15話 彼ヲ救出セヨ
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「失礼します!・・・天野さん!」
「安堂君、花房くん!」
二人が保健室に突撃してきた頃には、いちごは治療を終えていた。椅子の上にぴんぴんした様子で座っている彼女を見て安堂と花房は一瞬困惑する。傍らには、既に樫野と樹が腰掛けていた。
「天野さんが階段から落ちたって聞いて・・・」
「大丈夫?」
「元気、元気!かすり傷だよ!階段落ちるの慣れてるし!」
「・・・慣れるほど落ちてるの?」
「とにかく無事で良かったよ」
二人は苦笑しつつも安堵したようだった。
「まったく、人騒がせなやつだぜ」
「あら、樫野くんだって・・・あんな慌てた樫野くん、初めて見たわ」
「せ、先生・・・!」
校医の先生にからかわれ、樫野は赤くなる。樹は横目で彼を見やると、鼻で笑った。
「本当に。あれしきのことで取り乱すものだからこっちが驚きよ」
「いや、目の前で人が階段転がったら誰だってびびるだろうが!」
「でも天野さん、頭を打ったのよね?だったら病院で検査した方がいいわ」
先生は樹の言葉にはつっこまず、話を続けた。いちごは今のところ健康だが、確かに頭を打ったせいで少しの間昏倒していたのだ。心配ではある。
「そんな、病院なんて、大げさですよ!」
「いや、行った方が良いよ。何かあるといけないし」
「先生、僕たち同じグループですし、天野さんに付き添って今から病院へ行ってきます」
花房と安堂もいちごの身を案じて申し出る。
「そう?じゃあ、お願いするわね。樫野くんも一緒なら安心だわ」
「・・・・」
樫野は眉間にしわを寄せ、俯いた。事情の分からないいちごはその様子に首を傾げた。
「ごめんね、みんな。テスト前なのに・・・」
バスの後部座席を陣取った五人は、街まで降りてきた。申し訳無さそうないちごに、謝るくらいなら気をつけろと樫野は投げやりに応える。いちごはその反応にむくれた。
「同じグループにドジな人がいると、ほんと迷惑ですわ!」
「同じグループに口の悪いスピリッツがいるのも気分悪いわ!」
「なんですって!」
「なによ!」
バニラとショコラは恒例の喧嘩をはじめる。その光景を見ながら、いちご達は樫野と樹もこんな感じだよなとこっそり思った。
到着したのは、この辺りで一番大きな病院だ。着くなり樫野がなぜか離脱したので、四人で中に入る。いちごは樫野の挙動が腑に落ちない様子だったが、とりあえず受付を済ませてソファに座った。
制服姿が四人も並んでいると、病院ではそれなりに人目を引く。樹は人の行き来を眺めながら、今更どうしてこうなったのかと考えていた。明日は試験だ。
「ねえ、なんで樫野は・・・」
いちごは花房と安堂なら何か知っているだろうと思い、尋ねようとする。
「はい、なんでしょう?」
白衣の男性がその声に立ち止まった。
「今、私を呼びませんでした?」
戸惑ういちごの目に、彼の名札がうつった。名字が樫野だったのだ。
「あれっ、樫野さん?ごめんなさい、あたしが言ったのは別の樫野さんで・・・」
「ああ、そうですか。ここの医者は樫野が多いですからね、じゃあ」
彼は慣れた様子で去って行く。いちごはきょとんとした。
「樫野が多いなんて、変わった病院だよね・・・」
「多いなんてレベルじゃないと思うよ」
花房は微笑むと、だしぬけに大声を出した。
「樫野せんせーい!」
「はい?」
つぎの瞬間、視界にいる全ての医者や看護師が反応した。
「すみませーん!なんでもありませーん!」
「・・・ちょっと、失礼すぎるでしょう」
樹は花房の行動力におののく。あれだけ多数の人間がスイッチのように動いたのだ。いちごもひどく驚いた様子だった。
「実はここ、樫野総合病院。樫野一族が経営する病院なんだ」
「院長は樫野のお父さん」
「えええっ!?一族って・・・というか、樫野ってお医者さんの息子だったの・・・?」
「天野さん———天野いちごさん」
ひとしきり驚いたところでいちごの順番がまわってきたので、いちごはそそくさと診察室へ消えて行った。
「・・・なるほどね」
