18話 差し出す
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ふたりが夢月に着いたのは、樫野と安堂に遅れること30分だった。樫野の「トロい」と睨む視線に迎えられて店内に入ると、安堂が何かこしらえている。
「あら、唐突ね。安堂くん、疲れてお腹が空いたのかしら」
「アホか、お前は」
「何よ」
「あー、はいはい」
再会するなり凶悪な雰囲気を作りかけている二人の間に安堂が割って入った。作業は終わったらしい。
「これはね、東堂さんに作ったんだ」
「え、私・・・?」
安堂が差し出したのは練りきりで作られた、小ぶりなうぐいすだった。つややかに丸みを帯びた様子が可愛らしい。外見からすると普通によくできているな、と思いながら樹は神妙な目でそれを観察した。
「いや、評価してもらう気はなかったんだけど・・・」
「ああ、そうなの?」
「お前、どんだけ上から目線なんだよ」
「この前は迷惑かけちゃったから、謝りたいんだ。本当にごめん。東堂さんのこと何も考えずに無神経なこと言ったと思ってる」
安堂は深く頭を下げた。樹は一瞬戸惑って花房の方を見たが、花房は微笑んでいるままなのでどうにか言葉を紡ごうと頭を巡らせた。
「別に———癇癪を起こした私も悪いし。傷心中の人にそこまで考えてもらうのは求めすぎってものだと思うし」
「東堂さん・・・」
「仲直り」
樹はつっけんどんに手を差し出した。安堂はその手を握り返すと安心したように笑みを漏らした。樹もつられて口角を上げてしまう。
「これ、再戦で作ったうぐいすのつもりなんだ」
「友情のモチーフにしたつもりなのね。そういえば理事長先生の解釈はちょっと面白かったわね。寄り添う優しさと突き放す優しさっていうの」
「東堂はどっちだ?」
樫野が何気なく花房と安堂に問いかけたが、二人は当然のように「樫野と同じ」と答えた。花房が調子づいて続ける。
「ていうか、二人ってだいたいよく似てるよね」
「ちょっと花房!それは・・・」
「はあ!?似てる!?」
「ちょっと花房くんなんてこと言うのよ。信じられない」
安堂は慌てたが樫野と樹は敏感に反応して花房に噛み付いた。
みんな思っていたけど言わなかったことなのに。
安堂は苦笑しながら改めて二人を見比べる。普段はクールなのにこういう場面でギャアギャアと声をあげている姿。本人も「そうかも」と思っているのか、花房を睨みながらもときどき同時に相手に視線を向ける姿。
「・・・似てるよなあ」
思わず感慨深く安堂は声をあげた。
「あ!?」
「は!?」
その瞬間、二人の鋭い視線が安堂に刺さった。
「あら、唐突ね。安堂くん、疲れてお腹が空いたのかしら」
「アホか、お前は」
「何よ」
「あー、はいはい」
再会するなり凶悪な雰囲気を作りかけている二人の間に安堂が割って入った。作業は終わったらしい。
「これはね、東堂さんに作ったんだ」
「え、私・・・?」
安堂が差し出したのは練りきりで作られた、小ぶりなうぐいすだった。つややかに丸みを帯びた様子が可愛らしい。外見からすると普通によくできているな、と思いながら樹は神妙な目でそれを観察した。
「いや、評価してもらう気はなかったんだけど・・・」
「ああ、そうなの?」
「お前、どんだけ上から目線なんだよ」
「この前は迷惑かけちゃったから、謝りたいんだ。本当にごめん。東堂さんのこと何も考えずに無神経なこと言ったと思ってる」
安堂は深く頭を下げた。樹は一瞬戸惑って花房の方を見たが、花房は微笑んでいるままなのでどうにか言葉を紡ごうと頭を巡らせた。
「別に———癇癪を起こした私も悪いし。傷心中の人にそこまで考えてもらうのは求めすぎってものだと思うし」
「東堂さん・・・」
「仲直り」
樹はつっけんどんに手を差し出した。安堂はその手を握り返すと安心したように笑みを漏らした。樹もつられて口角を上げてしまう。
「これ、再戦で作ったうぐいすのつもりなんだ」
「友情のモチーフにしたつもりなのね。そういえば理事長先生の解釈はちょっと面白かったわね。寄り添う優しさと突き放す優しさっていうの」
「東堂はどっちだ?」
樫野が何気なく花房と安堂に問いかけたが、二人は当然のように「樫野と同じ」と答えた。花房が調子づいて続ける。
「ていうか、二人ってだいたいよく似てるよね」
「ちょっと花房!それは・・・」
「はあ!?似てる!?」
「ちょっと花房くんなんてこと言うのよ。信じられない」
安堂は慌てたが樫野と樹は敏感に反応して花房に噛み付いた。
みんな思っていたけど言わなかったことなのに。
安堂は苦笑しながら改めて二人を見比べる。普段はクールなのにこういう場面でギャアギャアと声をあげている姿。本人も「そうかも」と思っているのか、花房を睨みながらもときどき同時に相手に視線を向ける姿。
「・・・似てるよなあ」
思わず感慨深く安堂は声をあげた。
「あ!?」
「は!?」
その瞬間、二人の鋭い視線が安堂に刺さった。