この夜を明かそう
しばらく自然音が占める空間に2人、焚き火を前に向かいあわせに座るという空間が続いていた。
その沈黙を破ったのはスノウだった。
「あれ、ファングのやつ。もう出たのか」
そういったスノウの目線を追うようにして振り向くと、水浴びをしているはずの小さな泉を遮るようにあった大岩の陰からその筋肉質な体から作られるボディラインを浮かばせていた。
既に着衣していたが、なにしろ水浴びにしては早すぎるあがりであるのはわかった。
「ファングがいるってことは義姉さんも浴び終わったんじゃねぇか?ホープ、次入ってこいよ」
「スノウは?」
「俺は一応周辺の見回りしてくる」
「わかった。じゃあ僕が終わったら呼ぶよ」
「おう、よろしくな!」
お互いに手をあげ軽い会釈をし、別々の方向へと歩いていった。
寝床から泉の方へ淡々と歩みを進めていく。段々と焚き火のほの暖かい光が届かなくなってきたところで、目印となる岩にたどり着いた。
先程視認したファングはスノウと話している内にどこかへ行ってしまったらしく、その影はどこにもいない。
きっとヴァニラのところへ言ったのだろうと結論づけ、その岩を回り込んだ瞬間――
パシャリ、と水が跳ねる音が聞こえた。
無意識に音に釣られるまま視線を動かすと、そこにはファルシ=フェニックスから薄く盛れる光に美しく縁取られた、いつも自分の心をかき乱す――ライトニングの引き締まった背中があった。
その神秘的な、まるで宗教の石膏像のように美しいシルエットに思わず鋭い息を吸う。
刹那、こちらの気配に気づいた浅瀬の海の色に、自らの瞳が縛られた。
「……ホープ…?どうしてここにいる」
距離が少し開いていたとしてもわかるライトニングの怪訝な表情に、嫌われたくない一心で切羽詰まって返答する。
「すみませんでした!!あの、悪気はないんです…。決してライトさんの、を、見ようと…したわけではなく…!!」
メンバーとして見放されたらどうしよう、という自分自身最大の危機からか、最大限に両手を振って敵意がないことを伝える。
ライトニングは振り返ったままなので、その裸体を見ないように必然的に目は閉じていた。
だから、不意に腕を捕まれライトニングの方に引っ張られたらどうすることもできず。
大きな水飛沫が谺響する。
突如びしょ濡れになり体制を立て直して唖然とする自分とは裏腹に、軽やかな鳥の声のような笑い声が聞こえた。
「仕返しだ」
そう言って目を細めて微笑むライトニングは、ただの女の子だった。
そうだ、この人は、どんなに強くても。どんなに厳しくても。どんなに運命に立ち向かう意思があったとしても――元は、こんなに笑顔が美しい女の子なのだ。
鼓動が加速していく。
あぁ、だから、守りたい。
僕だけが知る本当のライトさんを。
「ホープ?」
ライトニングの表情に見惚れていると、硬直したままだった自身を怒ってるだろうと思ったのか、少しすまなそうに名前を呼ぶ。
「ラ、ライトさん…あなたって人は。もうびしょ濡れじゃないですか!」
「覗きをしたお前が悪い」
「だから僕はそんなつもり――!」
「なんだ?――あ」
思わず顔をそむけて手で覆った自身をみて、ライトニングはようやく自分がホープに裸体をさらけ出していることに気がつく。
流石にそういう対応をされると羞恥心が顔を覗いた。胸を片手で隠し、肩まで泉に浸かる。
「すまなかったホープ。もう大丈夫だ」
「いえ、こちらこそ…すみません。ファングさんが先にあがられていたのでてっきりライトさんもあがったのとばっかり…」
「あぁ、だからか。ファングには薬草を取ってきて貰っている。ケアルで傷は癒えても体の怠さは癒えないから……」
「あぁ、なるほど……今持っていれば良かったのですが。すみません」
「お前が謝ることじゃない。気にするな」
そう言って微笑み、不意にライトニングの細く綺麗な指が自身の髪を捕らえる。
「お前の髪、お風呂上がりの犬みたいだ」
「そうさせたのは誰ですか。まったくもう……。乾かすあいだの替えの服どうしようかな」
「それなら私が責任をもってお前が浴びてる間に乾かそう」
「それは助かりますけど……。びっくりしました。ライトさん、意外と子供っぽいところあるんですね」
何気なくそう言い放つと、ライトニングは少しムスッとした顔になる。
「私だって昔はイタズラ好きの子供だったんだ。少しぐらい、子供になってもいいだろう?」
そう言い放つ彼女の顔は少し赤みがかっていて、とても愛らしかった。
「あの、あの。ライトさん」
「?なんだ」
「そういうことするのは、僕だけにしてくださいね」
「なんだ藪から棒に。スノウやサッズにするわけないだろう。ましてやファングになんかやったらからかわれるに決まってるから絶対やらないさ」
「ヴァニラさんは?」
「逆に私がやられるくらいだ」
