お題置き場(CP混ぜこぜ)
「君、学生さんだよね?」
———ああ、またやってしまった。恐らく刑事さんであろう人の声に振り向かずフードを被ったまま走って逃げる。
「あ、コラ!待ちなさい!」
後ろから声が聞こえるが、路地裏に入り影移動を駆使してそっと自室に戻る。
全ての戦いに終止符を打ち、平和になったこの世界で水篠旬は未だに過去の幻影というべきものに悩まされていた。
「(まただ。今日いた場所は…確かハンタースのギルドビルだったところだよな…我ながら女々しいというか、過去は過去だと思っている筈なのに…)」
纏まらないモヤモヤを抱えたまま、寝室のベッドに横になり目を閉じる。次こそは何もなく眠れるようにと考えながら…。
***
「はあ、また幽霊少年だ。どうやら捜査課のやつが遭遇したらしい」
「怖いですね…都内ランダムで出現するんでしょう?」
出勤してきた犬飼は、偶然耳にした先輩と後輩刑事たちの会話がなんだか気になり尋ねてみることにした。
「おはようございます。…幽霊少年とは一体…?」
「ああ、犬飼おはよう。それがな、最近真夜中の2時から3時位に巡回をしていると都内の至る所にフードを被った黒髪の少年が出るって話なんだ」
「その少年は必ずどこか一か所をぼーっと見ていて、話しかけると逃げるらしいんですが、袋小路とか完全に道が無い場所でも目を離した一瞬で消えてしまうらしいんですよ…!」
「不思議な事があるんですね…」
刑事2人の会話に相槌を打ちながらも犬飼の脳裏には一人の姿がハッキリと浮かんでいた。
「(恐らく水篠ハンターだろう。一体何をしているんだ?)…その少年はどういったところに出るんですか?」
「いやー。それがな、場所も距離も完全ランダムなんだよ。山だったり地下鉄の入口だったり、ただのビル群だったり」
「だから最初は同一犯を装った愉快犯と疑っていたやつも居たんですけど、ここまで規則性が無いなら幽霊じゃないかって今結構な騒ぎになってまして。…あ、ほらこれが少年の出た場所マップです。バラバラでしょう?」
見せてもらった地図には赤丸がついていて、確かに一見まるで規則性が無い。だが水篠ハンターが出ているのならば何かがある筈だと犬飼は考えじーっと地図を見つめる。
「なんだ、犬飼。お前幽霊に興味あるのか?意外だな」
「そういえば先輩は前にも幽霊騒ぎに興味持ってましたよね。良かったらその地図あげますよ。趣味で作ったものなので」
「…ああ、ありがとう」
礼を言って二人と別れ、空き時間でじっと地図を見つめると、一つの仮説が浮かび上がった。
もしもこの仮説が合っているとすると残りは…。
犬飼はおもむろに席を立ち上がり、上司へと明日休む為の申請を行う。そして出来る限り早めに上がろうと再び机上の書類と向かい合いはじめた。
***
「…やっぱりここですね、水篠ハンター」
聞き覚えのある声にハッとして後ろを振り向くと犬飼さんが立っていた。
「…もうハンターじゃありませんよ」
「僕にとってはずっとそうなんです。…署内で話題に上がっていました。都内のランダムな場所にフードを被った少年が居て、話しかけるとあっという間に消えてしまう、と」
水篠ハンターですよね?と目線で問いかけてくる犬飼さんに返事の代わりに肩をすくめる。
「そうかもしれませんね。…でもランダムだというのならばどうして俺が今日来る場所がわかったんです?」
「地図を見ました。貴方が現れたという場所を見て、何も知らない人間からすると確かにランダムで出没していると思われますが…あれは過去、水篠ハンターに関係している場所ですよね?いくつかは僕もわからない場所がありましたけど、二重ダンジョンゲートがあった場所から始まり我進ギルドの事務所のあったビル、妹さんが襲われた学校、昨日はハンタースギルドのビル。…順番はバラバラでも何かしらの関連がある場所に来ていましたね。…そして唯一来ていなかったのはここ、ハンター協会があったビル」
「…流石、現職の刑事さんですね」
犬飼さんの推理力に内心舌を巻く。元々頭の回転が早い人だと思っていたがそれでここだと当りを付けられるだなんて。
「有り難う御座います。…それで、一体何があったんですか?水篠ハンターが無意味に徘徊するなんて事は無いでしょう。今の僕ではお役に立つことすら出来ませんが、せめて何をしようとしているのかだけでも教えて頂けないでしょうか?少しでも力になることがあればしたいんです」
お願いします、と頭を下げる犬飼さんになんて説明をしたら良いのか迷う。…だがこんなにも心配をかけておきながら何もありませんは気遣いに対して失礼だろうと正直に打ち明ける。
「その、心配をかけてしまってごめんなさい。…正直、俺にもわからないんです」
「わからない、とは一体…?」
頭を上げ、困惑気味な犬飼さんに一から事情を説明することにした。