樹は彼の家事情と以前の言葉との関係性になんとなく納得した。かと思えば抜け目無く英単語帳を開いた彼女を見て、安堂は自分もそれを持ってくればよかったと少し後悔した。
「安堂君、花房くん!」
二人が保健室に突撃してきた頃には、いちごは治療を終えていた。椅子の上にぴんぴんした様子で座っている彼女を見て安堂と花房は一瞬困惑する。傍らには、既に樫野と樹が腰掛けていた。
「天野さんが階段から落ちたって聞いて・・・」
「大丈夫?」
「元気、元気!かすり傷だよ!階段落ちるの慣れてるし!」
「・・・慣れるほど落ちてるの?」
「とにかく無事で良かったよ」
二人は苦笑しつつも安堵したようだった。
「まったく、人騒がせなやつだぜ」
「あら、樫野くんだって・・・あんな慌てた樫野くん、初めて見たわ」
「せ、先生・・・!」
校医の先生にからかわれ、樫野は赤くなる。樹は横目で彼を見やると、鼻で笑った。
「本当に。あれしきのことで取り乱すものだからこっちが驚きよ」
「いや、目の前で人が階段転がったら誰だってびびるだろうが!」
「でも天野さん、頭を打ったのよね?だったら病院で検査した方がいいわ」
先生は樹の言葉にはつっこまず、話を続けた。いちごは今のところ健康だが、確かに頭を打ったせいで少しの間昏倒していたのだ。心配ではある。
「そんな、病院なんて、大げさですよ!」
「いや、行った方が良いよ。何かあるといけないし」
「先生、僕たち同じグループですし、天野さんに付き添って今から病院へ行ってきます」
花房と安堂もいちごの身を案じて申し出る。
「そう?じゃあ、お願いするわね。樫野くんも一緒なら安心だわ」
「・・・・」
樫野は眉間にしわを寄せ、俯いた。事情の分からないいちごはその様子に首を傾げた。
「ごめんね、みんな。テスト前なのに・・・」
バスの後部座席を陣取った五人は、街まで降りてきた。申し訳無さそうないちごに、謝るくらいなら気をつけろと樫野は投げやりに応える。いちごはその反応にむくれた。
「同じグループにドジな人がいると、ほんと迷惑ですわ!」
「同じグループに口の悪いスピリッツがいるのも気分悪いわ!」
「なんですって!」
「なによ!」
バニラとショコラは恒例の喧嘩をはじめる。その光景を見ながら、いちご達は樫野と樹もこんな感じだよなとこっそり思った。
到着したのは、この辺りで一番大きな病院だ。着くなり樫野がなぜか離脱したので、四人で中に入る。いちごは樫野の挙動が腑に落ちない様子だったが、とりあえず受付を済ませてソファに座った。
制服姿が四人も並んでいると、病院ではそれなりに人目を引く。樹は人の行き来を眺めながら、今更どうしてこうなったのかと考えていた。明日は試験だ。
「ねえ、なんで樫野は・・・」
いちごは花房と安堂なら何か知っているだろうと思い、尋ねようとする。
「はい、なんでしょう?」
白衣の男性がその声に立ち止まった。
「今、私を呼びませんでした?」
戸惑ういちごの目に、彼の名札がうつった。名字が樫野だったのだ。
「あれっ、樫野さん?ごめんなさい、あたしが言ったのは別の樫野さんで・・・」
「ああ、そうですか。ここの医者は樫野が多いですからね、じゃあ」
彼は慣れた様子で去って行く。いちごはきょとんとした。
「樫野が多いなんて、変わった病院だよね・・・」
「多いなんてレベルじゃないと思うよ」
花房は微笑むと、だしぬけに大声を出した。
「樫野せんせーい!」
「はい?」
つぎの瞬間、視界にいる全ての医者や看護師が反応した。
「すみませーん!なんでもありませーん!」
「・・・ちょっと、失礼すぎるでしょう」
樹は花房の行動力におののく。あれだけ多数の人間がスイッチのように動いたのだ。いちごもひどく驚いた様子だった。
「実はここ、樫野総合病院。樫野一族が経営する病院なんだ」
「院長は樫野のお父さん」
「えええっ!?一族って・・・というか、樫野ってお医者さんの息子だったの・・・?」
「天野さん———天野いちごさん」
ひとしきり驚いたところでいちごの順番がまわってきたので、いちごはそそくさと診察室へ消えて行った。
「・・・なるほどね」
樹は彼の家事情と以前の言葉との関係性になんとなく納得した。かと思えば抜け目無く英単語帳を開いた彼女を見て、安堂は自分もそれを持ってくればよかったと少し後悔した。