19話 愛のかたち
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「LOVE・・・それは、切なく強く甘いもの・・・。愛のない人生なんて無意味だよ。愛こそが生きる喜びなのさ」
もはやたまり場と化しているバラの温室で作戦会議を開くことになった一同は、バラ片手にうっとりと持論を語る花房の話を思い思いの表情で聞いていた。
「ちなみに、赤いバラの花言葉は愛だよ。はい、いちごちゃんにあげる」
「うわあ、ありがとう!」
「あのねえ、そうやってやたらと学園内の植物を配るのってどうなのかしら」
樹は据わった目で花房を見るが、花房は冗談めかす。
「あ、樹ちゃんも欲しかった?はい、黄色いバラの花言葉は嫉妬だよ」
「要らないわよ。はい」
樹は面倒くさそうにバラを安堂に横流しする。まさか樫野にリレーするわけにもいかず、安堂はバラ片手に苦笑した。
「・・・花房、おまえバカじゃねえの」
「・・・君が馬鹿にする、その『愛』が今度のテーマなんだけど」
樫野の言葉を受けて、花房はむっとする。
「ケーキのかたちをハートにしとけば、それでいいだろ」
「愛はそんな単純なものじゃないよ。そんなんで、勝てると思ってるわけ?」
「勝てるさ。バレンタインだって、オジョーは天野に勝てなかったじゃねえか。俺の敵じゃない」
「小城さんのやり方はともかく、彼女が君を想う気持ちも愛だよ」
「・・・知るか」
樫野はそっけなく吐き捨てる。
「そうやって人の気持ちを侮ってると、いつか痛い目にあうぞ」
「・・・っ!」
花房の冷たい目を、樫野は睨み返す。険悪な雰囲気だ。
「二人ともやめろよ!」
「落ちついて!」
「高級材料を取り寄せる、オジョーはただそれだけだ。いくら材料がよくても、それを使いこなす技術は無い。俺は負けねえ」
樫野は言うと、席を立ってきびすを返した。
「ちょっと樫野、どこ行くの!?」
「俺にこのテーマはさっぱり分からない。お前達で決めろ」
「何よそれ、無責任にも程があるわよ樫野」
樹はがたりと立ち上がった。
「自分が作るケーキなんでしょう。いつも出しゃばりたがるチョコレートのケーキのくせに全部丸投げだなんて、やっぱり自信がないんじゃないの」
「なっ・・・!」
第二ラウンドの開始に安堂といちごは青ざめる。
「テーマが気に食わないから考えることから逃げるだなんて、ガキじゃあるまいしほんと信じられない。どうなっても知らないわよ」
「・・・知らなくてもいいだろ、お前は!グランプリに出てるわけでもないんだから!」
「ちょっと、やめなよ!」
「余計なことに口突っ込んでないで自分のやるべきことでもやってたらどうなんだ!」
「・・・やるべきことなんて分からないわよ」
樹が突如勢いを失ってぽつりと呟き、樫野ははっとした。
彼女が似たような目をした時があったのを思い出した。
まずいと思いながらも樹にかける言葉は思いつかず、樫野はみんなに「決まったら教えろ」とだけ言って出て行った。
温室に、気まずい空気が残る。覇気を無くした様子の樹が、かろうじていつもの声の調子で言った。
「そうね、私も考え事したいから抜ける。樫野に言われたからじゃないけど、どうも自分のことでおろそかになってることがある気がするのよね。気にしないで頑張ってちょうだい。役に立てることがあったら呼んで」
「樹ちゃん・・・」
「じゃ」
樹は早足に去って行き、花房が伸ばしかけた手を遮るように温室の扉を閉めた。
もはやたまり場と化しているバラの温室で作戦会議を開くことになった一同は、バラ片手にうっとりと持論を語る花房の話を思い思いの表情で聞いていた。
「ちなみに、赤いバラの花言葉は愛だよ。はい、いちごちゃんにあげる」
「うわあ、ありがとう!」
「あのねえ、そうやってやたらと学園内の植物を配るのってどうなのかしら」
樹は据わった目で花房を見るが、花房は冗談めかす。
「あ、樹ちゃんも欲しかった?はい、黄色いバラの花言葉は嫉妬だよ」
「要らないわよ。はい」
樹は面倒くさそうにバラを安堂に横流しする。まさか樫野にリレーするわけにもいかず、安堂はバラ片手に苦笑した。
「・・・花房、おまえバカじゃねえの」
「・・・君が馬鹿にする、その『愛』が今度のテーマなんだけど」
樫野の言葉を受けて、花房はむっとする。
「ケーキのかたちをハートにしとけば、それでいいだろ」
「愛はそんな単純なものじゃないよ。そんなんで、勝てると思ってるわけ?」
「勝てるさ。バレンタインだって、オジョーは天野に勝てなかったじゃねえか。俺の敵じゃない」
「小城さんのやり方はともかく、彼女が君を想う気持ちも愛だよ」
「・・・知るか」
樫野はそっけなく吐き捨てる。
「そうやって人の気持ちを侮ってると、いつか痛い目にあうぞ」
「・・・っ!」
花房の冷たい目を、樫野は睨み返す。険悪な雰囲気だ。
「二人ともやめろよ!」
「落ちついて!」
「高級材料を取り寄せる、オジョーはただそれだけだ。いくら材料がよくても、それを使いこなす技術は無い。俺は負けねえ」
樫野は言うと、席を立ってきびすを返した。
「ちょっと樫野、どこ行くの!?」
「俺にこのテーマはさっぱり分からない。お前達で決めろ」
「何よそれ、無責任にも程があるわよ樫野」
樹はがたりと立ち上がった。
「自分が作るケーキなんでしょう。いつも出しゃばりたがるチョコレートのケーキのくせに全部丸投げだなんて、やっぱり自信がないんじゃないの」
「なっ・・・!」
第二ラウンドの開始に安堂といちごは青ざめる。
「テーマが気に食わないから考えることから逃げるだなんて、ガキじゃあるまいしほんと信じられない。どうなっても知らないわよ」
「・・・知らなくてもいいだろ、お前は!グランプリに出てるわけでもないんだから!」
「ちょっと、やめなよ!」
「余計なことに口突っ込んでないで自分のやるべきことでもやってたらどうなんだ!」
「・・・やるべきことなんて分からないわよ」
樹が突如勢いを失ってぽつりと呟き、樫野ははっとした。
彼女が似たような目をした時があったのを思い出した。
まずいと思いながらも樹にかける言葉は思いつかず、樫野はみんなに「決まったら教えろ」とだけ言って出て行った。
温室に、気まずい空気が残る。覇気を無くした様子の樹が、かろうじていつもの声の調子で言った。
「そうね、私も考え事したいから抜ける。樫野に言われたからじゃないけど、どうも自分のことでおろそかになってることがある気がするのよね。気にしないで頑張ってちょうだい。役に立てることがあったら呼んで」
「樹ちゃん・・・」
「じゃ」
樹は早足に去って行き、花房が伸ばしかけた手を遮るように温室の扉を閉めた。