19話 愛のかたち
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樫野と樹が二人で調理室にいる時は、静かだ。
雑談も口喧嘩も無く、ただ淡々と自分の練習に神経を注ぐのみ。
自分と相手がお互いに真剣であるという事実だけを感じながら、決して視線は向けない。
険悪な関係だろうか。冷めた関係だろうか。
樹は実習室の中では疑問に思うことも無く、練習を続けるのみだった。
ケーキグランプリ三回戦の告知が掲示された。
真っ赤な背景に金文字、と一昔前のミュージカルのようなデザイン。課題はチョコレートケーキ、テーマは「LOVE」とうたわれていた。
「チョコレートケーキ!」
「これって有利かも!ね、樫野?」
安堂といちごは課題を見て嬉しそうにした。一方で、自分の十八番が課題となった樫野だが彼はテーマの方に不満があるようだった。
「課題はいい。でも、テーマ「LOVE」ってなんだよ・・・」
「私が教えてあ・げ・る」
いやでも耳の奥に響くような声だった。バレンタイン以来の小城の登場に樫野が顔を引きつらせる間もない。小城は、真くんと連呼しながら樫野に飛びついてしきりにほおずりしだした。常習を逸した行動に、四人は思わず二歩下がる。
「だあああっ!」
樫野はどうにか小城を振り切って立ち上がったが、相当の体力を要したらしい。肩で息をしながら小城を睨んだ。
「小城先輩・・・いつもいつも、なんなんですか!?」
「見かけたら抱きつかずにはいられない、これが愛よ!愛なのよー!おーっほっほっほ!」
小城は芝居がかった台詞とポーズを決めて高笑いした。相変わらず清々しくパワフルである。
「嫌がらせとしか思えないんですけど・・・」
「LOVEだなんて、私と真くんにふさわしいテーマだわ!これは運命よ、そうでしょう!?」
「はい、運命です!」
お付きの二人が従順に声を揃えた。
「そういうことだから真くん!準決勝、私たちが勝ったらチーム小城に入ってちょうだいね」
「はあ!?なんでそうなるんですか!」
「それがあなたのためだから!」
「ためだから!」
小城達は同じポーズをびしっと決めて畳み掛ける。当然ながら樫野は小城達に背を向け、お断りしますと呆れた声をあげた。その様子に、佐藤と塩谷が口を挟む。
「あれー?負けるのが怖いんですか?」
「チョコレートのスイーツ王子と言われている人が逃げるなんて、意外と臆病なんですね」
「自信がないならしょうがないですねー」
あからさまな挑発だった。
「ーーー勝つ自身はありますよ。俺は、チョコレートなら誰にも負けない」
樫野は反応して振り返った。
「勝つならいいでしょう?約束したって」
「もしも負けたら、私のチームに入ってちょうだい」
「・・・いいですよ」
「樫野!」
樫野はプライドを優先させたのか、頷いた。いちごが仰天して声を上げる。
「おまえたち、今のきいたきいたきいたーっ!?」
「はい、しかと聞きました!」
「しっかりと、ボイスレコーダーに録音しました!」
佐藤が小型のボイスレコーダーの再生ボタンを押すと、先ほどの小城と樫野の短いやり取りが流れる。
契約は既に完了したと言わんばかりに小城は勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
「天野いちご!真くんはもらったわ!おーっほっほっほ!」
「おおーっ!」
高笑いする小城に二人が拍手を送る。いちごは夢中で声を上げる。
「て、勝負はまだこれからじゃないですか!」
「真くん、グランプリで会いましょう。おーっほっほっほ!」
いちごの言葉を歯牙にもかけず爽やかにもう一笑いすると、小城は去っていった。
嵐のような女だと樹は思った。
雑談も口喧嘩も無く、ただ淡々と自分の練習に神経を注ぐのみ。
自分と相手がお互いに真剣であるという事実だけを感じながら、決して視線は向けない。
険悪な関係だろうか。冷めた関係だろうか。
樹は実習室の中では疑問に思うことも無く、練習を続けるのみだった。
ケーキグランプリ三回戦の告知が掲示された。
真っ赤な背景に金文字、と一昔前のミュージカルのようなデザイン。課題はチョコレートケーキ、テーマは「LOVE」とうたわれていた。
「チョコレートケーキ!」
「これって有利かも!ね、樫野?」
安堂といちごは課題を見て嬉しそうにした。一方で、自分の十八番が課題となった樫野だが彼はテーマの方に不満があるようだった。
「課題はいい。でも、テーマ「LOVE」ってなんだよ・・・」
「私が教えてあ・げ・る」
いやでも耳の奥に響くような声だった。バレンタイン以来の小城の登場に樫野が顔を引きつらせる間もない。小城は、真くんと連呼しながら樫野に飛びついてしきりにほおずりしだした。常習を逸した行動に、四人は思わず二歩下がる。
「だあああっ!」
樫野はどうにか小城を振り切って立ち上がったが、相当の体力を要したらしい。肩で息をしながら小城を睨んだ。
「小城先輩・・・いつもいつも、なんなんですか!?」
「見かけたら抱きつかずにはいられない、これが愛よ!愛なのよー!おーっほっほっほ!」
小城は芝居がかった台詞とポーズを決めて高笑いした。相変わらず清々しくパワフルである。
「嫌がらせとしか思えないんですけど・・・」
「LOVEだなんて、私と真くんにふさわしいテーマだわ!これは運命よ、そうでしょう!?」
「はい、運命です!」
お付きの二人が従順に声を揃えた。
「そういうことだから真くん!準決勝、私たちが勝ったらチーム小城に入ってちょうだいね」
「はあ!?なんでそうなるんですか!」
「それがあなたのためだから!」
「ためだから!」
小城達は同じポーズをびしっと決めて畳み掛ける。当然ながら樫野は小城達に背を向け、お断りしますと呆れた声をあげた。その様子に、佐藤と塩谷が口を挟む。
「あれー?負けるのが怖いんですか?」
「チョコレートのスイーツ王子と言われている人が逃げるなんて、意外と臆病なんですね」
「自信がないならしょうがないですねー」
あからさまな挑発だった。
「ーーー勝つ自身はありますよ。俺は、チョコレートなら誰にも負けない」
樫野は反応して振り返った。
「勝つならいいでしょう?約束したって」
「もしも負けたら、私のチームに入ってちょうだい」
「・・・いいですよ」
「樫野!」
樫野はプライドを優先させたのか、頷いた。いちごが仰天して声を上げる。
「おまえたち、今のきいたきいたきいたーっ!?」
「はい、しかと聞きました!」
「しっかりと、ボイスレコーダーに録音しました!」
佐藤が小型のボイスレコーダーの再生ボタンを押すと、先ほどの小城と樫野の短いやり取りが流れる。
契約は既に完了したと言わんばかりに小城は勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
「天野いちご!真くんはもらったわ!おーっほっほっほ!」
「おおーっ!」
高笑いする小城に二人が拍手を送る。いちごは夢中で声を上げる。
「て、勝負はまだこれからじゃないですか!」
「真くん、グランプリで会いましょう。おーっほっほっほ!」
いちごの言葉を歯牙にもかけず爽やかにもう一笑いすると、小城は去っていった。
嵐のような女だと樹は思った。