17話 すれ違い
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「それでは審査を開始します。まずは何から行きましょうかね?」
「フルーツゼリーは食べていただく前に勝負がついています!」
作業時間が終わり、理事長が言うと間髪入れずにれもんが声を張り上げた。みんなが不思議そうにれもんと、青くなっているいちごを見比べる。
「山岸、どういうことだ?」
「私のは完成してるんですが、いちご先輩のは・・・」
見ると、いちごの皿には、どろどろになったフルーツが情けなく乗っている。どう見てもまともな完成形ではない。思わずスイーツ王子達は顔を引きつらせた。
「ごめんなさい・・・。どうしてか分からないけど、ゼラチンが固まらなかったの・・・」
「それは、キウイを煮ないで使ったからだ」
涙目のいちごに、辛島先生が簡単に解説を述べた。キウイはタンパク質を分解する酵素が含まれているため、生のままだとゼラチンを溶かすというのだ。
「あ、一年生のときにやった、ような・・・」
「いちごちゃん。ゼリーは授業でやってないもんなあ・・・」
かなことルミはあちゃあ、と息を吐く。
それにしてもどうして慣れない食材を使ったのだろうかと樹は不思議に思う。
いちごは頭が真っ白になりながらもどうにか解説を受け止めた様子だった。
「それで、れもんちゃんはキウイを煮てたんだ・・・」
「山岸さん!あの時僕は材料を選んでる君たちを見ていたよ!」
安堂がいきなりれもんをにらみつけて声をあげた。
「君はそのことを天野さんが知らないのを見越して、キウイを選ぶように持ちかけていたんだ!」
「あら?そうだったかしら?」
れもんはとぼけて言う。安堂はその態度に血相を変えて近づこうとする。それを樫野が制した。
「やめとけ、安堂!そんな基本的なことも知らない天野が悪いんだ。それに、天野で勝ち星を落とすことは想定内だ」
「そんなあ・・・!」
安堂の訴えは大事にならず、食するまでもなくれもんに勝ち星がついた。
もう一つも落とせない状態だが、花房がデコレーションの技量で差を見せつけ、続く樫野も時間いっぱいを利用する意地を見せたことでチョコレートの質を高く評価された。
続くは和のスイーツだ。
「五年連続で全国和菓子コンクールで金賞を受賞した父の店、『九条』の『嵐山桜』をアレンジしました」
「僕も、実家の『夢月』オリジナルの『菜の花金団』をアレンジしてみました」
双方見た目に関して言うと互角で素晴らしい。理事長も期待通りなのか目を輝かせた。
嵐山桜の方は味も申し分無く全員が頷いたが、菜の花金団を口にした一同は揃って眉を寄せた。
「これは・・・安堂らしくない。上白糖の分量を間違えたな」
「・・・」
「私も、甘すぎると思います」
審査員が一斉にチームれもんの札を上げる。引き分けか、と会場の雰囲気は緩んだが安堂の方はそうもいかないようだった。
「安堂君・・・」
微動だにせず目を見開いたままの彼に、樹は心臓の奥がえぐられるような気がした。
「フルーツゼリーは食べていただく前に勝負がついています!」
作業時間が終わり、理事長が言うと間髪入れずにれもんが声を張り上げた。みんなが不思議そうにれもんと、青くなっているいちごを見比べる。
「山岸、どういうことだ?」
「私のは完成してるんですが、いちご先輩のは・・・」
見ると、いちごの皿には、どろどろになったフルーツが情けなく乗っている。どう見てもまともな完成形ではない。思わずスイーツ王子達は顔を引きつらせた。
「ごめんなさい・・・。どうしてか分からないけど、ゼラチンが固まらなかったの・・・」
「それは、キウイを煮ないで使ったからだ」
涙目のいちごに、辛島先生が簡単に解説を述べた。キウイはタンパク質を分解する酵素が含まれているため、生のままだとゼラチンを溶かすというのだ。
「あ、一年生のときにやった、ような・・・」
「いちごちゃん。ゼリーは授業でやってないもんなあ・・・」
かなことルミはあちゃあ、と息を吐く。
それにしてもどうして慣れない食材を使ったのだろうかと樹は不思議に思う。
いちごは頭が真っ白になりながらもどうにか解説を受け止めた様子だった。
「それで、れもんちゃんはキウイを煮てたんだ・・・」
「山岸さん!あの時僕は材料を選んでる君たちを見ていたよ!」
安堂がいきなりれもんをにらみつけて声をあげた。
「君はそのことを天野さんが知らないのを見越して、キウイを選ぶように持ちかけていたんだ!」
「あら?そうだったかしら?」
れもんはとぼけて言う。安堂はその態度に血相を変えて近づこうとする。それを樫野が制した。
「やめとけ、安堂!そんな基本的なことも知らない天野が悪いんだ。それに、天野で勝ち星を落とすことは想定内だ」
「そんなあ・・・!」
安堂の訴えは大事にならず、食するまでもなくれもんに勝ち星がついた。
もう一つも落とせない状態だが、花房がデコレーションの技量で差を見せつけ、続く樫野も時間いっぱいを利用する意地を見せたことでチョコレートの質を高く評価された。
続くは和のスイーツだ。
「五年連続で全国和菓子コンクールで金賞を受賞した父の店、『九条』の『嵐山桜』をアレンジしました」
「僕も、実家の『夢月』オリジナルの『菜の花金団』をアレンジしてみました」
双方見た目に関して言うと互角で素晴らしい。理事長も期待通りなのか目を輝かせた。
嵐山桜の方は味も申し分無く全員が頷いたが、菜の花金団を口にした一同は揃って眉を寄せた。
「これは・・・安堂らしくない。上白糖の分量を間違えたな」
「・・・」
「私も、甘すぎると思います」
審査員が一斉にチームれもんの札を上げる。引き分けか、と会場の雰囲気は緩んだが安堂の方はそうもいかないようだった。
「安堂君・・・」
微動だにせず目を見開いたままの彼に、樹は心臓の奥がえぐられるような気がした。