犬飼×旬


「休暇?」

「はい!兄貴は働き過ぎです!世間は夏休みですし、休んでください!」

我進ギルドにていきなり諸菱君に休めと言われ目を丸くしてしまう。
確かにE級の頃はゲート攻略に招集されるのも嫌だったが、今となっては寧ろレベルアップの為沢山経験値を貯えたいのだが…

「俺、休むより攻略してる方が…」

「…あのですね、水篠さん。自分のゲート攻略のスピードわかってます?」

「?」

「水篠さんがどかどか攻略していくので事務処理が大変なんです。…それこそ事務員の休みがないほどに」

げんなりした顔を向けられて気付いた。
休んでくださいと言いつつも周りが休めないからお前がまず休め、と言われているのだと。

「あー…ごめん?」

「兄貴の為に働くのは全然良いんですけど、流石に働き詰めになってしまっているので…一週間くらい休みを取ってくれると助かります」

「…わかった。一旦帰って考える」

「はい、決まったら教えてください」

事務所から出て、歩きながら考える。
休みってそもそも何をしたら良いんだろうか…葵と母さんを旅行にでも連れて行くか?いやでも自分がついて行くとマスコミが煩いし…等と考えているとスマホが鳴った。

「もしもし、水篠です」

『犬飼です。水篠さん、急で申し訳ないのですが本日少しお時間ありませんか?』

「大丈夫です。何かありましたか?」

犬飼がさん付けの呼称で呼ぶときは恋人としての旬に用事がある時だとわかっているので珍しいなと思いつつ用件を聞く。

『会長宛のお中元でフルーツが大量に届き、職員に配ったのですがそれでも少し余ってしまいまして。僕は遠慮したのですが結局最後押し付けられてしまって…。桃なので早く食べないと駄目になってしまうので一緒に食べて頂けると大変助かるのですが…』

如何でしょうか?と控えめに聞いてくる犬飼に笑みを浮かべて快諾する

「今行きます。犬飼さん自宅ですか?」

『助かります。ええ、自宅に居ます。水篠さんは外ですか?でしたら迎えに参りますが』

「我進ギルドの事務所の近くにいるけど、すぐ行けるから大丈夫です」

『承知しました。お待ちしていますね』

そういって切れたスマホをポケットに仕舞い、犬飼の自宅へ急ぐ。存外早く犬飼の自宅に到着した水篠はそのまま貰っている合鍵でドアを開けた。

「お帰りなさい、旬さん。外は暑かったでしょう」

「…ただいま、です。晃さん。」

さらっとお帰りと迎えられるのが気恥ずかしい。そのままクーラーの効いた室内へ入り、ソファに座って休む。

「はぁー…涼しい」

「良かったです。風の当り過ぎには気を付けてくださいね。」

水分補給も、と渡された冷茶を一気に半分以上流し込んで礼を言う。

「んくっ、はぁ…晃さんありがとう」

「もっと飲みますか?」

「ううん、大丈夫。」

「欲しくなったら言ってくださいね」

「うん。…そういえば晃さん今日休みだったの?」

桃を貰ったと言っていたがそもそもこの時間はまだ定時でも無いし、まさか桃の為にだけ出勤してきたのだろうか?

「いいえ、本来休みでは無かったのですが、元々余りに休まなさ過ぎると怒られていた事もありますし、桃も受け取ってしまったので今日は午後から休みという形にしたんです。…そのお陰で旬さんに会えたので良かったとは思いますが」

苦笑しながらも嬉しそうにこちらを見る晃さんにひとつ心臓が跳ねる。
でも言われてみれば確かに晃さんは仕事ばかりしてる印象だしな…休みとれって言われたこと相談してみようか?

「俺も休みとれって諸菱君に言われちゃったんだ。晃さんは休みの日って何してる?」

「ああ、旬さんも毎日攻略し通しですからね。休むのは良い事だと思いますよ。…僕の休日、ですか…そうですね、以前ならば溜まった洗濯物を片づけたり掃除をしたりしていましたが、今は有難いことに旬さんが全てしてくれていますから…休みの日何してるのかと聞かれれば貴方と過ごしている、が答えでしょうか」

そういって晃さんが俺の頬を撫でながら微笑むものだから一気に顔に熱が集中して真っ赤になってしまう。

「~っ!」

「なんて、すみません。これでは参考にはなりませんね」

悪戯が成功した後のような顔をして言う晃さんを見て良い考えが思い付いた。

「…じゃあ、俺と一緒に晃さんも休もう?」

「え?」

「晃さんも休み取るように言われてるんだからそれなら俺と一緒に休も?俺と過ごすのが休みの過ごし方なんでしょ?俺もそうする……良い?」

少し恥ずかしいが、一緒に過ごしたいのは事実なので甘えるように寄りかかって覗き込む

「…あの、あまり可愛いことをしないでください…」

まるで先程の熱が移ったかのように手で赤くなった顔を隠す晃さんに笑って更に密着し、手を繋いで駄目押しのように問いかける

「…だめ?」

「…いいえ、その、とても嬉しいです…」

同じ日にちで取ります…と小さく呟いた晃さんに満足気に笑う。
まずは一緒に桃を食べながら休みの日程と過ごし方を相談しよう。



結局のところ俺は晃さんが居れば何でも良いんだけど








7/18ページ
スキ