死骸の成れの果て――冥碑から12個目の願いを聞き届け、無事にその使命を果たした後。その冥碑があったところに戻ってみると、赤くそびえ立ち、何をしてもビクともしなかった――ヴァニラ曰く”結界”がいつの間にか消えていた。
長く続く道を吸い寄せられるように進んでいくと、そこには多数の大きな水溜りとチョコボ、そして水棲の魔物が出迎えた。

この夜を明かそう////////2018.9.

サンダガを唱えてようやく、残り一体だったサハギンが死滅する。冥碑曰く、ここは元はチョコボ達の住処だったが最近（といっても随分前だが）サハギン達の根城に成り代わってしまったらしかった。
戦闘が終わりブレイズエッジを収めると、ホープが何かを見つけたのか小走りし、それを拾ってまた戻ってきた。
｢ライトさん見てください。随分風化してますけどこれ…パルスの文字で書かれてますよね？｣
ホープが見つけたのは元は道標として使われていた木製の看板だった。
どれ、とそれを上からひょいとつまみ上げたのは先ほど共に戦ったファングだ。
｢おー？どれどれ……あぁ、ここの土地名だな。ここは”ナムヴァの泉”って言うらしいな。ウチらがパルスにいた頃には聞いたこと無かったから、冥碑になった人間達が生きてた時代に出来たんだろうな｣
｢なるほど。それにしてもここは…魔物も少ないし、第一チョコボがいるしベースキャンプにはもってこいだな｣
｢そうですね…、ちょうど日もくれてきたし、今日はここで休みましょう｣
ホープの提案に頷くと、ではサッズさん達にも知らせてきます、と言い小走りで離れていった。
それを見たファングが小さな笑みを浮かべて口を開く。
｢だいぶ逞しくなったな、ホープのやつ。…といってもホープの甘ったれなところは見たことないからなんとも言えねーけど｣
｢確かにそうだな。ホープの成長は誰よりも…私が。しみじみ感じている｣
｢確か今夜の見張り番ウチらだろう？その時教えてくれよ。ホープとの二人旅｣
｢教えるのもな…とくに面白くもなんともないぞ｣
そういってファングから目を逸らすと、彼女はニヤリと笑ってそりゃあ楽しみだ、と零した。
それと間もなくして遠くからライトさん、というホープの声と食料を調達していたサッズ達の賑やかな声が響いてくる。
ファングがその声に反応し、手を軽く振ると真っ先にヴァニラが元気よく振り返した。サッズとスノウも同じように軽く返す。ファングの元に一直線に駆け寄ってきたヴァニラが、今日の収穫を楽しげに自慢した。
｢みてみてファング！この木の実、覚えてる？私とファングが好きだったやつ。沢山生えてるところを見つけたから多めに取ってきたんだ。懐かしいでしょ？｣
｢おお、これよく食べてたよな。ありがとうヴァニラ。やっぱりパルスといったらこれだよなぁ｣
そういって自然な流れでヴァニラの頭を撫でるファング。
ヴァニラは目を閉じてそれを受け入れる。
まるでペットと飼い主だな…いや、この2人に上下関係などないのだから、猫同士の毛繕いか…？とぼんやり考えていると、ヴァニラがそんな様子を見かねてライトニングに木の実を見せてくれた。
｢ライトニング、みてみて。これね、パルスの木の実だと珍しく甘くて美味しいんだ｣
｢へぇ……確かに見た目も美味しそうだし、これはいいな｣
｢でしょう？今日のご飯はいつもよりもっと美味しくなるよ！今日の担当は私とサッズだし、楽しみにしてて！｣
へへん、と両腕を腰に当てて笑顔を浮かべるヴァニラに、ライトニングも思わず頭に手が伸びてしまった。
突然のライトニングの行動にびっくりしたヴァニラだったが、何も言うことなくライトニングの撫でを受け入れる。
｢あ…、すまない。なんだか小さい時のセラを見ているようでつい…｣
｢いーのいーの！私、ライトニングにこうして貰えるの、初めてだし嬉しいかも｣
｢ヴァニラは寂しがり屋だからな｣
｢そう、寂しがり屋だから…ファングがいないとダメ！｣
そういってヴァニラはファングに抱きついた。ヴァニラをからかおうとして上手くしてやられた、という形になったファングは仕方ねーな、といいながら抱き返す。
そんな様子を微笑ましくみていたライトニングはその場から離れ、サッズとスノウを確認すると、野営の準備を2人と進めた。