20話 好敵手たち
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いちごは樹の言葉に少し元気づいたようだったが、翌日の練習でもついいちごパイを樫野の分まで切り分けてしまうなど、ちょっとした違和感にも気落ちするようだった。
「ここはケーキでも買って・・・」
なんとか慰みにしようと樹がサロン・ド・マリーに赴くと、中島がひとりで入り口前に突っ立っていた。いつもBグループのメンバーと一緒なので珍しい。
「何してるの。人でも待っているわけ」
「わっ!なによ東堂さん。私、いつもあの子達と一緒なわけじゃないわよ」
「ええ、そうみたいね」
「・・・」
中島は焦って行った言葉を軽く流されて、一瞬言葉に詰まった。
「東堂さん、ひとりでケーキなんか食べるのね。寂しくないの?」
「寂しくはないけれど、今日は持ち帰りよ。邪魔しないでね」
「邪魔!?ほんっと、あんたの言葉遣いって最低よね」
「そう」
中島のあしらい方を心得ている樹は手を振って店内へ入ろうとする。
「・・・ま、待って」
「・・・邪魔しないでって言ったのに」
「お代は出すから、私と店入って」
「・・・はあ?」
樹は思わず口をあんぐりと開ける。中島の方も苦々しい顔をしていた。
よほどひとりで入りたくなかったらしい。
「・・・私、二つ食べるわよ」
樹は仕方なく頷いた。
「ほんっと性格悪い!」
中島は、樹の前に並んだ苺のモンブランと、ミックスベリーのタルトを指差してやっと強気な声を出す。
「どっちも安くないのに!一回のおやつで1000円も!」
「言っておくけど、いちごは2000円以上はかけるわよ。一人で」
「やっぱりあの子、頭おかしい!」
そうは言いつつも、目当ての蜂蜜レモンパイにありつけた中島は少し嬉しそうである。
「そういえば、あなたたちのチーム、負けたみたいだけど相手チームにようこがいたでしょ」
「・・・ああ、いたわね」
ナチュラルに自分がチームの一員に加えられている事実に少し驚きながら樹は答える。
「あの子のことは、同じグループだけど私もよく分からない。グランプリに出ることも誰にもなんにも言わなかったんだから」
中島は少々腹立たしげに言った。
「あの子私たちより何倍も真面目だけど、大人しくしてるかと思えば自分だけでちゃっちゃか色々決めてるし。行動が意味分かんないのよ」
「・・・」
「もうちょっと私たち仲いいつもりだったんだけど・・・」
「仲良しじゃない。みんなで仲良く人のケーキ盗作したりしてたくせに。挙げ句の果てに鮎川さんは再犯よ」
「・・・」
樹が冷たく言い返すと中島は言葉に詰まった。あの時はシラを切り通したがやはり多少の罪悪感はあったらしい。
「今じゃ小城先輩にいいように使われてるみたいね。情報収集に役立つみたいだとかで」
「あの子、スイーツ作りもうまいわよ」
「あ、そう。でも樫野が入ったから補欠になったみたいね。この前聞いたわ」
「・・・そんなのひどい」
「あの子が選んだんでしょう」
樹が言うと、中島は口をつぐんだ。
「まあ、信用されていないとかではなくて、あんまり口に出さない子なんでしょう。私そういう人全然理解できないけど」
「あんたはそうでしょうね」
中島は鼻で笑う。樹は腕時計を見て立ち上がった。
「ま、正直なところ色々腹が立つこともあったけど、根本的に実力の無い人間が悪あがきしてても痛くも痒くもないのよね。そろそろ行くわ。ごちそうさま」
「そ、そう・・・」
中島は自分よりも早く片付けられた二枚の皿を呆然と見ながら言った。
「あの・・・私、もうさすがにあんたのことコネ入学のくせにとかって思ってないから」
