元同級生の呟き
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東堂が予告もなしに転校していってからというもの、教室ではひっきりなしに彼女の話が飛び交っている。
ただの引っ越しならまだしも、聖マリー学園なんていう得体の知れない学校名を告げられたらそりゃ焦るよな。
調べてきたクラスメイトが、そこが製菓専門学校なのだということを突き止めるとさらにクラスは大騒ぎ。パティシエなんかになるようなそぶりなんて全く見せなかったと女子は嘆く。
「私、サロン・ド・マリーって喫茶店なら聞いたことある!そこの生徒が運営してるところなんだって!」
「あ、私もそれ聞いたことあるかも」
「それどこよ?」
「けっこう遠いし———なんで東堂さん何も言ってくれなかったんだろ!」
「ほんとそれ!」
それは東堂が自分のテリトリーに他人を巻き込みたくなかったからだろ。
彼女が毎日のようにお菓子を作っていたのを知っているのは本当に俺だけだったらしい。なんとなく優越感?
思わずしたり顔になっていたのか周りの奴が言う。
「お前なんか余裕そうだよなー。なんか知ってたの?」
「まあねー、俺ちょっと東堂さん気になってたし!」
「マジかよー、ドンマイ!」
「えー、河澄くんクール系好きだったんだ!」
気になるって何もそういう意味だけじゃないって。
ニヤニヤ顔でやりすごしながらもちょっと反論。別に東堂のクールなところが気になってたわけじゃない。クールに見えてお菓子作りには夢中で熱い思いを抱えていたことを知ってしまったから。
ふと、思い出す。
初めて彼女の秘密を知ったとき、もう一人誰かいた。
そうだ、おばあさんだ。東堂はおばあさんとお菓子を作っていた。
まてまて。この前、あいつ忌引きだったよな。それ、もしかして———
彼女の唐突な転校と直前の忌引き。一本の線が繋がる。
お菓子作りは決して彼女一人だけのテリトリーなどでは無かった。傍らにはいつもおばあさんがいたし、俺にだって門を開いてくれたじゃないか。
東堂が転校したのは、きっとあのキッチンで傍に居てくれる人を亡くしたからだ。
もしも、他に誰かいれば———なんてことを考える。
他に誰かがいれば、東堂は転校なんて考えなかっただろうか。
———もしかしたらそれは、俺だったかもしれないのに。
ただの引っ越しならまだしも、聖マリー学園なんていう得体の知れない学校名を告げられたらそりゃ焦るよな。
調べてきたクラスメイトが、そこが製菓専門学校なのだということを突き止めるとさらにクラスは大騒ぎ。パティシエなんかになるようなそぶりなんて全く見せなかったと女子は嘆く。
「私、サロン・ド・マリーって喫茶店なら聞いたことある!そこの生徒が運営してるところなんだって!」
「あ、私もそれ聞いたことあるかも」
「それどこよ?」
「けっこう遠いし———なんで東堂さん何も言ってくれなかったんだろ!」
「ほんとそれ!」
それは東堂が自分のテリトリーに他人を巻き込みたくなかったからだろ。
彼女が毎日のようにお菓子を作っていたのを知っているのは本当に俺だけだったらしい。なんとなく優越感?
思わずしたり顔になっていたのか周りの奴が言う。
「お前なんか余裕そうだよなー。なんか知ってたの?」
「まあねー、俺ちょっと東堂さん気になってたし!」
「マジかよー、ドンマイ!」
「えー、河澄くんクール系好きだったんだ!」
気になるって何もそういう意味だけじゃないって。
ニヤニヤ顔でやりすごしながらもちょっと反論。別に東堂のクールなところが気になってたわけじゃない。クールに見えてお菓子作りには夢中で熱い思いを抱えていたことを知ってしまったから。
ふと、思い出す。
初めて彼女の秘密を知ったとき、もう一人誰かいた。
そうだ、おばあさんだ。東堂はおばあさんとお菓子を作っていた。
まてまて。この前、あいつ忌引きだったよな。それ、もしかして———
彼女の唐突な転校と直前の忌引き。一本の線が繋がる。
お菓子作りは決して彼女一人だけのテリトリーなどでは無かった。傍らにはいつもおばあさんがいたし、俺にだって門を開いてくれたじゃないか。
東堂が転校したのは、きっとあのキッチンで傍に居てくれる人を亡くしたからだ。
もしも、他に誰かいれば———なんてことを考える。
他に誰かがいれば、東堂は転校なんて考えなかっただろうか。
———もしかしたらそれは、俺だったかもしれないのに。
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