18話 差し出す
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会場を出るのは、入ることよりも難しかった。大勢の人間が一度にテントから出て行くために、辺りは縦へ横へと押し寄せる人の波で溢れかえっていた。
六人は、なかなか近づかない出口を遠目に確認しながらのろのろと歩いていた。
「はー、けっこう人いるねー」
「そうね、それにあまりちゃんと順路が整備されてないわね」
疲れて息を吐いているいちごの横で樹が言うそばから、六人が歩いている流れを断つように別の流れがやってきた。
これはひどいと漏らしかけた樹は、後ろの方を歩いていたはずのいちごと一太が居ないことに気づいて立ち止まる。分断されてしまったらしい。
ふと前を見ると、樫野たちも居なかった。立ち止まったところでちょうどまた分断されたようだった。
人の海の真ん中に取り残される。
樹はこの感覚を前にも味わった気がした。バレンタインパーティーの時だ。聖マリーに来るまで、一人でどこにいたって寂しくなかったはずなのに孤独感に襲われたのを覚えている。
あの時は、花房に見つけてもらった。
「見つけた」
そんなことを考えているそばから、花房が姿を現した。人ごみをかき分けてやってきたのだ。どんな手を使ったのかと思えば、女性客をご自慢のフェロモンで足止めしたらしい。
「遅いわよ」と樹は呟いた。
「樹ちゃんはすぐ一人になるから放っておけないね」
花房は日々女子生徒をうっとりさせている微笑を見せるとごく自然に樹の手を取った。
「何よ、人を子供のように」
「はい、はぐれないように」
花房はいっそう笑みを深くして寄り添った。どうも居心地が悪い気がして樹は少し顔を背けた。
「そうそう、電話しとかないと。・・・・もしもし、樫野?」
花房は速やかに樫野に連絡を取り、『夢月』で合流するというあたりのことを告げた。
二言三言話すと、花房は携帯の電源を切った。
「いちごちゃん、連絡取れないんだって」
「あら、そうなの。心配ね」
「心配?」
「そそっかしいんだもの。二人して迷子になっていそう」
「樹ちゃんは、仲のいい人には呆れ口調が多くなるよね」
「は?何よそれ」
「僕はそういうところが可愛いと思うな」
「そういう気持ちの悪い軽口やめなさいよね」
樹は、呆れたように言ったのだった。
六人は、なかなか近づかない出口を遠目に確認しながらのろのろと歩いていた。
「はー、けっこう人いるねー」
「そうね、それにあまりちゃんと順路が整備されてないわね」
疲れて息を吐いているいちごの横で樹が言うそばから、六人が歩いている流れを断つように別の流れがやってきた。
これはひどいと漏らしかけた樹は、後ろの方を歩いていたはずのいちごと一太が居ないことに気づいて立ち止まる。分断されてしまったらしい。
ふと前を見ると、樫野たちも居なかった。立ち止まったところでちょうどまた分断されたようだった。
人の海の真ん中に取り残される。
樹はこの感覚を前にも味わった気がした。バレンタインパーティーの時だ。聖マリーに来るまで、一人でどこにいたって寂しくなかったはずなのに孤独感に襲われたのを覚えている。
あの時は、花房に見つけてもらった。
「見つけた」
そんなことを考えているそばから、花房が姿を現した。人ごみをかき分けてやってきたのだ。どんな手を使ったのかと思えば、女性客をご自慢のフェロモンで足止めしたらしい。
「遅いわよ」と樹は呟いた。
「樹ちゃんはすぐ一人になるから放っておけないね」
花房は日々女子生徒をうっとりさせている微笑を見せるとごく自然に樹の手を取った。
「何よ、人を子供のように」
「はい、はぐれないように」
花房はいっそう笑みを深くして寄り添った。どうも居心地が悪い気がして樹は少し顔を背けた。
「そうそう、電話しとかないと。・・・・もしもし、樫野?」
花房は速やかに樫野に連絡を取り、『夢月』で合流するというあたりのことを告げた。
二言三言話すと、花房は携帯の電源を切った。
「いちごちゃん、連絡取れないんだって」
「あら、そうなの。心配ね」
「心配?」
「そそっかしいんだもの。二人して迷子になっていそう」
「樹ちゃんは、仲のいい人には呆れ口調が多くなるよね」
「は?何よそれ」
「僕はそういうところが可愛いと思うな」
「そういう気持ちの悪い軽口やめなさいよね」
樹は、呆れたように言ったのだった。