18話 差し出す
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いちごと一太が帰って来たのは、それから更に2時間以上たった頃だった。いちごに一切電話が通じないので心配していたのだが、捜しにいこうと軒先に出たところで焦ったように走って来た。それにしても満足そうな顔をしている。
「お前、何やってんだよ!」
「携帯も通じないし心配したよ、いちごちゃん!」
「ごめん、ごめん。つい夢中になってて・・・」
「あなたたち遊んで来たの」
樹が尋ねると、いちごが答える前に一太がはしゃいだ様子で安堂に飛びついた。
「千兄!俺、ゾウに乗ったりジャンプやったりしたんだぜ!でも、ケーキ豚がまっずいほうれん草のケーキなんか作ってさ!」
「まずい!?自分が好き嫌いしてるだけでしょ!?」
「あはは、思いっきり遊んで来たなあ!」
「また遊びにおいで、だってさ!」
いちごに聞いてみると、道に迷ったところを例の看板少女のアメリに出会い、成り行きでサーカスを案内してもらいアメリやその母親ともすっかり仲良くなったらしい。一太が嬉しそうなので安堂も嬉しそうにしている。
いちごは自分のケーキにケチをつけられたことが悔しいのか首をひねっていた。
その夜樹が調理室を訪れてみると、案の定いちごが居て、聖マリーでは違和感のある食材を並べて唸っていた。
「人参とほうれん草・・・。ベジタブルケーキを作っていたのね」
「樹ちゃん!」
いちごは樹に気づくと嬉しそうに顔を上げた。試作品らしいものが置いてあるので樹はそちらを一瞥した。どうやら最初は人参とほうれん草のペーストを混ぜて生地を作り、次は別々に焼いて重ねてみたらしい。
「一体どうしてこんなもの作ってるの」
「サーカスでアメリちゃんと会ったって言ったよね。その後でアメリちゃんのお母さんにカレーとサラダをいただいたときに二人が野菜嫌いだって分かって・・・」
「あまり計画なしに奇抜な食材を使うのはやめておきなさい」
樹はこのところ何かと即興気味にケーキを作りたがるいちごを思い返した。
「そうだよね・・・。それで、今のところ別々なら何とかなりそうなんだけど両方っていうとなかなか美味しくできなくて・・・」
「それ、本当に両方一緒じゃなきゃだめなのかしら」
「だめなの!お互いの嫌いだったものを一緒に美味しく食べてもらうためには一緒のケーキにしないと」
樹は首をひねる。野菜のスイーツを作ったことは無い。
「まあ、簡単なところから考えましょうか。二つの味の取り合わせが微妙なら他の味を足してごまかすしかないわよね」
「あ、そうか・・・」
「何か二人が好きな食材とかないの」
「うーん、一太くんの好きそうなものは何となく分かるけど、アメリちゃんは・・・」
いちごは目を閉じて唸っていたが、アメリの母親がサラダにかけたヨーグルトソースをアメリが好きだと言っていたのを思い出した。
「ヨーグルトとか、どうかな?」
「いいかもしれない。割となんにでも合うものね」
二人は張り切って準備をすすめた。生地にヨーグルトと人参ペーストを入れて、オーブンに投入する。その間に、ヨーグルトクリームにほうれん草ペーストを混ぜ込んだものを作り、味見してみる。
「・・・もう少し甘みが欲しいところね」
「うん、甘みだけじゃなくて、なんか香りも欲しいよね」
「あ、桃なんてどうかしら。ミキサーにかけて」
「それだ!香りもいいし!」
にこにこしながら作業は順調だ。人参の生地も美しい色に焼き上がった。こまごまと手伝っていたバニラが近づいて鼻を利かせた。
「人参の匂い、しないわ!少しシナモンの香りがするくらい」
「なんだかうまくいきそうだね!」
爽やかできれいな緑色のクリームを丁寧に生地に塗り、デコレーションを施せば完成だ。二人はわくわくとフォークを入れた。
「・・・うん!ほうれん草も人参も姿を隠しながら、このふんわり桃の香りのするヨーグルトクリームがおいしさを包み込んでくれて!それに、桃とシナモンの組み合わせも爽やか!」
「いいわね、野菜の筋っぽい食感も全くないわ」
「人参とほうれん草嫌いのためのケーキ、レシピ完成だね!」
「うん!」
一段落着いたのでバニラがお茶を用意してくれる。いちごは満足感に笑みを浮かべながら息を吐いた。
「それにしても、樹ちゃんと一緒にケーキを作るのって久しぶり!」
「ああ、そういえば」
「樹ちゃんって樫野と似てるけど、やっぱり樫野と作るのとは違うなあ・・・あ、ごめん今の無し!」
いちごは何気なく呟いたが、樹の表情が変わったので慌てた。
「・・・まあ、別にいいわよ。皆に言われたもの」
「そっか、だよね!」
いちごは風の早さで立ち直る。樹は脱力した。
このマイペースさに正直やきもきすることもある。それでも、そこが魅力的な友人だ。
