16話 ハッピーバレンタイン
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次の日の午後、事件は起こった。
パーティーへ出かける直前まで、樹は図書室などへ行って時間をつぶしていた。制服で行くつもりだったので、特に準備をする必要がなかったからだ。
ところが、寮の自室に戻ってみると、そこにはアイスブルーのドレスが現れていたのだった。かき氷のシロップのように真っ青なその色は確かに樹の印象にはよくあっていたし、腕を大きく露出するアメリカンスリーブの型は確かに樹の背が高くすらりとした体躯にはよくあっていた。
「・・・だ、だれの仕業」
樹はその贈り物に恐れをなした。不可解なものは不可解な存在のせいであろうと湖の方へ飛び出してアリスを探し出す。
「それ、私じゃないよ」
「山田も見ていないと言っていたのよ」
「じゃあ、あれじゃない?スピリッツだったんじゃない?」
「?」
アリスからスピリッツの話が出るのは稀だった。樹はきょとんとする。
「スピリッツが窓からこっそり入って部屋に置いて行ったんじゃない」
「ああ・・・でも、そんなことをする知り合いのスピリッツはいないはずよ」
「じゃあ、樹をパートナーにしたい子なんじゃない?」
そんなはずがあるかと樹は思ったが、パートナーという単語はやけに胸に響いた。
「パートナー・・・私にはいないのが自然だから、とてもそんなことは考えられないわよ」
「そう・・・」
「まあ、いいわ。早く行かないと遅刻するし。どっちみちめかしこんでいる余裕はないわ」
しかし、寮に再び戻ってみるとそう考えているのは樹だけのようだった。美和が吹聴したせいで部屋に集まってきたルミ達は大騒ぎして樹をめかしこみはじめた。そのせいで、樹は樫野達を先に行かせて後から行くことになってしまったのだった。
パーティー会場に着いたのは、三人に遅れること20分だった。
会場は大人の人ばかりで、知り合いなど一人も見当たらない。めかしこんできたことが逆に場違いのようで樹はさすがに緊張した。楽団が弦楽器の生演奏をしているのをBGMに、樹はうろうろと所在なく会場をうろつくが、広すぎる。合流できる前に会場の照明がいきなりぱっと消えた。これから何かが始まりますよと嫌でも気づかされる演出だった。
「さて、本日のメインイベント、バレンタインチョコレート対決の時間となりました!それでは、シャトー製菓小城社長のご長女、美夜様のご登場です!盛大なる拍手を!」
幕の向こうからぞろっとした豪華なドレスでめかしこんだ小城が出てきた。時代錯誤な感はあるが、本人はしごく満足そうな様子だ。堂々としたものである。
「続いて、挑戦者の天野いちごさん、どうぞこちらへ・・・」
続いて、いちごもしっかりした様子で出てきた。制服姿でこちらもそれなりに堂々としていたが拍手は薄い。
いちごの姿を捉えた樹は、なんだかひどく安心した心地がした。いちごの心の支えになるつもりで来たはずだったのだが、逆になってしまったようだった。
パーティーへ出かける直前まで、樹は図書室などへ行って時間をつぶしていた。制服で行くつもりだったので、特に準備をする必要がなかったからだ。
ところが、寮の自室に戻ってみると、そこにはアイスブルーのドレスが現れていたのだった。かき氷のシロップのように真っ青なその色は確かに樹の印象にはよくあっていたし、腕を大きく露出するアメリカンスリーブの型は確かに樹の背が高くすらりとした体躯にはよくあっていた。
「・・・だ、だれの仕業」
樹はその贈り物に恐れをなした。不可解なものは不可解な存在のせいであろうと湖の方へ飛び出してアリスを探し出す。
「それ、私じゃないよ」
「山田も見ていないと言っていたのよ」
「じゃあ、あれじゃない?スピリッツだったんじゃない?」
「?」
アリスからスピリッツの話が出るのは稀だった。樹はきょとんとする。
「スピリッツが窓からこっそり入って部屋に置いて行ったんじゃない」
「ああ・・・でも、そんなことをする知り合いのスピリッツはいないはずよ」
「じゃあ、樹をパートナーにしたい子なんじゃない?」
そんなはずがあるかと樹は思ったが、パートナーという単語はやけに胸に響いた。
「パートナー・・・私にはいないのが自然だから、とてもそんなことは考えられないわよ」
「そう・・・」
「まあ、いいわ。早く行かないと遅刻するし。どっちみちめかしこんでいる余裕はないわ」
しかし、寮に再び戻ってみるとそう考えているのは樹だけのようだった。美和が吹聴したせいで部屋に集まってきたルミ達は大騒ぎして樹をめかしこみはじめた。そのせいで、樹は樫野達を先に行かせて後から行くことになってしまったのだった。
パーティー会場に着いたのは、三人に遅れること20分だった。
会場は大人の人ばかりで、知り合いなど一人も見当たらない。めかしこんできたことが逆に場違いのようで樹はさすがに緊張した。楽団が弦楽器の生演奏をしているのをBGMに、樹はうろうろと所在なく会場をうろつくが、広すぎる。合流できる前に会場の照明がいきなりぱっと消えた。これから何かが始まりますよと嫌でも気づかされる演出だった。
「さて、本日のメインイベント、バレンタインチョコレート対決の時間となりました!それでは、シャトー製菓小城社長のご長女、美夜様のご登場です!盛大なる拍手を!」
幕の向こうからぞろっとした豪華なドレスでめかしこんだ小城が出てきた。時代錯誤な感はあるが、本人はしごく満足そうな様子だ。堂々としたものである。
「続いて、挑戦者の天野いちごさん、どうぞこちらへ・・・」
続いて、いちごもしっかりした様子で出てきた。制服姿でこちらもそれなりに堂々としていたが拍手は薄い。
いちごの姿を捉えた樹は、なんだかひどく安心した心地がした。いちごの心の支えになるつもりで来たはずだったのだが、逆になってしまったようだった。