たしかに、と言って笑うとライトニングも釣られて微笑んだ。
その沈黙を破ったのはスノウだった。
「あれ、ファングのやつ。もう出たのか」
そういったスノウの目線を追うようにして振り向くと、水浴びをしているはずの小さな泉を遮るようにあった大岩の陰からその筋肉質な体から作られるボディラインを浮かばせていた。
既に着衣していたが、なにしろ水浴びにしては早すぎるあがりであるのはわかった。
「ファングがいるってことは義姉さんも浴び終わったんじゃねぇか?ホープ、次入ってこいよ」
「スノウは?」
「俺は一応周辺の見回りしてくる」
「わかった。じゃあ僕が終わったら呼ぶよ」
「おう、よろしくな!」
お互いに手をあげ軽い会釈をし、別々の方向へと歩いていった。
寝床から泉の方へ淡々と歩みを進めていく。段々と焚き火のほの暖かい光が届かなくなってきたところで、目印となる岩にたどり着いた。
先程視認したファングはスノウと話している内にどこかへ行ってしまったらしく、その影はどこにもいない。
きっとヴァニラのところへ言ったのだろうと結論づけ、その岩を回り込んだ瞬間――
パシャリ、と水が跳ねる音が聞こえた。
無意識に音に釣られるまま視線を動かすと、そこにはファルシ=フェニックスから薄く盛れる光に美しく縁取られた、いつも自分の心をかき乱す――ライトニングの引き締まった背中があった。
その神秘的な、まるで宗教の石膏像のように美しいシルエットに思わず鋭い息を吸う。
刹那、こちらの気配に気づいた浅瀬の海の色に、自らの瞳が縛られた。
「……ホープ…?どうしてここにいる」
距離が少し開いていたとしてもわかるライトニングの怪訝な表情に、嫌われたくない一心で切羽詰まって返答する。
「すみませんでした!!あの、悪気はないんです…。決してライトさんの、を、見ようと…したわけではなく…!!」
メンバーとして見放されたらどうしよう、という自分自身最大の危機からか、最大限に両手を振って敵意がないことを伝える。
ライトニングは振り返ったままなので、その裸体を見ないように必然的に目は閉じていた。
だから、不意に腕を捕まれライトニングの方に引っ張られたらどうすることもできず。
大きな水飛沫が谺響する。
突如びしょ濡れになり体制を立て直して唖然とする自分とは裏腹に、軽やかな鳥の声のような笑い声が聞こえた。
「仕返しだ」
そう言って目を細めて微笑むライトニングは、ただの女の子だった。
そうだ、この人は、どんなに強くても。どんなに厳しくても。どんなに運命に立ち向かう意思があったとしても――元は、こんなに笑顔が美しい女の子なのだ。
鼓動が加速していく。
あぁ、だから、守りたい。
僕だけが知る本当のライトさんを。
「ホープ?」
ライトニングの表情に見惚れていると、硬直したままだった自身を怒ってるだろうと思ったのか、少しすまなそうに名前を呼ぶ。
「ラ、ライトさん…あなたって人は。もうびしょ濡れじゃないですか!」
「覗きをしたお前が悪い」
「だから僕はそんなつもり――!」
「なんだ?――あ」
思わず顔をそむけて手で覆った自身をみて、ライトニングはようやく自分がホープに裸体をさらけ出していることに気がつく。
流石にそういう対応をされると羞恥心が顔を覗いた。胸を片手で隠し、肩まで泉に浸かる。
「すまなかったホープ。もう大丈夫だ」
「いえ、こちらこそ…すみません。ファングさんが先にあがられていたのでてっきりライトさんもあがったのとばっかり…」
「あぁ、だからか。ファングには薬草を取ってきて貰っている。ケアルで傷は癒えても体の怠さは癒えないから……」
「あぁ、なるほど……今持っていれば良かったのですが。すみません」
「お前が謝ることじゃない。気にするな」
そう言って微笑み、不意にライトニングの細く綺麗な指が自身の髪を捕らえる。
「お前の髪、お風呂上がりの犬みたいだ」
「そうさせたのは誰ですか。まったくもう……。乾かすあいだの替えの服どうしようかな」
「それなら私が責任をもってお前が浴びてる間に乾かそう」
「それは助かりますけど……。びっくりしました。ライトさん、意外と子供っぽいところあるんですね」
何気なくそう言い放つと、ライトニングは少しムスッとした顔になる。
「私だって昔はイタズラ好きの子供だったんだ。少しぐらい、子供になってもいいだろう?」
そう言い放つ彼女の顔は少し赤みがかっていて、とても愛らしかった。
「あの、あの。ライトさん」
「?なんだ」
「そういうことするのは、僕だけにしてくださいね」
「なんだ藪から棒に。スノウやサッズにするわけないだろう。ましてやファングになんかやったらからかわれるに決まってるから絶対やらないさ」
「ヴァニラさんは?」
「逆に私がやられるくらいだ」
たしかに、と言って笑うとライトニングも釣られて微笑んだ。