この夜を明かそう
ライトニングに自身の上着をかけ、先に泉から上がってもらい、着替えが住んだところで残りの着衣していたものを預けた。
簡易的に体を流し終える頃にはライトニングの手によって選択された衣類が手の届く岩の平たい部分に置かれていた。
ほんのりと薔薇の匂いが鼻を掠めた気がして自然と頬に熱が集まる。
パルムポルムの一件からライトニングの態度は誰が見てもわかるくらい軟化した。
それでも今回みたいに女の子らしい彼女を見たのは初めてて、脳裏に焼き付いたあの微笑みがいつでも鮮明に思い出せる。
タンクトップ、ジャケットに手を通し、パンツも履き元通りになったところで寝床を見やると、スノウとライトニング、いつ間にか戻ってきたファングとサッズ達が焚き火を囲い談笑している姿があった。
早足でそこに向かうと、それを1番に見つけたスノウが手を振った。
「みなさん待たせてしまってすみません」
「まったくだぜ。席外してるあいだに入るなんて余程入りたかったんだな?…じゃあちょっくら入ってくるわ」
そう言うとファングは腰を上げ、自身が来た道を歩いて行った。
「ん?ファングはもう入ったんじゃないのか?」
「いや、入ったんだけど、洗い忘れとかあったんじゃないかな、スノウ」
「おう、そうか?」
「そうだよ」
「なんだかホープ、慌ててる?何かあったの〜?」
「別に何も無いですよ、ヴァニラさん。気のせいです!」
先程の出来事を言うにはこのメンバーはいささか面倒すぎる。そう思い若干の焦りが見えつつどうにか詮索されないように務める。
…多分ファングには薄々気が付かれているな、と感じた。
1つため息をついて、適当なところに腰を下ろそうとした時、ライトニングが小さく隣の地面を叩く。
隣にこいということだろうか。
その気遣いに心が満たされるのを感じながら甘えてその場所に腰を降ろした。
「ライトニング、ホープにはなんだかんだ甘いよねぇ」
「そうか?」
「そうだぜ姉ちゃん。気づいてるか気づいてないかはわからんが、こっちがヤバイってのにホープにケアルかけるのを見るとおっちゃん、冷や冷やするぜ。自分がいつ倒れてもおかしくないからな」
「それは……すまなかった。次は善処する」
「まぁいうほどライトニングはそこまでじゃないけどね。ホープのほうがよっぽどだよ!」
にやにや、という表現が正しいくらいの笑みを浮かべてこちらを見るヴァニラは、おとぎ話にでてくるさしずめ悪魔のようだ。
「えっ、そ、そうで…すかね?」
「それは私も思う」
ホープ、と思いもよらない便乗に驚きを隠せない。
「たまに全体を優先した方がいいのに、私にケアルを飛ばす時があるのは頂けないな」
「まぁまぁライトニング。そんな眉間にしわを寄せないで!わたしはホープを非難したかった訳じゃなくて、その気持ちがわかるなーっていいたんだ」
「ヴァニラさん…」
「私もファングが傷つくのが見たくなくて無意識に多くかけちゃうときあるもん。もちろんみんなの傷つく姿は見たくないけど…サッズもスノウもわかるよね?この気持ち」
両手を胸元で重ねながらヴァニラはサッズとスノウ、それぞれを一瞥する。
サッズは優しい顔で頷き、スノウも豪快に笑ってああ、と返した。
「俺ももしここにセラがいたなら――真っ先に優先しちまうな。」
魔法はあんまし得意じゃねぇけど、と零すスノウの目は少し寂しさを孕んでいた。
そんな哀愁を蹴り飛ばしてライトニングが言う。
「ヴァニラ、何故私にもきかない。私だってセラがいたなら真っ先に優先する」
「うーん、だってそういうことじゃないんだもん…」
「な、どういうことだ!」
「まぁまぁ落ち着けって義姉さん」
「誰が義姉さんだ!」
そのまま勢いでスノウを殴りつけようとするのをなんとか抑える。