「俺いつも通り就寝したはずだったんですけど、最近気が付くと犬飼さんが言ったように過去に関連する場所に居て。…無意識なんです」
「それは…夢遊病のようなものでしょうか…?」
「多分そうです。無意識でスキルを使っていて…過去なんて気にしていないつもりだったんですが」
女々しいですね、と自嘲気味に笑うと犬飼さんが俺のフードを取り、目を見て反論する。
「そのような事は決してありません。水篠ハンターが成し遂げた偉業は僕が一番よく知っています。…それは平和な世界になったからと言って簡単に切り離せる事ではないでしょう」
「…有り難う御座います」
犬飼さんの言葉に、無理に忘れようとしなくていいんだという安心感が広がっていく。
「いいえ、今の僕に出来ることはそのくらいですから。…しかし無意識というのは厄介ですね。何か解決方法があれば良いのですが…」
悩み始めた犬飼さんに以前からひとつ立てていた仮説を伝える
「その、きっと原因は過去と今とがごちゃ混ぜになっているからで。…多分今の皆の生活とか、こうしてここにはハンター協会は無いんだってことをちゃんと理解すれば治るんじゃないか、って思ってて…」
「…成程。確かにこの世界は余りにも以前と違いますからね。…では明日、というよりも本日ですね、一緒に確認しに行きましょう」
犬飼さんからの提案に目を瞬かせる。
「え?」
「水篠ハンターの事ですから何かあるのかと思って、有給届を出してあります。…人物に関しては流石に全員調べるのは直ぐに出来ませんが、少しずつ調べておきます。一先ずはこんな真夜中ではなく明るいうちに一緒に水篠ハンターの辿ってきた道を見に行きましょう」
折角ですから僕がわからなかった場所は解説して下さい、と柔らかく笑う犬飼さんになんて返していいのかわからなくなった。
「…一緒に来てくれるんですか?」
「ええ、僕で宜しければどこへでも」
「…アメリカとDFNも?」
「…それは未成年の水篠ハンターを連れて行くと色々と問題が出ますので、高校を卒業したら行きましょう。DFNに関しては僕もテレビでしか見ていませんでしたので是非解説をお願い致します」
困らせると思いながらも海外も確認しに行きたいと言えば当たり前のように先の約束をされて。
「…うん。連れてって下さい」
「承知致しました」
そのまま明日の約束をして犬飼と別れ、ベッドで横になる。
きっと幽霊の噂は消えていくだろう。
だって一人で過去に浸らずとも付き合ってくれる人がいるのだから。
———ああ、またやってしまった。恐らく刑事さんであろう人の声に振り向かずフードを被ったまま走って逃げる。
「あ、コラ!待ちなさい!」
後ろから声が聞こえるが、路地裏に入り影移動を駆使してそっと自室に戻る。
全ての戦いに終止符を打ち、平和になったこの世界で水篠旬は未だに過去の幻影というべきものに悩まされていた。
「(まただ。今日いた場所は…確かハンタースのギルドビルだったところだよな…我ながら女々しいというか、過去は過去だと思っている筈なのに…)」
纏まらないモヤモヤを抱えたまま、寝室のベッドに横になり目を閉じる。次こそは何もなく眠れるようにと考えながら…。
***
「はあ、また幽霊少年だ。どうやら捜査課のやつが遭遇したらしい」
「怖いですね…都内ランダムで出現するんでしょう?」
出勤してきた犬飼は、偶然耳にした先輩と後輩刑事たちの会話がなんだか気になり尋ねてみることにした。
「おはようございます。…幽霊少年とは一体…?」
「ああ、犬飼おはよう。それがな、最近真夜中の2時から3時位に巡回をしていると都内の至る所にフードを被った黒髪の少年が出るって話なんだ」
「その少年は必ずどこか一か所をぼーっと見ていて、話しかけると逃げるらしいんですが、袋小路とか完全に道が無い場所でも目を離した一瞬で消えてしまうらしいんですよ…!」
「不思議な事があるんですね…」
刑事2人の会話に相槌を打ちながらも犬飼の脳裏には一人の姿がハッキリと浮かんでいた。
「(恐らく水篠ハンターだろう。一体何をしているんだ?)…その少年はどういったところに出るんですか?」
「いやー。それがな、場所も距離も完全ランダムなんだよ。山だったり地下鉄の入口だったり、ただのビル群だったり」
「だから最初は同一犯を装った愉快犯と疑っていたやつも居たんですけど、ここまで規則性が無いなら幽霊じゃないかって今結構な騒ぎになってまして。…あ、ほらこれが少年の出た場所マップです。バラバラでしょう?」
見せてもらった地図には赤丸がついていて、確かに一見まるで規則性が無い。だが水篠ハンターが出ているのならば何かがある筈だと犬飼は考えじーっと地図を見つめる。
「なんだ、犬飼。お前幽霊に興味あるのか?意外だな」
「そういえば先輩は前にも幽霊騒ぎに興味持ってましたよね。良かったらその地図あげますよ。趣味で作ったものなので」
「…ああ、ありがとう」
