16話 ハッピーバレンタイン
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「それでは、美夜様からバレンタインチョコレートをどうぞ!」
小城が頷くと、カートに乗せられた焼き菓子と、金ピカの塔のようなものが登場した。注意して見ると噴水のような構造をしている。
「私の作品は、チョコレートフォンデュです」
小城がパチンと指を鳴らすと、塔の上から高級クーベルチュールを200kg使った滝が惜しげもなく流れ出た。なかなか普通に生きていては味わえないスケールだ。これには思わず客達も拍手する。菓子の類は小城が朝六時から仕込んでいると彼女の父親が補足した。
(なるほど、自分の利点を最大限に生かしているわね。まあ、チョコレート菓子のカテゴリから少しずれている気はするけれど)
樹はそれなりに感心してから、先の長い専用フォークでオレンジを一突きして滝につっこんだ。なるほどおいしくないはずがなかった。一切調理過程に無駄がないのだ。
「対戦者の天野さんのチョコも並んだようです!」
アナウンスに樹は対岸を振り返る。いちごのブースは小城に比べると小ぢんまりとしていたが、その分人だかりが目立つ。少し空いてから行った方が良いと考えた樹はもう一度フォンデュに手を伸ばす。
「あら、来たのね東堂さん」
「小城先輩。お招きいただきありがとうございます」
「へえ、まあ小綺麗にしてきたみたいじゃない。地味だし私の半分もかわいくないけれど、合格にしといてあげるわ。制服で来る非常識な子もいますけど」
「制服も立派な礼服ですよ」
「バカね、あんた。適当に着てきたに決まってるじゃない」
樹のフォローも虚しく小城は胸を張って断言する。樹は少しだけドレスを着てきてよかったと思った。
「あんた、あの三人と一緒に来たわけじゃなかったのね。さっきまでこの辺りにいたわよ」
「そうですか、ありがとうございます」
なんだかんだで小城は律儀である。樹には対抗心の欠片もないらしい。やはり樫野との関係のドライさが関係しているのだろうか。
「どうも、遅れたわ」
樹はいちごの元へ訪れた。
「樹ちゃん、その格好どうしたの!?すっごくかわいい!」
いちごは樹を見て目を輝かせた。彼女がおしゃれをしてくるとは思わなかったのでそこには驚きも混じっていた。
「なんだかよく分からないけれど、部屋に届けられていて」
「わあ、すっごーい!魔法みたい!」
「ところで、これがいちごの作ったチョコレートね。つまみやすい一口サイズにしたのね。小城先輩とは対照的な感じでいいんじゃないかしら」
「ありがとう!対照的なのはたまたまだけど・・・。小城さんがあそこまでするとは思わなかったよ」
「食べてみていいかしら」
「もちろん」
樹は三種類をゆっくりとかみしめた。味はローズティーと黒砂糖とブラックペッパーなのだといちごは言う。それが三人のことを指しているのだと樹はすぐに気がついた。
バレンタインデーは、日本では確かに意中の男子のことを思いながら作るものだった。まさかスイーツ王子の中に意中の男子はいないと思うが、いちごなりにバレンタインデーの極意を考えながら気持ちを込めて作った作品のようだった。
「よく入れようと思ったわね、ブラックペッパー。でもちゃんと味になってる」
「お酒に合うって気に入ってくれる人もけっこういるみたいなの」
いちごは言いながら、おもむろに台の下から小箱を取り出した。
「それで、これは樹ちゃんのだよ。友チョコ!」
「えっ?ああ、そうなの・・・ありがとう」
友チョコという文化を理解しきれていなかった樹は驚きながらもそれを受け取った。いちごが感想を聞きたそうにしているので、その場で開けて口に放り込むことにする。
「・・・!これは、お酒じゃない!酸味の強い果実を使ってる・・・レモンのリキュールかしら?」
「正解!イメージぴったりだと思って。ウイスキーボンボンとかあるじゃない?お菓子にちょっとぐらいならお酒もステキなアクセントになるよね!」