僕に咎められたせいか眉間にしわをよせ、ホープ、すまない、となんとか感情を沈静化させたライトニングが片手を額にあてて呟いた。
正直自身がライトニングを優先的に回復を回しているのは意図的であり、無意識だった。
通常の戦闘ならば、彼女を最初にしてメンバーに回すぐらいの優位さでしかないのだが、戦闘が激化したりなどするとついライトニングにばかりケアルを飛ばしてしまう。
それは多分、彼女の傷つくところをみたくないのと、回復することでしか未だ「守る」ことが出来ない自分がいるからだ。
だからこそ、強くないたいと思った。
「おーうお前ら楽しそうだな?私抜きで盛り上がりやがって」
後ろから聞こえる声に振り向けば、浴び終わったらしいファングが腰に手を付きながら立っていた。
「ファング!今ちょうど盛り上がってきたところなの」
「へぇ、さしずめライトニングとホープの話か?」
「すげぇなファング、当たりだ!!」
「えっ、それは最初だけですよね!?違う話しません!?」
「いーや、それならもっと面白いネタがあるからますます盛り上がれるぜ?」
「ファング!!今日は私と見張り番だったよな…この意味が示すこと、感の鋭いお前ならわかるだろう」
「え〜いいじゃねぇか義姉さん。俺もホープと義姉さんの二人旅の話とか聞きたいぜ?」
「私も私も〜!」
「その話はお前ら全員洗ってからな。よし、今日は呑もうぜ!」
そう言うとファングはいつの間に忍ばせてあった小型の酒瓶を取り出した。
スノウとサッズは上機嫌で反応する。
ヴァニラは未成年が飲めるようなものを取りに行ったようだ。
ライトニングがため息を着きながらも微かに笑みを浮かべる。
そんなライトニングに少し寄りかかる。
世界が壊れるまで猶予がないとしても。
今夜だけは、暖かい光に包まれながらこの夜を明かそう。
////////END
簡易的に体を流し終える頃にはライトニングの手によって選択された衣類が手の届く岩の平たい部分に置かれていた。
ほんのりと薔薇の匂いが鼻を掠めた気がして自然と頬に熱が集まる。
パルムポルムの一件からライトニングの態度は誰が見てもわかるくらい軟化した。
それでも今回みたいに女の子らしい彼女を見たのは初めてて、脳裏に焼き付いたあの微笑みがいつでも鮮明に思い出せる。
タンクトップ、ジャケットに手を通し、パンツも履き元通りになったところで寝床を見やると、スノウとライトニング、いつ間にか戻ってきたファングとサッズ達が焚き火を囲い談笑している姿があった。
早足でそこに向かうと、それを1番に見つけたスノウが手を振った。
「みなさん待たせてしまってすみません」
「まったくだぜ。席外してるあいだに入るなんて余程入りたかったんだな?…じゃあちょっくら入ってくるわ」
そう言うとファングは腰を上げ、自身が来た道を歩いて行った。
「ん?ファングはもう入ったんじゃないのか?」
「いや、入ったんだけど、洗い忘れとかあったんじゃないかな、スノウ」
「おう、そうか?」
「そうだよ」
「なんだかホープ、慌ててる?何かあったの〜?」
「別に何も無いですよ、ヴァニラさん。気のせいです!」
先程の出来事を言うにはこのメンバーはいささか面倒すぎる。そう思い若干の焦りが見えつつどうにか詮索されないように務める。
…多分ファングには薄々気が付かれているな、と感じた。
1つため息をついて、適当なところに腰を下ろそうとした時、ライトニングが小さく隣の地面を叩く。
隣にこいということだろうか。
その気遣いに心が満たされるのを感じながら甘えてその場所に腰を降ろした。
「ライトニング、ホープにはなんだかんだ甘いよねぇ」
「そうか?」
