19話 愛のかたち
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グランプリの三回戦は、豪雨の中始まった。
会場まで一緒に来た樹とショコラだが、観客席でルミ達と座る樹の近くに居るわけにもいかない。いつも通りいちご達の上を浮遊しているバニラ達のもとへ合流した。
「樹ちゃん、遅いでー!」
「席ありがとう」
樹がルミの隣に座ると、既に会場入りしていたいちご達に遅れて、小城達が入って来た。
「おーっほっほっほ!チーム小城の入場よ!おまたせ!」
「おおおっ!」
佐藤と塩谷に拍手されながら小城が戸口で仁王立ちする。
「普通に入って来れんのかいな!」
「三人だけなのににぎやかね」
樹は冷めた目を送ったが、ふと自分の言ったことに違和感を覚える。チームは四人組のはずなのにおかしかった。チーム小城のもう一人のメンバーがいないではないか。
「あれ、誰?」
かなこがふとチーム小城の後方を指差した。佐藤達より一回り大柄な外人の男性が立っている。まさかもう一人のメンバーのはずはなかった。樹は目を瞬く。
「ムッシュ・レオンだわ!ショコラティエの!樫野が彼のファンなのよ———」
樫野の方を見てみると、やはり目を見開いて彼を見つめている。
いちご達の空気は固かった。本当にあれからまともに合同練習をしていないのかもしれない。
「皆さん、こちらはパリからいらしたショコラティエ、ムッシュ・レオンです。グランプリを見たいとおっしゃるので、見学していただくことになりました」
理事長がにこやかに紹介すると、「レオン!」と小城がフレンドリーに手を振った。ムッシュ・レオンがそれに軽く答える。
彼は、自分のパティスリーにシャトー製菓がチョコレートを提供しているコネで、小城の指導を承ったらしい。弟子を滅多に取らないというので有名な彼なので、こんなことは特別中の特別だ。それを、小城はやってのける。高笑いする小城に事情を知らされた樫野は目に見えて動揺する。
「———これより、ケーキグランプリ準決勝を始める。まずチームいちご。対するは、チーム小城」
一段落ついたあたりで、辛島先生が司会をはじめた。
「今回の課題はチョコレートケーキ、テーマはLOVE。制限時間は三時間。用意、スタート!」
ブザーと共に両者が動き出すが、小城がザッハトルテを作ると高らかに告げ、チームいちごの動きが止まった。
「あっちもザッハトルテ!?」
「うふふ、気になる?いいわよ、大サービス!私たちが作るケーキを見せてあげるわ!」
小城が指を鳴らすと、二人が図面を広げた。可愛らしいピンク色を基調としたハートを象ったデザインだ。
なぜか、いちご達はそれを見て凍り付く。
「ザッハトルテを土台にした、ハートがいっぱいのラブラブケーキ!ステキでしょう?」
「・・・えっ」
「似てる・・・!似ついてる!」
「ていうかあれ、どう見てもいちごちゃんのを元に華やかにアレンジしたものだよ!」
「なんですって・・・」
花房達の言葉に、樹は顔が青ざめた。
気づいていなくてはいけなかった。自分は、小城からそのことを聞かされていたのに。
「天野、おまえデザイン画をあいつらに見せたのか?」
「そ、そんなことするわけないでしょ!」
「仲間を疑うのか!」
「確かめてるだけだ!」
「二人とも!今はけんかしてる場合じゃないよ!」
樹ははっとした。
会場中から自分に、目線が向けられている。
いつもいちご達と一緒に居る自分が、疑われている。
そのとき扉が開き、一人の女子生徒がそそくさと小城側にやってきた。
「先生、チーム小城の四人目のメンバーが到着しましたわ!」
同じクラスで、Bグループの鮎川ようこだ。
意外な人選に樹は呆気にとられる。
「遅刻は感心しないな」
「すみません」
「まあまあ、幸い始まったばかりですし、早く入りなさい」
「はい」
理事長は寛容な態度を見せる。何それ、と一部で不満げな声が上がった。樹も眉を寄せたが、いちごの顔色がさっと悪くなったことに気づいて向き直った。
