17話 すれ違い
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
今回の準々決勝ではテーマや課題が事前に用意されていなかったので、会場中の人が何を作るのか楽しみにしていた。
チームいちごはそれぞれの思惑を抱えながらも調理室に集まって個人練習に励んで今日を迎えることになった。
「今回の対決では、チーム対戦ではなく個人対戦で勝負を決めてもらいます」
理事長の宣言に会場はざわついた。樹も唇をかむ。頭一つ抜けて実力足らずのいちごや今回メンタル面で不安の残る安堂を抱えた四人にはかなり不利な方式だった。
続いて課題が発表される。
「カップケーキにクラシックショコラ、フルーツゼリー・・・ときて」
「春を感じさせてくれる和のスイーツ、ねえ・・・」
樹とかなこは課題を復唱した。和のスイーツに飢えているのか、これだけがなんだか具体的だ。理事長が「個人的な興味」として与えた課題らしい。
いちごちゃん大丈夫かな、とかなこは心配そうにする。
「・・・安堂君もね」
「安堂君・・・?安堂君なら大丈夫に決まってるよ!」
かなこは頬を紅潮させて否定する。彼女は安堂の精神状態をよく分かっていないのだった。
「間に合ったー!」
「おそいよ、ルミさん!」
ルミが遅れて駆け込んでくると同時に開始が宣言される。
「悪い悪い、ちょっと野暮用で・・・」
「ねえ、二人とも、天王寺さんも来てる!」
「きっと両チームに注目してるはずだわ」
樹は二チームの様子を食い入るように観察しながら言う。ルミとかなこも彼女のいつにも増して真剣そうな様子を見て向き直った。そういえば今まで気にしていなかったが放送部が隅の方でテレビ局で使われていそうな本格的なビデオカメラを回している。その中に、美和も紛れ込んでいた。
「フルーツゼリーはいちごちゃんかあ・・・なんか、えらい仲良さそうにやっとるけど・・・」
「何話してるんだろう・・・」
いちごは、材料のフルーツが盛られた台で、れもんとにこやかに話している。
「いちごちゃんにれもんちゃんか、なんか姉妹みたいやな!」
「うちのりんごも入れたらにぎやかだね!」
「そういえばあなたの妹、最近はどうしてるの」
「あれからずっと元気よ!またみんなに会いたいって」
かなこは嬉しそうに言う。そういえばあれからもう何ヶ月もたった。もう、春が来ようとしているのだ。
「花房くんはカップケーキね」
「華やかに仕上げるにはもってこいのスイーツやな」
花房の相手は森野だ。二人はいちご達とは違い相手を探り探りやっているようだ。
「生地を同じにしているみたい。勝負に出たわね」
花房は心配無さそうだし、クラシックショコラで林と当たった樫野も堂々とした様子で落ち着いているようだった。
「うん、樫野くん十八番のチョコレートなら負けないよ!」
かなこもルミも頷く。心配どころは安堂だが、二人の間がなにやら険悪なムードだった。いつも温厚な安堂が時折声をかける九条に声を荒げていた。かなこは眉を寄せた。
「今回の安堂君、どうしたんだろう・・・やっぱりどこか疲れてるみたい・・・」
「寝不足気味の顔だわ。隈ができてる」
「やっぱり相手のこと意識してるんやろか・・・向こうも実家が和菓子の老舗なんやろ?」
「ダメね、完全に本調子じゃないわ」
眉間をおさえる樹を横目に、かなこは不安げに安堂を見守ることしかできなかった。
チームいちごはそれぞれの思惑を抱えながらも調理室に集まって個人練習に励んで今日を迎えることになった。
「今回の対決では、チーム対戦ではなく個人対戦で勝負を決めてもらいます」
理事長の宣言に会場はざわついた。樹も唇をかむ。頭一つ抜けて実力足らずのいちごや今回メンタル面で不安の残る安堂を抱えた四人にはかなり不利な方式だった。
続いて課題が発表される。
「カップケーキにクラシックショコラ、フルーツゼリー・・・ときて」
「春を感じさせてくれる和のスイーツ、ねえ・・・」
樹とかなこは課題を復唱した。和のスイーツに飢えているのか、これだけがなんだか具体的だ。理事長が「個人的な興味」として与えた課題らしい。
いちごちゃん大丈夫かな、とかなこは心配そうにする。
「・・・安堂君もね」
「安堂君・・・?安堂君なら大丈夫に決まってるよ!」
かなこは頬を紅潮させて否定する。彼女は安堂の精神状態をよく分かっていないのだった。
「間に合ったー!」
「おそいよ、ルミさん!」
ルミが遅れて駆け込んでくると同時に開始が宣言される。
「悪い悪い、ちょっと野暮用で・・・」
「ねえ、二人とも、天王寺さんも来てる!」
「きっと両チームに注目してるはずだわ」
樹は二チームの様子を食い入るように観察しながら言う。ルミとかなこも彼女のいつにも増して真剣そうな様子を見て向き直った。そういえば今まで気にしていなかったが放送部が隅の方でテレビ局で使われていそうな本格的なビデオカメラを回している。その中に、美和も紛れ込んでいた。
「フルーツゼリーはいちごちゃんかあ・・・なんか、えらい仲良さそうにやっとるけど・・・」
「何話してるんだろう・・・」
いちごは、材料のフルーツが盛られた台で、れもんとにこやかに話している。
「いちごちゃんにれもんちゃんか、なんか姉妹みたいやな!」
「うちのりんごも入れたらにぎやかだね!」
「そういえばあなたの妹、最近はどうしてるの」
「あれからずっと元気よ!またみんなに会いたいって」
かなこは嬉しそうに言う。そういえばあれからもう何ヶ月もたった。もう、春が来ようとしているのだ。
「花房くんはカップケーキね」
「華やかに仕上げるにはもってこいのスイーツやな」
花房の相手は森野だ。二人はいちご達とは違い相手を探り探りやっているようだ。
「生地を同じにしているみたい。勝負に出たわね」
花房は心配無さそうだし、クラシックショコラで林と当たった樫野も堂々とした様子で落ち着いているようだった。
「うん、樫野くん十八番のチョコレートなら負けないよ!」
かなこもルミも頷く。心配どころは安堂だが、二人の間がなにやら険悪なムードだった。いつも温厚な安堂が時折声をかける九条に声を荒げていた。かなこは眉を寄せた。
「今回の安堂君、どうしたんだろう・・・やっぱりどこか疲れてるみたい・・・」
「寝不足気味の顔だわ。隈ができてる」
「やっぱり相手のこと意識してるんやろか・・・向こうも実家が和菓子の老舗なんやろ?」
「ダメね、完全に本調子じゃないわ」
眉間をおさえる樹を横目に、かなこは不安げに安堂を見守ることしかできなかった。