17話 すれ違い
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その日から再戦まで、樹は四人と顔を合わせなかった。学校は休みだし、わざわざ会いにいかない限り会わずに済む。四人の方も負けられない再戦を前にわざわざ気まずくなった友人の顔を拝むような神経は持ち合わせていないらしかった。
「人付き合いって本当に難しいのね」
湖畔でアリスに会った樹は浮かない様子でそうこぼしていた。
「アリスや天王寺さんが言っていたことが少し分かった気がするのよ。今の私は後悔だらけ。劣等感の塊だわ」
「でも、しょうがないよ。樹はちょっとややこしい環境にいるからさあ、どうしようもないことも多いし」
「本当は『私だけ、私だけ』ってずっと思ってた」
樹は泣き出しそうな顔で言った。
「私だけ同じチームのメンバーじゃないし、私だけスピリッツもいないし、私だけ取り柄も無いし、飛び抜けて優秀なわけでもないし」
「樹・・・」
「前の学校ではそんなこともなかったのに、今はすごく自分が情けないの。比べる相手もいなくて、人よりちょっと成績も良くて人よりお菓子作りが得意で、おばあちゃんがいるから寂しくもなくて、いま考えたらすごく甘い環境だったのね」
樹は嘆く。
口を挟む隙もなく弱音をまくしたてる樹を初めて見たアリスは動揺していた。
心配はしていたが、彼女が大丈夫と言えば大丈夫だと思っていた。
言葉通りに後悔も無く、何とか気丈にいちご達と付き合っているのだとアリスはどこかで思っていた。
「絶対後悔しないって思っていたのに。安堂君なんか私に比べて恵まれているのにって思ってしまったのよ。最低。本当に、私って最低なの」
「最低じゃないよ。樹は最低じゃないよ。最低っていうのは何か自分に不都合なことが起きたときに、自分では何もしないで逃げちゃう子だよ」
アリスは自分の言葉に口元を歪めながらも樹の肩を叩いて励まそうとしていた。
「樹なら大丈夫だよ。樹は強いから。そういう劣等感とか全部、みんなはごまかしてるんだ。弱いからね。認めるのが怖いんだ。ごまかさないで受け止められた樹は強いんだよ」
「強くないわよ」
「自信の無い樹なんて気持ち悪いよ。早く立ち直って頑張ろうよ」
「あんたねえ・・・」
樹は少し力が抜けたらしい。アリスはその様子にすこしほっとする。
「明日でしょ。再戦、ちゃんと見ときなよ」
「そうね、行きたくなかったけどやっぱり行っておく」
「みんなの『友情のかたち』を見て勉強しなさい」
「偉そうな」
樹はようやく小さな笑みを浮かべると寮に向かって歩いていった。
後ろ姿をしばらく見送っていたアリスは、微かな声で「ごめんね」と呟いた。
「人付き合いって本当に難しいのね」
湖畔でアリスに会った樹は浮かない様子でそうこぼしていた。
「アリスや天王寺さんが言っていたことが少し分かった気がするのよ。今の私は後悔だらけ。劣等感の塊だわ」
「でも、しょうがないよ。樹はちょっとややこしい環境にいるからさあ、どうしようもないことも多いし」
「本当は『私だけ、私だけ』ってずっと思ってた」
樹は泣き出しそうな顔で言った。
「私だけ同じチームのメンバーじゃないし、私だけスピリッツもいないし、私だけ取り柄も無いし、飛び抜けて優秀なわけでもないし」
「樹・・・」
「前の学校ではそんなこともなかったのに、今はすごく自分が情けないの。比べる相手もいなくて、人よりちょっと成績も良くて人よりお菓子作りが得意で、おばあちゃんがいるから寂しくもなくて、いま考えたらすごく甘い環境だったのね」
樹は嘆く。
口を挟む隙もなく弱音をまくしたてる樹を初めて見たアリスは動揺していた。
心配はしていたが、彼女が大丈夫と言えば大丈夫だと思っていた。
言葉通りに後悔も無く、何とか気丈にいちご達と付き合っているのだとアリスはどこかで思っていた。
「絶対後悔しないって思っていたのに。安堂君なんか私に比べて恵まれているのにって思ってしまったのよ。最低。本当に、私って最低なの」
「最低じゃないよ。樹は最低じゃないよ。最低っていうのは何か自分に不都合なことが起きたときに、自分では何もしないで逃げちゃう子だよ」
アリスは自分の言葉に口元を歪めながらも樹の肩を叩いて励まそうとしていた。
「樹なら大丈夫だよ。樹は強いから。そういう劣等感とか全部、みんなはごまかしてるんだ。弱いからね。認めるのが怖いんだ。ごまかさないで受け止められた樹は強いんだよ」
「強くないわよ」
「自信の無い樹なんて気持ち悪いよ。早く立ち直って頑張ろうよ」
「あんたねえ・・・」
樹は少し力が抜けたらしい。アリスはその様子にすこしほっとする。
「明日でしょ。再戦、ちゃんと見ときなよ」
「そうね、行きたくなかったけどやっぱり行っておく」
「みんなの『友情のかたち』を見て勉強しなさい」
「偉そうな」
樹はようやく小さな笑みを浮かべると寮に向かって歩いていった。
後ろ姿をしばらく見送っていたアリスは、微かな声で「ごめんね」と呟いた。