犬飼×旬
今日は朝から散々な一日だった。
内容は忘れたが夢見が悪く、飛び起きたら汗だくだったのでシャワーを浴び、ギルド事務所に行けばマスコミの待ち伏せ。
車でゲートまで向かおうと諸菱くんと乗り込めばパンクしていることが発覚。
山中にあるゲートだった為仕方なしにカイセルで向かえば諸菱君を乗せるのが気に食わなかったのかカイセルの急なアクロバット飛行での暴走。
漸くゲートに到着し潜れば久々レッドゲートとご対面。クリア後直ぐに帰れず協会へ報告書を提出する羽目に。
「もうやってられません」
「…それは、災難でしたね」
全てを終えたその日の夜。
恋人である晃さんの自宅でソファに横たわりクッションを握りしめながら今日の話をする。
「そうですよ。せめて報告書出しに行く時に晃さんが居てくれれば良かったのに。それも一因なんですからね」
「あの時間帯は会長をお送りしていまして…申し訳御座いません」
俺の理不尽極まりない文句にも律儀に謝ってくれる晃さんにこれ以上八つ当たりも恥ずかしいな、と思い身体を起こして肩に寄り掛かる。
「嘘です。ごめんなさい。晃さんだって仕事が忙しいのに…」
「いえ、協会内での貴方の関わる事柄は全て僕が担当したいと思っていますので。今回の一件も本来ならば僕が処理すべきだったのですが直ぐに戻ることが出来無かった為、やむを得ず他の者に担当させる事になってしまいました。申し訳御座いません」
俺の肩を抱き寄せながら本気で申し訳なさそうに謝罪する晃さんに対し甘える様に頭をぐりぐりと擦りつけた。
「八つ当たりしてごめんなさい。…ちょっとだけ疲れちゃったんです」
「この程度八つ当たりでも何でもありませんよ。…そうですね、旬はいつも頑張っていますから」
優しく頭を撫でる手のひらに更に甘える様に膝に座り、首に腕を回して抱きつく。
「…重くないです?」
「ふふっ、旬は毎回聞きますね。重いと感じたことはありませんよ」
「毎回気になるから。…もう少しだけこうしていても良い?」
「ええ、いくらでも」
そのまま力を抜いて寄りかかり、頭や背中を撫でてくれる晃さんの手のひらの温度をゆっくりと感じる。
「はぁ…落ち着く」
呟くと晃さんが微かに笑って吐息が耳をくすぐる。
「なんですか」
「ふふ、いえ、いつもならば僕の方が旬に癒されてばかりですから。こうして甘やかすのもいいなと思いまして」
「俺は何もしてないよ」
「いいえ。僕が疲れたと感じた日には必ずこの部屋に居て下さっているでしょう」
驚いた。確かに晃さんが無茶をしていないか時折影を通して確認し、疲れているようなら訪ねて寝かせたり、料理を作っておいたり、気遣うにしてもバレないようその時々で違う行動を取っていたのに。
思わず驚いて身体を離し晃さんを見つめる。するとまるで悪戯が成功したような顔で笑うので、カマをかけられたのだと気付いた
「やっぱりそうですね。いつも僕が自覚を持ったタイミングで何かしら旬がして下さるのでもしかして、と思っていたんです。…これでも監視課として表情を表に出さないようにはしているのですが、何故わかるんです?」
影から見ていますとは口が裂けても言えないので頭をフル回転させて何とか無難な回答を探す。晃さんは本当に勘が鋭いから早く答えないと怪しまれる…!
「ぇっ…と…晃さんの事を毎日考えているからわかります」
…いや、待て。
俺は今焦るあまりとんでもなく恥ずかしい事を言った気がする。その証拠に晃さんの顔がじわじわと赤くなっているし。
「っ、その…有り難う御座います。…旬が僕の事をそこまで見て考えて下さっているなんて、とても嬉しいです」
赤くなった顔のまま今度は照れ笑いする晃さんに此方も熱が移る。
「ですが情けないですね。僕は旬がこんなにも疲れているのに言われるまで何も気が付きませんでした」
照れ笑いから一転、俺をぎゅっと抱きしめて懺悔をするかのように呟く晃さんに今度は俺が笑いを零す。
「そんなの良いよ。こうして今甘やかしてくれてるんだから」
「ですが、っ」
まだ何か言いたそうな晃さんに軽く口付けて黙らせる。
「…ん。晃さんに甘やかして欲しい時は今日みたいに俺が言うから良い。…それでさ、俺まだ甘やかされ足りないんだけど?」
わざと強請る様に首を傾けると、苦笑と共に晃さんからの口付けがひとつ。そのまま抱き上げられて寝室へと移動し、ベッドにそっと降ろされて。
「全く、旬には敵いませんね」
「そう?俺は晃さんにこそ敵わないと思ってるよ」
そう言うと二人でベッドに沈み込み、暫くクスクスと笑っていた。