19話 愛のかたち
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評価は味、技術、テーマ、完成度の四項目を十点満点で行う。二回戦までと違って厳密な審査が要求されているようだ。
「まずは、味と技術」
この瞬間、会場全体が緊張に包まれる。かなこ達は手を合わせていた。
「チーム小城、味7点、技術6点。チームいちご、味9点、技術10点」
チームいちごが6点もリードだ。小城はプロに特訓を受けたのにと難癖をつけたが、テンパリングには長期の練習がものを言うのだと諭されて黙り込む。
チョコレートで、付け焼き刃の技術では樫野に勝てない。
「次は、テーマと完成度」
辛島先生は続ける。
「チーム小城、テーマ10点、完成度9点。チームいちご、テーマ7点、完成度・・・5点」
樹ははっと目を見開いた。
点数を目に焼き付けて計算しながら最後の数字を待っていた人間には勝敗が分かった。
次の瞬間、合計の欄が緑の数字で埋まる。
「合計、チーム小城32点、チームいちご31点」
「・・・!」
四人は凍り付いた。
「よって、チーム小城の勝ち!」
「・・・やったー!おめでとうございます、お嬢様!」
「おーっほっほっほ!大勝利!」
小城達が歓喜する中、四人は呆然と立ちすくんでいた。
試合が始まって、何度も駄目だと思った。
でも、その度に仲間どうしで支えあえて、なんとかなるのだと心のどこかで思っていた。
現実は、厳しい。
いちごは耐えられず「あたしのせいだ」と泣き出した。
「違う!天野、お前のせいじゃない!」
「でも、これであたし達のグランプリは終わっちゃったんだよ・・・!」
いちごは悲痛な声を上げる。
鮎川に嬉々として話していた時はこんなことになるなんて思わなかったのに。
ただただ、悔しい。
「まだ終わってませんよ」
そこに、理事長の朗らかな声が挟まれた。
「グランプリはまだまだこれから。君たちにもチャンスはありますよ。三位決定戦がありますから」
「三位決定戦・・・?」
いちごはその言葉にきょとんとして泣き止んだ。
五人は東屋に集まった。いちごはすっかり三位決定戦のことを失念していたらしい。道が閉ざされていないならいくらでも希望は見いだせる。いちごは早く立ち直ってしまおうと自らを奮い立たせた。
「三位決定戦、頑張ろうね!また一緒に!」
決意も新たに樫野達に笑みを向ける。
「一緒に?それは無理ね」
小城が、それを遮って現れた。
「真くん?約束したわよね。負けたらチーム小城に入るって」
「・・・」
「たしかに約束しましたよ」
「証拠もあります」
佐藤が例のレコーダーを得意げに再生した。
そのことも、いちごは失念していた。
ふてぶてしく小城の条件を了承した樫野の声が、重たく響いた。
「真くん、カモーン!」
小城が元気はつらつと呼びかけると、樫野は立ち上がって東屋から出て行ってしまう。
「ちょ、ちょっと!」
「相手は卑怯な手を使ったんだ!行くことないよ!」
「それでも、約束は約束だ。今までサンキュー。お前らとチームになれて良かった」
引き止められるのにも構わず、樫野は歩き出す。
「か、樫野」
樹も思わず声をかけた。
かけたは言いが、何を言えば良いか分からなくなってしまう。
行かないでなんて言えた口でもない。行ってしまえだなんて思わない。
「・・・行ってらっしゃい」
樫野は一瞬面食らった顔をしたが、何か分かったように口元を緩めてほんの少し頷いた。
ショコラが泣きながら樫野について行くと叫んで服の裾にしがみついていった。どんなことがあっても私はあなたのパートナーだと叫びながら。
「真くん!」
小城は自分からやって来た樫野に夢中でしがみつくと、その頬に思い切りキスをした。樫野はだらだらと冷や汗を流しながらも一切抵抗しない。四人はその姿に驚愕する。
「さあ、行きましょ!マイ・ダーリン!おーっほっほっほ!」
小城に大人しく連れられていく樫野の背中を四人は呆然と見送る。
彼の離脱など、誰が想像しただろうか。
(・・・大きかったのね)
