15話 彼ヲ救出セヨ
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「樫野!・・・縛られてる、なんで!?」
四人は樫野家の居間に突入した。そこには、なんと髪の長い眼鏡の女性と縛られてソファーの上に座らされた樫野がいたのだった。
「こうすれば、ゆっくり、じっくりお話ができるでしょう?うふふふふふ・・・」
女性は腰に手を当てて堂々と言った。なんと末恐ろしい姉君だろうか。
「・・・あの人、マジで言ってるよな?」
「樫野より上の、スーパードSだ!」
「村岡、この子達はなんなの?」
樫野の姉こと、雅は態度を改め、SPの男に詰問する。
「真様のクラスメイトです」
「私の許可無く、なぜ通したの?」
「私の判断です」
「・・・・」
反応に困っている風な雅に、いちごが真っ先に声をかける。
「あなたが樫野のお姉さんですね?樫野を帰してください!」
「僕らは同じグループなので、彼がいないと困るんですよ!」
「明日は大事な期末試験なんです!」
「あら、そうなの?じゃ、このまま真を帰さなければ、試験は欠席。トップになれずに退学決定ね」
「・・・!」
安堂の言葉に、雅は微笑むと残酷な言葉を吐いた。五人は思わず戦慄する。
「いくら頑張ってもパティシエになんかなれないの。だから、早く退学になった方が、あなたの為なのよ」
「お姉さん!ケーキを食べてください!」
いちごは出し抜けに声を張り上げた。雅もこれには驚く。
「・・・え?」
「あたし達、樫野と一緒にケーキを作ります!それを食べて美味しかったら、樫野を帰してください!」
「だ、ダメだ!」
突拍子も無い提案に樫野は静止を求めたが、雅に丸めたハンカチを口に詰められ、黙らせられる。
「いいわ、そうしましょう。そのケーキが私の口に合わなかったら、弟は聖マリー学園を即刻退学させるわよ」
「分かりました」
「部屋で待ってるわ。村岡、頼んだわよ」
「はい」
「あ、ちょっと———!」
雅は、さっさと動き出してしまう。樹は思わず引き止めた。
思わず引き止めたのだが、何を言えばいいか一瞬分からなくなり、覇気の足りない声で切り出す。
「・・・あ、あなたは樫野が信じられませんか」
「・・・え?」
「癪だけれど・・・すごく癪なんですけど、樫野は誰よりも真面目でまっすぐな奴だと、思います。半年も付き合いがない私でも、それは分かります」
雅が、ひどく困惑したような目をするのが分かった。樹自身も、自分が樫野を弁護しているという事実がなんだか非現実的な気がしたが、動揺を見せないようにこらえる。
「私は、彼がトップで卒業してパティシエになると信じられます。あなたは、自分の弟が信じられないんですか」
「・・・・話は後で聞くわ」
雅は少し止まったが、そう言い捨てて消えた。いちごはすぐに樫野の縄をほどく。
「この大バカ野郎!あいつは味にうるさいし、好き嫌いも激しい!だいたいなあ、反対してる奴がたとえ美味しくても美味しいなんて絶対言うわけないだろ!」
言論の自由を回復した樫野はしびれをきらしたようにまくしたてた。
「・・・そうなの?」
「そうに決まってる!」
「たしかに、あのドSぶりだから、あり得るね・・・」
「ど、どうしよう!」
いちごは重大なことに気づき、今更顔を青ざめさせた。
「・・・今のうちに逃げちゃう?」
「無利だ。村岡が見張ってる」
「今更どうこう言ってもしょうがないよ。こうなったら、やるしかない」
「じゃあ、どんなスイーツを作ればいいのかしら」
五人はうつむいて考えた。誰もが美味しいと言わざるを得ないようなケーキが果たしてあるのだろうかと樹は考えていた。しかし、いちごが呟いたのは全く趣向が違う言葉だった。
「うーん、どうやったらお姉さん、喜んでくれるかなあ・・・」
「はあ!?なんであんな奴、喜ばせなきゃならないんだ!」
「だって、スイーツは食べる人に喜んでもらう為に作るものでしょ?」
「・・・」
樫野は思わず言葉を失う。そういえば今までどうやってスイーツを作ってきただろうと樹 は考える。スイーツ王子を見返したくて練習した。いい成績が欲しくて練習した。惰性で練習していた・・・?