「私、そんなに酸味の強いキャラしてるかしら・・・」
樹は首を傾げながらも笑いを漏らした。
小城が頷くと、カートに乗せられた焼き菓子と、金ピカの塔のようなものが登場した。注意して見ると噴水のような構造をしている。
「私の作品は、チョコレートフォンデュです」
小城がパチンと指を鳴らすと、塔の上から高級クーベルチュールを200kg使った滝が惜しげもなく流れ出た。なかなか普通に生きていては味わえないスケールだ。これには思わず客達も拍手する。菓子の類は小城が朝六時から仕込んでいると彼女の父親が補足した。
(なるほど、自分の利点を最大限に生かしているわね。まあ、チョコレート菓子のカテゴリから少しずれている気はするけれど)
樹はそれなりに感心してから、先の長い専用フォークでオレンジを一突きして滝につっこんだ。なるほどおいしくないはずがなかった。一切調理過程に無駄がないのだ。
「対戦者の天野さんのチョコも並んだようです!」
アナウンスに樹は対岸を振り返る。いちごのブースは小城に比べると小ぢんまりとしていたが、その分人だかりが目立つ。少し空いてから行った方が良いと考えた樹はもう一度フォンデュに手を伸ばす。
「あら、来たのね東堂さん」
「小城先輩。お招きいただきありがとうございます」
「へえ、まあ小綺麗にしてきたみたいじゃない。地味だし私の半分もかわいくないけれど、合格にしといてあげるわ。制服で来る非常識な子もいますけど」
「制服も立派な礼服ですよ」
「バカね、あんた。適当に着てきたに決まってるじゃない」
樹のフォローも虚しく小城は胸を張って断言する。樹は少しだけドレスを着てきてよかったと思った。
「あんた、あの三人と一緒に来たわけじゃなかったのね。さっきまでこの辺りにいたわよ」
「そうですか、ありがとうございます」
なんだかんだで小城は律儀である。樹には対抗心の欠片もないらしい。やはり樫野との関係のドライさが関係しているのだろうか。
「どうも、遅れたわ」
樹はいちごの元へ訪れた。
「樹ちゃん、その格好どうしたの!?すっごくかわいい!」
いちごは樹を見て目を輝かせた。彼女がおしゃれをしてくるとは思わなかったのでそこには驚きも混じっていた。
「なんだかよく分からないけれど、部屋に届けられていて」
「わあ、すっごーい!魔法みたい!」
「ところで、これがいちごの作ったチョコレートね。つまみやすい一口サイズにしたのね。小城先輩とは対照的な感じでいいんじゃないかしら」
「ありがとう!対照的なのはたまたまだけど・・・。小城さんがあそこまでするとは思わなかったよ」
「食べてみていいかしら」
「もちろん」
樹は三種類をゆっくりとかみしめた。味はローズティーと黒砂糖とブラックペッパーなのだといちごは言う。それが三人のことを指しているのだと樹はすぐに気がついた。
バレンタインデーは、日本では確かに意中の男子のことを思いながら作るものだった。まさかスイーツ王子の中に意中の男子はいないと思うが、いちごなりにバレンタインデーの極意を考えながら気持ちを込めて作った作品のようだった。
「よく入れようと思ったわね、ブラックペッパー。でもちゃんと味になってる」
「お酒に合うって気に入ってくれる人もけっこういるみたいなの」
いちごは言いながら、おもむろに台の下から小箱を取り出した。
「それで、これは樹ちゃんのだよ。友チョコ!」
「えっ?ああ、そうなの・・・ありがとう」
友チョコという文化を理解しきれていなかった樹は驚きながらもそれを受け取った。いちごが感想を聞きたそうにしているので、その場で開けて口に放り込むことにする。
「・・・!これは、お酒じゃない!酸味の強い果実を使ってる・・・レモンのリキュールかしら?」
「正解!イメージぴったりだと思って。ウイスキーボンボンとかあるじゃない?お菓子にちょっとぐらいならお酒もステキなアクセントになるよね!」
「私、そんなに酸味の強いキャラしてるかしら・・・」
樹は首を傾げながらも笑いを漏らした。