「そう?」
樹はその言葉に笑みを向けて、去って行った。
「なんか、変わったなあ・・・あの子」
中島はその様子を見て思わず呟くのだった。
「ここはケーキでも買って・・・」
なんとか慰みにしようと樹がサロン・ド・マリーに赴くと、中島がひとりで入り口前に突っ立っていた。いつもBグループのメンバーと一緒なので珍しい。
「何してるの。人でも待っているわけ」
「わっ!なによ東堂さん。私、いつもあの子達と一緒なわけじゃないわよ」
「ええ、そうみたいね」
「・・・」
中島は焦って行った言葉を軽く流されて、一瞬言葉に詰まった。
「東堂さん、ひとりでケーキなんか食べるのね。寂しくないの?」
「寂しくはないけれど、今日は持ち帰りよ。邪魔しないでね」
「邪魔!?ほんっと、あんたの言葉遣いって最低よね」
「そう」
中島のあしらい方を心得ている樹は手を振って店内へ入ろうとする。
「・・・ま、待って」
「・・・邪魔しないでって言ったのに」
「お代は出すから、私と店入って」
「・・・はあ?」
樹は思わず口をあんぐりと開ける。中島の方も苦々しい顔をしていた。
よほどひとりで入りたくなかったらしい。
「・・・私、二つ食べるわよ」
樹は仕方なく頷いた。
「ほんっと性格悪い!」
中島は、樹の前に並んだ苺のモンブランと、ミックスベリーのタルトを指差してやっと強気な声を出す。
「どっちも安くないのに!一回のおやつで1000円も!」
「言っておくけど、いちごは2000円以上はかけるわよ。一人で」
「やっぱりあの子、頭おかしい!」
そうは言いつつも、目当ての蜂蜜レモンパイにありつけた中島は少し嬉しそうである。
「そういえば、あなたたちのチーム、負けたみたいだけど相手チームにようこがいたでしょ」
「・・・ああ、いたわね」
ナチュラルに自分がチームの一員に加えられている事実に少し驚きながら樹は答える。
「あの子のことは、同じグループだけど私もよく分からない。グランプリに出ることも誰にもなんにも言わなかったんだから」
中島は少々腹立たしげに言った。
「あの子私たちより何倍も真面目だけど、大人しくしてるかと思えば自分だけでちゃっちゃか色々決めてるし。行動が意味分かんないのよ」
「・・・」
「もうちょっと私たち仲いいつもりだったんだけど・・・」
「仲良しじゃない。みんなで仲良く人のケーキ盗作したりしてたくせに。挙げ句の果てに鮎川さんは再犯よ」
「・・・」
樹が冷たく言い返すと中島は言葉に詰まった。あの時はシラを切り通したがやはり多少の罪悪感はあったらしい。
「今じゃ小城先輩にいいように使われてるみたいね。情報収集に役立つみたいだとかで」
「あの子、スイーツ作りもうまいわよ」
「あ、そう。でも樫野が入ったから補欠になったみたいね。この前聞いたわ」
「・・・そんなのひどい」
「あの子が選んだんでしょう」
樹が言うと、中島は口をつぐんだ。
「まあ、信用されていないとかではなくて、あんまり口に出さない子なんでしょう。私そういう人全然理解できないけど」
「あんたはそうでしょうね」
中島は鼻で笑う。樹は腕時計を見て立ち上がった。
「ま、正直なところ色々腹が立つこともあったけど、根本的に実力の無い人間が悪あがきしてても痛くも痒くもないのよね。そろそろ行くわ。ごちそうさま」
「そ、そう・・・」
中島は自分よりも早く片付けられた二枚の皿を呆然と見ながら言った。
「あの・・・私、もうさすがにあんたのことコネ入学のくせにとかって思ってないから」
「そう?」
樹はその言葉に笑みを向けて、去って行った。
「なんか、変わったなあ・・・あの子」
中島はその様子を見て思わず呟くのだった。