いやでも、いちごがやってきてから少し違う。何を考えていただろう、誕生日ケーキのときは・・・。
「いちごちゃんの言う通りだね」
「忘れちゃいけない、パティシエの心得だな」
「そうね」
樹はとりあえず頷く。何かひどく昔のことを思い出しそうな気がしていたのだが、今はそんな場合ではなかった。
「あたし達はよくお姉さんのこと知らないから、何を作るか樫野が決めて。お姉さんのこと、よく知ってるでしょ?」
「・・・オペラだ」
樫野は、少し考えるとそう言った。
オペラとは、コーヒー風味のチョコレートケーキで、技術のいる難しいケーキだが、五人で上手く分担して無事に作り上げて飾り付けを残すのみとなった。樫野がふいに問う。
「あいつの検査結果は?」
「大丈夫だったよ」
「見ての通りね」
いちごが元気溌剌としすぎて病院帰りだということを忘れていたが、樫野の方では気にかけていたらしい。樹はなかなか彼も面倒見のいいものだなと少し見直した。
四人は樫野家の居間に突入した。そこには、なんと髪の長い眼鏡の女性と縛られてソファーの上に座らされた樫野がいたのだった。
「こうすれば、ゆっくり、じっくりお話ができるでしょう?うふふふふふ・・・」
女性は腰に手を当てて堂々と言った。なんと末恐ろしい姉君だろうか。
「・・・あの人、マジで言ってるよな?」
「樫野より上の、スーパードSだ!」
「村岡、この子達はなんなの?」
樫野の姉こと、雅は態度を改め、SPの男に詰問する。
「真様のクラスメイトです」
「私の許可無く、なぜ通したの?」
「私の判断です」
「・・・・」
反応に困っている風な雅に、いちごが真っ先に声をかける。
「あなたが樫野のお姉さんですね?樫野を帰してください!」
「僕らは同じグループなので、彼がいないと困るんですよ!」
「明日は大事な期末試験なんです!」
「あら、そうなの?じゃ、このまま真を帰さなければ、試験は欠席。トップになれずに退学決定ね」
「・・・!」
安堂の言葉に、雅は微笑むと残酷な言葉を吐いた。五人は思わず戦慄する。
「いくら頑張ってもパティシエになんかなれないの。だから、早く退学になった方が、あなたの為なのよ」
「お姉さん!ケーキを食べてください!」
いちごは出し抜けに声を張り上げた。雅もこれには驚く。
「・・・え?」
「あたし達、樫野と一緒にケーキを作ります!それを食べて美味しかったら、樫野を帰してください!」
「だ、ダメだ!」
突拍子も無い提案に樫野は静止を求めたが、雅に丸めたハンカチを口に詰められ、黙らせられる。
「いいわ、そうしましょう。そのケーキが私の口に合わなかったら、弟は聖マリー学園を即刻退学させるわよ」
「分かりました」
「部屋で待ってるわ。村岡、頼んだわよ」
「はい」
「あ、ちょっと———!」
雅は、さっさと動き出してしまう。樹は思わず引き止めた。
思わず引き止めたのだが、何を言えばいいか一瞬分からなくなり、覇気の足りない声で切り出す。
「・・・あ、あなたは樫野が信じられませんか」
「・・・え?」
「癪だけれど・・・すごく癪なんですけど、樫野は誰よりも真面目でまっすぐな奴だと、思います。半年も付き合いがない私でも、それは分かります」
雅が、ひどく困惑したような目をするのが分かった。樹自身も、自分が樫野を弁護しているという事実がなんだか非現実的な気がしたが、動揺を見せないようにこらえる。
「私は、彼がトップで卒業してパティシエになると信じられます。あなたは、自分の弟が信じられないんですか」
「・・・・話は後で聞くわ」
雅は少し止まったが、そう言い捨てて消えた。いちごはすぐに樫野の縄をほどく。
「この大バカ野郎!あいつは味にうるさいし、好き嫌いも激しい!だいたいなあ、反対してる奴がたとえ美味しくても美味しいなんて絶対言うわけないだろ!」
言論の自由を回復した樫野はしびれをきらしたようにまくしたてた。
「・・・そうなの?」
「そうに決まってる!」
「たしかに、あのドSぶりだから、あり得るね・・・」
「ど、どうしよう!」
いちごは重大なことに気づき、今更顔を青ざめさせた。
「・・・今のうちに逃げちゃう?」
「無利だ。村岡が見張ってる」
「今更どうこう言ってもしょうがないよ。こうなったら、やるしかない」
「じゃあ、どんなスイーツを作ればいいのかしら」
五人はうつむいて考えた。誰もが美味しいと言わざるを得ないようなケーキが果たしてあるのだろうかと樹は考えていた。しかし、いちごが呟いたのは全く趣向が違う言葉だった。
「うーん、どうやったらお姉さん、喜んでくれるかなあ・・・」
「はあ!?なんであんな奴、喜ばせなきゃならないんだ!」
「だって、スイーツは食べる人に喜んでもらう為に作るものでしょ?」
「・・・」
樫野は思わず言葉を失う。そういえば今までどうやってスイーツを作ってきただろうと樹 は考える。スイーツ王子を見返したくて練習した。いい成績が欲しくて練習した。惰性で練習していた・・・?
いやでも、いちごがやってきてから少し違う。何を考えていただろう、誕生日ケーキのときは・・・。
「いちごちゃんの言う通りだね」
「忘れちゃいけない、パティシエの心得だな」
「そうね」
樹はとりあえず頷く。何かひどく昔のことを思い出しそうな気がしていたのだが、今はそんな場合ではなかった。
「あたし達はよくお姉さんのこと知らないから、何を作るか樫野が決めて。お姉さんのこと、よく知ってるでしょ?」
「・・・オペラだ」
樫野は、少し考えるとそう言った。
オペラとは、コーヒー風味のチョコレートケーキで、技術のいる難しいケーキだが、五人で上手く分担して無事に作り上げて飾り付けを残すのみとなった。樫野がふいに問う。
「あいつの検査結果は?」
「大丈夫だったよ」
「見ての通りね」
いちごが元気溌剌としすぎて病院帰りだということを忘れていたが、樫野の方では気にかけていたらしい。樹はなかなか彼も面倒見のいいものだなと少し見直した。