「どうしよう・・・!あたし、鮎川さんにケーキのデザイン、見せちゃった・・・」
いちごはとんでもないことを告白した。
会場まで一緒に来た樹とショコラだが、観客席でルミ達と座る樹の近くに居るわけにもいかない。いつも通りいちご達の上を浮遊しているバニラ達のもとへ合流した。
「樹ちゃん、遅いでー!」
「席ありがとう」
樹がルミの隣に座ると、既に会場入りしていたいちご達に遅れて、小城達が入って来た。
「おーっほっほっほ!チーム小城の入場よ!おまたせ!」
「おおおっ!」
佐藤と塩谷に拍手されながら小城が戸口で仁王立ちする。
「普通に入って来れんのかいな!」
「三人だけなのににぎやかね」
樹は冷めた目を送ったが、ふと自分の言ったことに違和感を覚える。チームは四人組のはずなのにおかしかった。チーム小城のもう一人のメンバーがいないではないか。
「あれ、誰?」
かなこがふとチーム小城の後方を指差した。佐藤達より一回り大柄な外人の男性が立っている。まさかもう一人のメンバーのはずはなかった。樹は目を瞬く。
「ムッシュ・レオンだわ!ショコラティエの!樫野が彼のファンなのよ———」
樫野の方を見てみると、やはり目を見開いて彼を見つめている。
いちご達の空気は固かった。本当にあれからまともに合同練習をしていないのかもしれない。
「皆さん、こちらはパリからいらしたショコラティエ、ムッシュ・レオンです。グランプリを見たいとおっしゃるので、見学していただくことになりました」
理事長がにこやかに紹介すると、「レオン!」と小城がフレンドリーに手を振った。ムッシュ・レオンがそれに軽く答える。
彼は、自分のパティスリーにシャトー製菓がチョコレートを提供しているコネで、小城の指導を承ったらしい。弟子を滅多に取らないというので有名な彼なので、こんなことは特別中の特別だ。それを、小城はやってのける。高笑いする小城に事情を知らされた樫野は目に見えて動揺する。
「———これより、ケーキグランプリ準決勝を始める。まずチームいちご。対するは、チーム小城」
一段落ついたあたりで、辛島先生が司会をはじめた。
「今回の課題はチョコレートケーキ、テーマはLOVE。制限時間は三時間。用意、スタート!」
ブザーと共に両者が動き出すが、小城がザッハトルテを作ると高らかに告げ、チームいちごの動きが止まった。
「あっちもザッハトルテ!?」
「うふふ、気になる?いいわよ、大サービス!私たちが作るケーキを見せてあげるわ!」
小城が指を鳴らすと、二人が図面を広げた。可愛らしいピンク色を基調としたハートを象ったデザインだ。
なぜか、いちご達はそれを見て凍り付く。
「ザッハトルテを土台にした、ハートがいっぱいのラブラブケーキ!ステキでしょう?」
「・・・えっ」
「似てる・・・!似ついてる!」
「ていうかあれ、どう見てもいちごちゃんのを元に華やかにアレンジしたものだよ!」
「なんですって・・・」
花房達の言葉に、樹は顔が青ざめた。
気づいていなくてはいけなかった。自分は、小城からそのことを聞かされていたのに。
「天野、おまえデザイン画をあいつらに見せたのか?」
「そ、そんなことするわけないでしょ!」
「仲間を疑うのか!」
「確かめてるだけだ!」
「二人とも!今はけんかしてる場合じゃないよ!」
樹ははっとした。
会場中から自分に、目線が向けられている。
いつもいちご達と一緒に居る自分が、疑われている。
そのとき扉が開き、一人の女子生徒がそそくさと小城側にやってきた。
「先生、チーム小城の四人目のメンバーが到着しましたわ!」
同じクラスで、Bグループの鮎川ようこだ。
意外な人選に樹は呆気にとられる。
「遅刻は感心しないな」
「すみません」
「まあまあ、幸い始まったばかりですし、早く入りなさい」
「はい」
理事長は寛容な態度を見せる。何それ、と一部で不満げな声が上がった。樹も眉を寄せたが、いちごの顔色がさっと悪くなったことに気づいて向き直った。
「どうしよう・・・!あたし、鮎川さんにケーキのデザイン、見せちゃった・・・」
いちごはとんでもないことを告白した。