樹は樫野が抜けただけでぽっかり穴があいたような東屋を見てそう思った。
さんざん「小さいから」と揶揄して来たはずの樫野は、大きかったのだった。
「まずは、味と技術」
この瞬間、会場全体が緊張に包まれる。かなこ達は手を合わせていた。
「チーム小城、味7点、技術6点。チームいちご、味9点、技術10点」
チームいちごが6点もリードだ。小城はプロに特訓を受けたのにと難癖をつけたが、テンパリングには長期の練習がものを言うのだと諭されて黙り込む。
チョコレートで、付け焼き刃の技術では樫野に勝てない。
「次は、テーマと完成度」
辛島先生は続ける。
「チーム小城、テーマ10点、完成度9点。チームいちご、テーマ7点、完成度・・・5点」
樹ははっと目を見開いた。
点数を目に焼き付けて計算しながら最後の数字を待っていた人間には勝敗が分かった。
次の瞬間、合計の欄が緑の数字で埋まる。
「合計、チーム小城32点、チームいちご31点」
「・・・!」
四人は凍り付いた。
「よって、チーム小城の勝ち!」
「・・・やったー!おめでとうございます、お嬢様!」
「おーっほっほっほ!大勝利!」
小城達が歓喜する中、四人は呆然と立ちすくんでいた。
試合が始まって、何度も駄目だと思った。
でも、その度に仲間どうしで支えあえて、なんとかなるのだと心のどこかで思っていた。
現実は、厳しい。
いちごは耐えられず「あたしのせいだ」と泣き出した。
「違う!天野、お前のせいじゃない!」
「でも、これであたし達のグランプリは終わっちゃったんだよ・・・!」
いちごは悲痛な声を上げる。
鮎川に嬉々として話していた時はこんなことになるなんて思わなかったのに。
ただただ、悔しい。
「まだ終わってませんよ」
そこに、理事長の朗らかな声が挟まれた。
「グランプリはまだまだこれから。君たちにもチャンスはありますよ。三位決定戦がありますから」
「三位決定戦・・・?」
いちごはその言葉にきょとんとして泣き止んだ。
五人は東屋に集まった。いちごはすっかり三位決定戦のことを失念していたらしい。道が閉ざされていないならいくらでも希望は見いだせる。いちごは早く立ち直ってしまおうと自らを奮い立たせた。
「三位決定戦、頑張ろうね!また一緒に!」
決意も新たに樫野達に笑みを向ける。
「一緒に?それは無理ね」
小城が、それを遮って現れた。
「真くん?約束したわよね。負けたらチーム小城に入るって」
「・・・」
「たしかに約束しましたよ」
「証拠もあります」
佐藤が例のレコーダーを得意げに再生した。
そのことも、いちごは失念していた。
ふてぶてしく小城の条件を了承した樫野の声が、重たく響いた。
「真くん、カモーン!」
小城が元気はつらつと呼びかけると、樫野は立ち上がって東屋から出て行ってしまう。
「ちょ、ちょっと!」
「相手は卑怯な手を使ったんだ!行くことないよ!」
「それでも、約束は約束だ。今までサンキュー。お前らとチームになれて良かった」
引き止められるのにも構わず、樫野は歩き出す。
「か、樫野」
樹も思わず声をかけた。
かけたは言いが、何を言えば良いか分からなくなってしまう。
行かないでなんて言えた口でもない。行ってしまえだなんて思わない。
「・・・行ってらっしゃい」
樫野は一瞬面食らった顔をしたが、何か分かったように口元を緩めてほんの少し頷いた。
ショコラが泣きながら樫野について行くと叫んで服の裾にしがみついていった。どんなことがあっても私はあなたのパートナーだと叫びながら。
「真くん!」
小城は自分からやって来た樫野に夢中でしがみつくと、その頬に思い切りキスをした。樫野はだらだらと冷や汗を流しながらも一切抵抗しない。四人はその姿に驚愕する。
「さあ、行きましょ!マイ・ダーリン!おーっほっほっほ!」
小城に大人しく連れられていく樫野の背中を四人は呆然と見送る。
彼の離脱など、誰が想像しただろうか。
(・・・大きかったのね)
樹は樫野が抜けただけでぽっかり穴があいたような東屋を見てそう思った。
さんざん「小さいから」と揶揄して来たはずの樫野は、大きかったのだった。