礼を言って二人と別れ、空き時間でじっと地図を見つめると、一つの仮説が浮かび上がった。
もしもこの仮説が合っているとすると残りは…。
犬飼はおもむろに席を立ち上がり、上司へと明日休む為の申請を行う。そして出来る限り早めに上がろうと再び机上の書類と向かい合いはじめた。
***
「…やっぱりここですね、水篠ハンター」
聞き覚えのある声にハッとして後ろを振り向くと犬飼さんが立っていた。
「…もうハンターじゃありませんよ」
「僕にとってはずっとそうなんです。…署内で話題に上がっていました。都内のランダムな場所にフードを被った少年が居て、話しかけるとあっという間に消えてしまう、と」
水篠ハンターですよね?と目線で問いかけてくる犬飼さんに返事の代わりに肩をすくめる。
「そうかもしれませんね。…でもランダムだというのならばどうして俺が今日来る場所がわかったんです?」
「地図を見ました。貴方が現れたという場所を見て、何も知らない人間からすると確かにランダムで出没していると思われますが…あれは過去、水篠ハンターに関係している場所ですよね?いくつかは僕もわからない場所がありましたけど、二重ダンジョンゲートがあった場所から始まり我進ギルドの事務所のあったビル、妹さんが襲われた学校、昨日はハンタースギルドのビル。…順番はバラバラでも何かしらの関連がある場所に来ていましたね。…そして唯一来ていなかったのはここ、ハンター協会があったビル」
「…流石、現職の刑事さんですね」
犬飼さんの推理力に内心舌を巻く。元々頭の回転が早い人だと思っていたがそれでここだと当りを付けられるだなんて。
「有り難う御座います。…それで、一体何があったんですか?水篠ハンターが無意味に徘徊するなんて事は無いでしょう。今の僕ではお役に立つことすら出来ませんが、せめて何をしようとしているのかだけでも教えて頂けないでしょうか?少しでも力になることがあればしたいんです」
お願いします、と頭を下げる犬飼さんになんて説明をしたら良いのか迷う。…だがこんなにも心配をかけておきながら何もありませんは気遣いに対して失礼だろうと正直に打ち明ける。
「その、心配をかけてしまってごめんなさい。…正直、俺にもわからないんです」
「わからない、とは一体…?」
頭を上げ、困惑気味な犬飼さんに一から事情を説明することにした。
「俺いつも通り就寝したはずだったんですけど、最近気が付くと犬飼さんが言ったように過去に関連する場所に居て。…無意識なんです」
「それは…夢遊病のようなものでしょうか…?」
「多分そうです。無意識でスキルを使っていて…過去なんて気にしていないつもりだったんですが」
女々しいですね、と自嘲気味に笑うと犬飼さんが俺のフードを取り、目を見て反論する。
「そのような事は決してありません。水篠ハンターが成し遂げた偉業は僕が一番よく知っています。…それは平和な世界になったからと言って簡単に切り離せる事ではないでしょう」
「…有り難う御座います」
犬飼さんの言葉に、無理に忘れようとしなくていいんだという安心感が広がっていく。
「いいえ、今の僕に出来ることはそのくらいですから。…しかし無意識というのは厄介ですね。何か解決方法があれば良いのですが…」
悩み始めた犬飼さんに以前からひとつ立てていた仮説を伝える
「その、きっと原因は過去と今とがごちゃ混ぜになっているからで。…多分今の皆の生活とか、こうしてここにはハンター協会は無いんだってことをちゃんと理解すれば治るんじゃないか、って思ってて…」
「…成程。確かにこの世界は余りにも以前と違いますからね。…では明日、というよりも本日ですね、一緒に確認しに行きましょう」
犬飼さんからの提案に目を瞬かせる。
「え?」
「水篠ハンターの事ですから何かあるのかと思って、有給届を出してあります。…人物に関しては流石に全員調べるのは直ぐに出来ませんが、少しずつ調べておきます。一先ずはこんな真夜中ではなく明るいうちに一緒に水篠ハンターの辿ってきた道を見に行きましょう」
折角ですから僕がわからなかった場所は解説して下さい、と柔らかく笑う犬飼さんになんて返していいのかわからなくなった。
「…一緒に来てくれるんですか?」
「ええ、僕で宜しければどこへでも」
「…アメリカとDFNも?」
「…それは未成年の水篠ハンターを連れて行くと色々と問題が出ますので、高校を卒業したら行きましょう。DFNに関しては僕もテレビでしか見ていませんでしたので是非解説をお願い致します」
困らせると思いながらも海外も確認しに行きたいと言えば当たり前のように先の約束をされて。
「…うん。連れてって下さい」
「承知致しました」
そのまま明日の約束をして犬飼と別れ、ベッドで横になる。
きっと幽霊の噂は消えていくだろう。
だって一人で過去に浸らずとも付き合ってくれる人がいるのだから。