18話 差し出す
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サーカス当日、五人は私服でバスに乗り込み、会場まで足を運んだ。一太とは事前に約束していたので車内で合流した。
見慣れたはずの町並みに突如現れた巨大なテントの異常さ。その非現実感に早くも胸を高鳴らせた群衆が続々と吸い込まれるようにテントの中に消えていく。
五人はしばらくして、人ごみの中やっとのことでテントに入ることができた。
「ラッキー!前列だ!」
いちごはテンション高く一太をひっぱっていく。樹は無意識に二人に舞台の正面に近い側を譲り、花房の隣に落ち着いた。
「・・・絶対いまお前天野のこと子供扱いしただろ」
「え、何がよ」
「分かるよ。誕生日ケーキとか分けると、チョコプレート譲りたくなるよね、いちごちゃんみたいな子」
喧噪の中喋っていると自然と声が大きくなるが、いちご達には興奮のあまり聞こえていないようだった。そのままべらべらと話しているうちに、サーカスは華々しく開幕した。
ジャグリングをするピエロ。
ゾウの玉乗り。
いちごと一太が大歓声をあげて身を乗り出しているのを横目に、四人はまだ落ち着いた様子だった。
「いちごちゃんと一太くんって・・・」
「案外いいコンビかも」
「やっぱガキはガキ同士ってことだ」
好き勝手に言っていた三人だが、空中ブランコが始まるとやはり「すげー!」と騒ぎ立てた。目にも留まらない神業が連発して、会場全体が震えている。樹も空中を軽やかに飛び回る団員に見入った。
刹那的で、危うい。しかし、華やかで美しい。
彼らのように瞬間を心に焼き付けられる人間は素敵だなと樹はぼんやり考えた。
「さあ!当サーカスきっての花形スター、はるばるフランスからやってきた少女、アメリの登場です!」
クライマックスにスポットライトがブロンドの可憐な美少女をこうこうと照らし出した。会場は大喝采だ。
「きゃー!かーわーいーいー!!」
いちごもいつにも増して黄色い声をあげて大喜びする。その隣で、一太は見事に惚けた様子だった。アメリのキレの良い演技が終わってもぴくりとも動かず黙って固まっていた。
いちごがにこにこと話しかける。
「かわいかったねえ、アメリちゃん!」
「・・・そうでもねえよ!」
「・・・?」
一太はつんとした声を上げる。いちごは疑問に思ったようだったが、それが少年らしい恥じらいの姿なのだろうと樹は確信した。
見慣れたはずの町並みに突如現れた巨大なテントの異常さ。その非現実感に早くも胸を高鳴らせた群衆が続々と吸い込まれるようにテントの中に消えていく。
五人はしばらくして、人ごみの中やっとのことでテントに入ることができた。
「ラッキー!前列だ!」
いちごはテンション高く一太をひっぱっていく。樹は無意識に二人に舞台の正面に近い側を譲り、花房の隣に落ち着いた。
「・・・絶対いまお前天野のこと子供扱いしただろ」
「え、何がよ」
「分かるよ。誕生日ケーキとか分けると、チョコプレート譲りたくなるよね、いちごちゃんみたいな子」
喧噪の中喋っていると自然と声が大きくなるが、いちご達には興奮のあまり聞こえていないようだった。そのままべらべらと話しているうちに、サーカスは華々しく開幕した。
ジャグリングをするピエロ。
ゾウの玉乗り。
いちごと一太が大歓声をあげて身を乗り出しているのを横目に、四人はまだ落ち着いた様子だった。
「いちごちゃんと一太くんって・・・」
「案外いいコンビかも」
「やっぱガキはガキ同士ってことだ」
好き勝手に言っていた三人だが、空中ブランコが始まるとやはり「すげー!」と騒ぎ立てた。目にも留まらない神業が連発して、会場全体が震えている。樹も空中を軽やかに飛び回る団員に見入った。
刹那的で、危うい。しかし、華やかで美しい。
彼らのように瞬間を心に焼き付けられる人間は素敵だなと樹はぼんやり考えた。
「さあ!当サーカスきっての花形スター、はるばるフランスからやってきた少女、アメリの登場です!」
クライマックスにスポットライトがブロンドの可憐な美少女をこうこうと照らし出した。会場は大喝采だ。
「きゃー!かーわーいーいー!!」
いちごもいつにも増して黄色い声をあげて大喜びする。その隣で、一太は見事に惚けた様子だった。アメリのキレの良い演技が終わってもぴくりとも動かず黙って固まっていた。
いちごがにこにこと話しかける。
「かわいかったねえ、アメリちゃん!」
「・・・そうでもねえよ!」
「・・・?」
一太はつんとした声を上げる。いちごは疑問に思ったようだったが、それが少年らしい恥じらいの姿なのだろうと樹は確信した。