17話 すれ違い
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樹は美和から仕入れた情報を次の日に披露した。男子三人はそれぞれ出自にも恵まれた成績優秀な逸材らしい。
「森野は、父親が東京の有名なレストランのオーナーシェフで母親がパティシエール。林は、ベルギーからの帰国子女で樫野と同じショコラティエ志望。九条は京都の和菓子の老舗の息子。全国和菓子コンクールでも金賞常連」
一瞬安堂が息を飲んだのを樹は見た。
「それで、リーダーの山岸はパリ本校からの転校生。制服が一人だけ違うでしょう。一回戦では三年生チームと当たっていたらしいわ」
「和菓子の九条だって・・・!?」
安堂は目に見えて動揺した様子だった。同業者としてその名前には聞き覚えがあるらしい。それも、強烈な後光をまとっている様子だ。
「まさかメンバーに居たなんて・・・」
「道理で自信満々なわけだ。でも、ケーキを作るのに店の名前や出身なんて関係ねえよ」
樫野は安堂の態度に不機嫌そうにする。
「でも、九条と言えば!」
「関係ねえって!」
「僕も樫野に同感だよ。普段通りにしていれば、勝てない相手じゃない」
「どんなケーキを作るのかなあ・・・一回戦のビデオとか無いのかな?」
一方のいちごは好奇心を見せている。花房はうなずく。
「まあ、相手を知るのは悪くないよね」
「山田が持っているんじゃないかしら。聞いてみてもいいけれど」
「持ってますよ」
その時、美和が現れた。一同は驚いて声を上げる。
「あんた、いつからそこにいたのよ」
「安堂さんがびびった辺りです。皆さん、視聴覚室にどうぞ」
美和は流れを乗っ取ると五人を先導しはじめた。視聴覚室は小規模な映画館のようなつくりで、大画面での上映が楽しめる。美和は手際よくビデオをセットすると、あまり混ざる気は起きないのか席を外した。
五人は食い入るように画面を見つめた。チームれもんは一回戦のパウンドケーキで優美な白鳥の親子を作り上げ、全ての項目で満点をたたき出したのだ。
「三項目とも満点・・・」
「僕もまさか、これほどの実力だったとは思わなかったよ・・・」
「こいつら、ただの一年坊主じゃねえな・・・」
樫野は小さく舌打ちをする。なんだかんだでキャリアが一年追いつかない下級生のことを、少しは見くびっていたのだ。いちごは余裕のありそうだった二人の様子に少し不安になった。
しかし、なかでも一番張りつめた表情で画面の抹茶パウンドに釘付けになっているのは安堂だ。樹は彼のメンタルの弱さを今になって案じはじめた。
「・・・やだなあ、みんな!たしかにすごい出来だけど、あたし達のバラのパウンドケーキだって、理事長さんに褒められたじゃない!」
いちごはあわてて明るい声を出した。
「でも、技術面では彼らに負けている・・・。一回戦で彼らと当たっていたらどうなっていたか・・・」
「馬鹿ね。この場合の評価は相対点よ。たまたま相手との差が大きかっただけでしょ」
「まあ、焦るなよ。また違うケーキを作るんだから。そのときに勝てばいいだけの話さ」
樹と樫野は深刻そうに呟いた安堂に声をかける。花房も頷いた。
「そうだね。相手の実力も分かったことだし、気を引き締めて戦えばいい」
「だよね、だよね!よーし、頑張るぞー!おーっ!」
いちごはバニラと二人手を突き上げるが、誰も同調しなかった。
「なんでよ、みんなも気合い入れなきゃダメでしょ!?」
「誰よりも頑張らなくちゃいけないのはお前だろうが!」
「そ、そうでした・・・」
三人がモチベーションを高める中、安堂はやはり一人だけ浮かない様子だった。
「森野は、父親が東京の有名なレストランのオーナーシェフで母親がパティシエール。林は、ベルギーからの帰国子女で樫野と同じショコラティエ志望。九条は京都の和菓子の老舗の息子。全国和菓子コンクールでも金賞常連」
一瞬安堂が息を飲んだのを樹は見た。
「それで、リーダーの山岸はパリ本校からの転校生。制服が一人だけ違うでしょう。一回戦では三年生チームと当たっていたらしいわ」
「和菓子の九条だって・・・!?」
安堂は目に見えて動揺した様子だった。同業者としてその名前には聞き覚えがあるらしい。それも、強烈な後光をまとっている様子だ。
「まさかメンバーに居たなんて・・・」
「道理で自信満々なわけだ。でも、ケーキを作るのに店の名前や出身なんて関係ねえよ」
樫野は安堂の態度に不機嫌そうにする。
「でも、九条と言えば!」
「関係ねえって!」
「僕も樫野に同感だよ。普段通りにしていれば、勝てない相手じゃない」
「どんなケーキを作るのかなあ・・・一回戦のビデオとか無いのかな?」
一方のいちごは好奇心を見せている。花房はうなずく。
「まあ、相手を知るのは悪くないよね」
「山田が持っているんじゃないかしら。聞いてみてもいいけれど」
「持ってますよ」
その時、美和が現れた。一同は驚いて声を上げる。
「あんた、いつからそこにいたのよ」
「安堂さんがびびった辺りです。皆さん、視聴覚室にどうぞ」
美和は流れを乗っ取ると五人を先導しはじめた。視聴覚室は小規模な映画館のようなつくりで、大画面での上映が楽しめる。美和は手際よくビデオをセットすると、あまり混ざる気は起きないのか席を外した。
五人は食い入るように画面を見つめた。チームれもんは一回戦のパウンドケーキで優美な白鳥の親子を作り上げ、全ての項目で満点をたたき出したのだ。
「三項目とも満点・・・」
「僕もまさか、これほどの実力だったとは思わなかったよ・・・」
「こいつら、ただの一年坊主じゃねえな・・・」
樫野は小さく舌打ちをする。なんだかんだでキャリアが一年追いつかない下級生のことを、少しは見くびっていたのだ。いちごは余裕のありそうだった二人の様子に少し不安になった。
しかし、なかでも一番張りつめた表情で画面の抹茶パウンドに釘付けになっているのは安堂だ。樹は彼のメンタルの弱さを今になって案じはじめた。
「・・・やだなあ、みんな!たしかにすごい出来だけど、あたし達のバラのパウンドケーキだって、理事長さんに褒められたじゃない!」
いちごはあわてて明るい声を出した。
「でも、技術面では彼らに負けている・・・。一回戦で彼らと当たっていたらどうなっていたか・・・」
「馬鹿ね。この場合の評価は相対点よ。たまたま相手との差が大きかっただけでしょ」
「まあ、焦るなよ。また違うケーキを作るんだから。そのときに勝てばいいだけの話さ」
樹と樫野は深刻そうに呟いた安堂に声をかける。花房も頷いた。
「そうだね。相手の実力も分かったことだし、気を引き締めて戦えばいい」
「だよね、だよね!よーし、頑張るぞー!おーっ!」
いちごはバニラと二人手を突き上げるが、誰も同調しなかった。
「なんでよ、みんなも気合い入れなきゃダメでしょ!?」
「誰よりも頑張らなくちゃいけないのはお前だろうが!」
「そ、そうでした・・・」
三人がモチベーションを高める中、安堂はやはり一人だけ浮かない様子だった。