お題置き場(CP混ぜこぜ)
「ふぁ…」
恋人である黒須さんの家で寛いでいた俺は、襲い掛かる眠気に耐えかねていた。
「最近ずっと眠そうだな。…具合でも悪いのか?」
覗き込んできた黒須さんになんでもないと首を振る。
「体調はどこも悪くないよ。…ただ、夢見が悪いだけ」
最近は何度もE級時代の夢を見る。無力で何も出来なくてゴブリン一匹にすら手こずっていた日々。
その夢の中では無力のまま嬲り殺され、起きた時にはもう眠る気分になんてならなくて。
結果的に寝不足になっているのだと思う。
「夢か…よし、旬。今日泊まっていけよ。俺が添い寝してやるから」
「は!?こ、子供じゃないんだからいらない!」
唐突な発言に焦って断る。
今まで黒須さんの家に遊びに来たことはあれど泊った事なんてなかったのに急に言われてわかりましたなんて言える筈がない。
「子供扱いしてるわけじゃねえよ。恋人として、添い寝してやるって言ってんだ」
「…そうだとしても夜中に飛び起きることもあるから。迷惑かけるし、いらない」
「なら猶更だろ。魘されてたら起こしてやるから。…今日は手も出さねえから心配すんなって」
言われた言葉の意味が一瞬わからなくて目を瞬かせたのだが、俺の額にキスを落とす黒須さんをみて意味を理解し真っ赤になる。
「…それとも、そういう事をして気を紛らわせてやろうか?」
「い、いい!いらない!」
「そんな全力で否定しなくても良いじゃねえか。まあ兎も角、泊ってけって。な?環境が変われば夢も変わるかもしれねえし」
苦笑して再度泊まる様に誘う黒須さんに根負けして一晩お世話になることにした。
***
「旬、広いんだからそんな端っこじゃなくてもっとこっち来い」
「ここでいい」
深夜。寝る準備を整えていざ寝ようとしたのだが、夢見への不安よりも黒須さんと同じベッドの上という現状に耐えられず、隅っこに身を寄せて壁に張り付くようにしていた。
すると背後で身じろぎするような音が聞こえたと思った瞬間、後ろから抱きしめられて。
「は⁉」
「お、旬子供体温か?あったけえな」
「えっ、ちょ、は、離して…!」
腕を外そうにも壁際にぴったりと身を寄せていたせいで身体を引き剝がすことが出来ない。
それでも出来る限りの身じろぎをしていると、黒須さんにグイと身体を引かれ、頭を抱え込まれる。
「ほら、もうジタバタしてないで寝ろ。俺も寝てえから」
「っ!」
眠りたいと言われてはこれ以上抵抗は出来なくて。大人しく力を抜いて黒須さんに寄り掛かる。俺の体温が高いと言っていたが黒須さんも結構温かい。人肌の温かさと抱え込まれた胸から聞こえる鼓動の音に段々と瞼が重くなってきて…。
「そうそう、そのまま寝ちまいな。…おやすみ、旬」
「おやすみ、なさ…い」
***
ああ、またいつもの夢だと直ぐに分かった。重たい身体、敵の動きひとつ追えない動体視力、震える手足。
そしていつも通り遠くからゴブリンが俺に狙いを定めて走ってくるのを何とか躱す。何か武器は、と探しても何もなくて。
いつもならばここら辺で殺されるのだが今日はギリギリで躱すことに成功している。これならば勝てるかもしてないと狙ってきたゴブリンに足払いをかけ、首を絞める。もうE級の時とは違うのだと、決別するように力を籠める。
すると遠くから俺の名前を呼ぶ声とうめき声が聞こえて、そちらに意識を寄せた瞬間視界が開けた。
「っ、が…!しゅ、ん…っ、おち、つけ…!」
「………え?」
ハッと気が付いた時には馬乗りになって黒須さんの首に手をかけていて。自分が何をしたのか気付いた瞬間に即座に手を放し、転がり落ちる様に上から退いた。
「か、はっ、げほっ!っひゅ、げほっ、ぁ…あ゛ー…」
「え、あ…ごめ、ごめんなさい!俺、ちが、どうし、え、どうしたら、ごめんなさい!」
かなり強く締めていたのか咳き込む黒須さんになんて言っていいのかわからなくて。ただただ謝り続ける。
「ごめん、なさ、ほんとうに、ごめ、んなさいっ」
「ん゛ん゛っ…旬、落ち着け。怒ってねえから。大丈夫だ」
「ごめんなさい…!っあ、そ、そうだ、けが、ポーション、くろすさん、のんで」
そうだ、思いつかなかったがポーションを飲ませれば回復するはず、と黒須さんの口元に押し付ける。
「ちょ、旬、落ち着けって!大丈夫だから!このくらいなんともねえから!」
中々飲んでくれない黒須さんにしびれを切らし、ポーションを自ら含んでそのまま口付け流し込む。
「んん⁉っ、んぐ」
飲んだのを確認し直ぐに離れようとしたのだが腰を掴まれ深く口付けを返される。
「くろすさん、っん!ふ、ンんぅ、っふぁ…は、っぁ…」
「はぁ…落ち着いたか?ってかさっきのポーション何なんだ?一気に喉の痛み消えたんだが」
「ぁ…俺の、スキル的な…やつ」
「…何でもありだな。…で、だ。旬。もう一回言うが俺は怒ってないし、そもそもあのくらいじゃ死なねえよ」
お前が本気なら最初の時点で俺の首折れてるだろ?と笑って言う黒須さんに我慢出来なくなった涙がぼろぼろと落ちる。
「怒れよ!殺されかけたんだぞ!しかも夢ごときのせいで!」
「怒らねえって。添い寝するって決めたのは俺だし、そもそもお前が魘された時点で起こしていればこんなことにならなかったしな。…最後まで様子見てた方が原因がわかると思って放置してた俺が悪い」
「そんな訳ないだろ…っ!」
「怖がらせて悪かった。今度はちゃんと起こしてやるから、もう一回寝ようぜ」
下を向いてぼろぼろと涙を落とす俺を撫でながら提案するが首を振って拒絶する。
「こんど、は本当に…っ、こ、殺しちゃうかも、しれないだろ…」
「さっきも手加減出来てたし、そうなる前に起こすから。な?」
「いやだ」
先ほどが運が良かっただけで次は本当に黒須さんを殺してしまうかもしれないと考えると恐ろしくて眠りたくないと思った。そんな俺に黒須さんは一つ苦笑して俺を押し倒す。
「寝たくねえならしょうがねえな。強制的に寝かすか。…そういうコト、すれば疲れて寝るだろ?」
そう言って笑った黒須さんに覆い被され、その後は本当に俺の意識が無くなるまで離してもらえなかった。
それ以降も何度か魘されて起きることはあったものの、常に黒須さんが起こしてくれて。圭介さん、と下の名前で呼ぶ頃には最早夢も見なくなっていた。