なプレゼントをありがとうございます。…さて、願わくば夜も共に過ごしたいのですが、今晩一緒に食事は如何ですか?」

言われた言葉の意味が解らなくて、ピタリと足を止める。

今、俺…何された?

「~~~っ!?!?!?」

「おや。…もしかして初めてでしたか?それならば尚更良い物を貰ってしまいましたね」

理解した瞬間に一気に熱を持つ俺の顔を見て、嬉しそうな顔を浮かべた最上ハンター。

「い、行かない!!」

そう言って白川ハンターと黒須ハンターの方へ駆け足で向かう。

「おっと、どうした、って…はぁ~…」

「だから言っただろうが…」

俺の顔を見て全てを悟った様に溜息を吐く二人。

「そ、そういう意味なら教えてくれれば良かっただろ!?」

「あの状況でそれ以外ある訳ねえだろうが…」

「鈍すぎる…」

俺の抗議に頭まで抱え始めてしまう。
でもはっきり言わないのも悪くないか!?と心の中で文句を言っていると腰に手がまわされ、引き寄せられた。

「伝わったようで何よりです。…今日は断られましたが、水篠ハンターが頷くまで諦めませんよ」

そう言って今度は耳元にキスをする最上ハンターに耐えきれず、会議も何もすっ飛ばして逃げ出してしまった。


***

「…思い出せば去年の真さん、相当強引だったよな」

「?…ああ、誕生日の時ですか。去年は我ながら良いアプローチをしたと思っていますよ。実際、あの後から僕を意識し始めたでしょう?」

「それはそうなんだけど…やり方ってあるだろ」

「旬は鈍いのでそのくらいで良いんですよ。…さて、去年は勝手に僕が貰いましたが…今年はくれますよね?」

「……仕方ないな。…好きなだけ、俺をあげる」













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