お題置き場(CP混ぜこぜ)
———水篠旬は最上真に惚れている。
切っ掛けは恐らく二重ダンジョンの時に助けられた時。
その時はそれどころでは無くて気付いてもいなかったけれど、あの緊迫した中で見た炎と横顔がずっと心に残り続けていた。
そしてその後も会議などで言葉を交わし、何度かプライベートでも会うようになってからようやく恋情だと自覚を持つようになったのだ。
ただ、水篠としてはいずれこの感情も落ち着くのだろうと告白なんて考えもしていなかった。
***
「水篠ハンター」
「最上ハンター。今日もお疲れ様でした」
「水篠ハンターこそお疲れ様でした。貴方がいると安全に攻略が出来るので、経験を積ませるのに本当に助かっています。また、お願いしても宜しいでしょうか?」
「勿論です。俺としても助かっていますから」
合同レイドの解散時、最上ハンターから話しかけられた。
最近はよくハンタースと合同での攻略に誘われることが多くなって、このやり取りもお決まりになりつつある。
最上ハンターは実戦経験を積ませる為の安全な攻略が出来て、俺はゲート落札や魔石回収の手配をせずに楽してボスの経験値と影を貰えて。お互い利益のある取引が出来ていると思う。
「そう仰って頂けると有難いですね。…水篠ハンター、この後のご予定は?何もなければいつものように一緒に食事でも如何でしょうか」
「特に予定はありません。食事、行きたいです」
この誘いもお決まりになりつつあって。
最初は惚れている相手からの誘いともあってドギマギしていたのだが、最上ハンターは経験豊富なだけあって会話がテンポよく進むし気遣いも良くしてくれる。おまけに最近ではちゃんとした場での食事に不慣れな俺にマナーまで教えてくれるのだから得しかない。
それもあって今では何の気負いも無く誘いを受けることが出来るようになっていた。
「それでは参りましょう…と言いたい所なのですが、一度ハンタースのビルに寄っても宜しいでしょうか?どうしても今日中にサインしなければならない書類があると連絡を受けていまして」
「勿論大丈夫です」
「有難う御座います。それでは乗ってください。サインも直ぐに済むものですのでそんなにお待たせしないと思いますので」
そう言っていつものように助手席を開け、エスコートしてくれる最上ハンターにほんの少し微笑みながら車へと乗り込んだ。
***
「それではお待たせして申し訳ありませんが、すぐ戻りますので」
そう言って車を出る最上ハンターの背中を見送ってぼうっと車の中を無意味に見渡したりする。
本当は一緒に来るかとも聞かれたのだが、サインするだけならば本当に直ぐだろうしと断り、車の中で待っていると伝えた。
そうして暫く待っていると最上ハンターが早足で戻ってきて。そんなに急ぐ必要も無かったんだけどな、と思いつつ、急いで戻ってきてくれたのだと嬉しくなってしまう。
けれど最上ハンターが後ろから俺と同い年位の男性に大声で呼び止められていて、ついそちらに意識を向けてしまう。
S級ハンターの聴力ともなると車の中にいてもある程度の会話は聞こえるもので。
「最上代表!」
「…おや、貴方は……〇〇ハンター、でしたか」
「覚えていてくださったんですね!」
「ギルドマスターとしては当然ですよ。…それで、僕に何か用事でしたか?申し訳無いのですが少々急いでおりまして、緊急でなければ後日にしていただけると嬉しいのですが」
名前を覚えられて嬉しそうにしている人に一瞬の違和感を抱く。
そしてその後、そのハンターは俺にとってとてつもなく大きな爆弾を投げつけた。
「す、すみません。直ぐに済みますので!……最上代表、貴方の事が好きです!付き合ってください」
まさかの告白。
最上ハンターの姿は後ろを向いていてわからないのだが、恐らく動揺していることだろう。
俺は今それ以上に動揺していて。
告白なんてせずに今のままで良いと思っていたが、もし最上ハンターが受け入れてしまったら?恋人が出来て…もう、誘って貰えないと、したら?
そう思ったらドアを開けて最上ハンターのところへ駆け出していた。それと同時に最上ハンターが口を開く。
「!…気持ちは有難く思いますが、申し訳ありません。僕には好きな方が居るのでお断りします」
「っ…そう、ですか。……好きな人って、水篠ハンターですか?」
俺が駆け寄ったのは気配でわかるだろうに、振り向かずに最上ハンターが答えた。
「仰る通りです。今、まさに口説いている最中なんですよ」
「…口説く必要もなさそうですけどね。…代表、お時間頂いてすみません。ありがとうございました」
「ええ」
ぺこりとお辞儀をして去っていくハンターを俺は呆然と見つめていた。
今、最上ハンターはなんて言って断った?
「………さて、水篠ハンター。聞いていましたね?」
「あ、の…」
情けなくも声が出ない俺に振り向いて、最上ハンターが笑った。
「ふっ、あはは!なんて顔をしているんですか。…耳まで真っ赤ですよ」
「最上ハンターが…!」
「こんなにも分かり易くアピールしているのに、一向に靡いて下さらないので完全に脈無しかと思っていましたが…逆だったようですね」
「っ…あの、」
「水篠さん、好きですよ。…貴方は?」
近づいて、俺の頬に触れながら綺麗に笑う最上ハンターから目が離せなくて。
張り付いた声を必死に絞り出して、返事をした。