彼女と一緒にケーキを作っていると楽しい。
「また一緒に何か作りましょう」
言いだしたのは樹からだった。
「うん!」
いちごは二つ返事で頷いた。
「お前、何やってんだよ!」
「携帯も通じないし心配したよ、いちごちゃん!」
「ごめん、ごめん。つい夢中になってて・・・」
「あなたたち遊んで来たの」
樹が尋ねると、いちごが答える前に一太がはしゃいだ様子で安堂に飛びついた。
「千兄!俺、ゾウに乗ったりジャンプやったりしたんだぜ!でも、ケーキ豚がまっずいほうれん草のケーキなんか作ってさ!」
「まずい!?自分が好き嫌いしてるだけでしょ!?」
「あはは、思いっきり遊んで来たなあ!」
「また遊びにおいで、だってさ!」
いちごに聞いてみると、道に迷ったところを例の看板少女のアメリに出会い、成り行きでサーカスを案内してもらいアメリやその母親ともすっかり仲良くなったらしい。一太が嬉しそうなので安堂も嬉しそうにしている。
いちごは自分のケーキにケチをつけられたことが悔しいのか首をひねっていた。
その夜樹が調理室を訪れてみると、案の定いちごが居て、聖マリーでは違和感のある食材を並べて唸っていた。
「人参とほうれん草・・・。ベジタブルケーキを作っていたのね」
「樹ちゃん!」
いちごは樹に気づくと嬉しそうに顔を上げた。試作品らしいものが置いてあるので樹はそちらを一瞥した。どうやら最初は人参とほうれん草のペーストを混ぜて生地を作り、次は別々に焼いて重ねてみたらしい。
「一体どうしてこんなもの作ってるの」
「サーカスでアメリちゃんと会ったって言ったよね。その後でアメリちゃんのお母さんにカレーとサラダをいただいたときに二人が野菜嫌いだって分かって・・・」
「あまり計画なしに奇抜な食材を使うのはやめておきなさい」
樹はこのところ何かと即興気味にケーキを作りたがるいちごを思い返した。
「そうだよね・・・。それで、今のところ別々なら何とかなりそうなんだけど両方っていうとなかなか美味しくできなくて・・・」
「それ、本当に両方一緒じゃなきゃだめなのかしら」
「だめなの!お互いの嫌いだったものを一緒に美味しく食べてもらうためには一緒のケーキにしないと」
樹は首をひねる。野菜のスイーツを作ったことは無い。
「まあ、簡単なところから考えましょうか。二つの味の取り合わせが微妙なら他の味を足してごまかすしかないわよね」
「あ、そうか・・・」
「何か二人が好きな食材とかないの」
「うーん、一太くんの好きそうなものは何となく分かるけど、アメリちゃんは・・・」
いちごは目を閉じて唸っていたが、アメリの母親がサラダにかけたヨーグルトソースをアメリが好きだと言っていたのを思い出した。
「ヨーグルトとか、どうかな?」
「いいかもしれない。割となんにでも合うものね」
二人は張り切って準備をすすめた。生地にヨーグルトと人参ペーストを入れて、オーブンに投入する。その間に、ヨーグルトクリームにほうれん草ペーストを混ぜ込んだものを作り、味見してみる。
「・・・もう少し甘みが欲しいところね」
「うん、甘みだけじゃなくて、なんか香りも欲しいよね」
「あ、桃なんてどうかしら。ミキサーにかけて」
「それだ!香りもいいし!」
にこにこしながら作業は順調だ。人参の生地も美しい色に焼き上がった。こまごまと手伝っていたバニラが近づいて鼻を利かせた。
「人参の匂い、しないわ!少しシナモンの香りがするくらい」
「なんだかうまくいきそうだね!」
爽やかできれいな緑色のクリームを丁寧に生地に塗り、デコレーションを施せば完成だ。二人はわくわくとフォークを入れた。
「・・・うん!ほうれん草も人参も姿を隠しながら、このふんわり桃の香りのするヨーグルトクリームがおいしさを包み込んでくれて!それに、桃とシナモンの組み合わせも爽やか!」
「いいわね、野菜の筋っぽい食感も全くないわ」
「人参とほうれん草嫌いのためのケーキ、レシピ完成だね!」
「うん!」
一段落着いたのでバニラがお茶を用意してくれる。いちごは満足感に笑みを浮かべながら息を吐いた。
「それにしても、樹ちゃんと一緒にケーキを作るのって久しぶり!」
「ああ、そういえば」
「樹ちゃんって樫野と似てるけど、やっぱり樫野と作るのとは違うなあ・・・あ、ごめん今の無し!」
いちごは何気なく呟いたが、樹の表情が変わったので慌てた。
「・・・まあ、別にいいわよ。皆に言われたもの」
「そっか、だよね!」
いちごは風の早さで立ち直る。樹は脱力した。
このマイペースさに正直やきもきすることもある。それでも、そこが魅力的な友人だ。
彼女と一緒にケーキを作っていると楽しい。
「また一緒に何か作りましょう」
言いだしたのは樹からだった。
「うん!」
いちごは二つ返事で頷いた。