「そうだぜ姉ちゃん。気づいてるか気づいてないかはわからんが、こっちがヤバイってのにホープにケアルかけるのを見るとおっちゃん、冷や冷やするぜ。自分がいつ倒れてもおかしくないからな」
「それは……すまなかった。次は善処する」
「まぁいうほどライトニングはそこまでじゃないけどね。ホープのほうがよっぽどだよ!」
にやにや、という表現が正しいくらいの笑みを浮かべてこちらを見るヴァニラは、おとぎ話にでてくるさしずめ悪魔のようだ。
「えっ、そ、そうで…すかね?」
「それは私も思う」
ホープ、と思いもよらない便乗に驚きを隠せない。
「たまに全体を優先した方がいいのに、私にケアルを飛ばす時があるのは頂けないな」
「まぁまぁライトニング。そんな眉間にしわを寄せないで!わたしはホープを非難したかった訳じゃなくて、その気持ちがわかるなーっていいたんだ」
「ヴァニラさん…」
「私もファングが傷つくのが見たくなくて無意識に多くかけちゃうときあるもん。もちろんみんなの傷つく姿は見たくないけど…サッズもスノウもわかるよね?この気持ち」
両手を胸元で重ねながらヴァニラはサッズとスノウ、それぞれを一瞥する。
サッズは優しい顔で頷き、スノウも豪快に笑ってああ、と返した。
「俺ももしここにセラがいたなら――真っ先に優先しちまうな。」
魔法はあんまし得意じゃねぇけど、と零すスノウの目は少し寂しさを孕んでいた。
そんな哀愁を蹴り飛ばしてライトニングが言う。
「ヴァニラ、何故私にもきかない。私だってセラがいたなら真っ先に優先する」
「うーん、だってそういうことじゃないんだもん…」
「な、どういうことだ!」
「まぁまぁ落ち着けって義姉さん」
「誰が義姉さんだ!」
そのまま勢いでスノウを殴りつけようとするのをなんとか抑える。
僕に咎められたせいか眉間にしわをよせ、ホープ、すまない、となんとか感情を沈静化させたライトニングが片手を額にあてて呟いた。
正直自身がライトニングを優先的に回復を回しているのは意図的であり、無意識だった。
通常の戦闘ならば、彼女を最初にしてメンバーに回すぐらいの優位さでしかないのだが、戦闘が激化したりなどするとついライトニングにばかりケアルを飛ばしてしまう。
それは多分、彼女の傷つくところをみたくないのと、回復することでしか未だ「守る」ことが出来ない自分がいるからだ。
だからこそ、強くないたいと思った。
「おーうお前ら楽しそうだな?私抜きで盛り上がりやがって」
後ろから聞こえる声に振り向けば、浴び終わったらしいファングが腰に手を付きながら立っていた。
「ファング!今ちょうど盛り上がってきたところなの」
「へぇ、さしずめライトニングとホープの話か?」
「すげぇなファング、当たりだ!!」
「えっ、それは最初だけですよね!?違う話しません!?」
「いーや、それならもっと面白いネタがあるからますます盛り上がれるぜ?」
「ファング!!今日は私と見張り番だったよな…この意味が示すこと、感の鋭いお前ならわかるだろう」
「え〜いいじゃねぇか義姉さん。俺もホープと義姉さんの二人旅の話とか聞きたいぜ?」
「私も私も〜!」
「その話はお前ら全員洗ってからな。よし、今日は呑もうぜ!」
そう言うとファングはいつの間に忍ばせてあった小型の酒瓶を取り出した。
スノウとサッズは上機嫌で反応する。
ヴァニラは未成年が飲めるようなものを取りに行ったようだ。
ライトニングがため息を着きながらも微かに笑みを浮かべる。
そんなライトニングに少し寄りかかる。
世界が壊れるまで猶予がないとしても。
今夜だけは、暖かい光に包まれながらこの夜を明かそう。
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