14話 バラ色の思い出
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樹たちはお茶の用意をすませ、色とりどりのバラが咲き乱れる温室のテーブルを拝借して、バラのケーキを囲んだ。
「いただきまーす!」
「・・・おいしーい!」
いちごは満面の笑みを浮かべる。
「いちごちゃんって、本当に幸せそうにケーキ食べるよね」
「だって、本当においしいんだもん!それに、このバラのケーキ、おいしいだけじゃないんだよ」
「えっ?」
「目をつむって食べてみて」
「目を・・・・?」
四人はいちごにならって目をとじ、バラのケーキを口に運んだ。体中に広がるバラの香りとともに、樹の脳裏に祖母の顔と幼い声がよみがえった。
『私、魔法使いになるの!』
(な、なにこれ・・・)
樹は戸惑ったが、浮かび上がったセピア色の情景はひたすらに懐かしさを覚えるものだった。祖母と一緒にキッチンに立つ夕暮れだ。
再び目を開く。そこは相変わらず温室で、樹は少し寂しくなった。
「ほんとだ・・・すごい、あんな記憶が・・・」
隣の花房もまた、なつかしそうな顔をしていた。彼も父親の事をまたひとつ思い出したのかもしれない。
「これを食べると、子どもの頃の事、思い出すの。なんだかなつかしくて、切なくなる・・・」
「バラの香りのせいだね」
「香りは、記憶も刺激するっていうからな」
いちごの言葉に、安堂や樫野もしんみりとうなずいた。子どもの頃の記憶。先ほど感じた小さな胸の痛みを、樹は忘れる事がないだろうと思った。
「よかった、ローズウォーターを花房くんのもとへ返せて」
樹は思わず呟いた。
「あなたのお父さんの気持ちを捨てずに済んで、本当に良かった」
いつになく神妙なことを言う樹に、四人は少しどきりとする。日頃棘のある言葉を連発している人間と同じだと思えない。
しかし、彼女の言葉はみんなと同じ想いが述べられていたのだった。
「・・・樹ちゃんのおかげだよ」
花房は、そっと樹に近づくと、その頬にキスした。
一瞬時が止まる。
「・・・!」
樹は絶句した。ぴたりと表情が固まる。
「ななな、何やってんの、花房!」
「て、ててて、てめえ!チーム内恋愛は禁止だからなっ!」
同じく動揺して真っ赤になった安堂と樫野は声をあげた。花房は悪戯っぽく舌を出す。
「何を今時・・・ねえ、樹ちゃん?」
樹は動揺を通り越して妙に落ち着いた様子でその目をぎこちなくいちごに向ける。彼女はひとり何事もなかったようにけろんとしていた。
「そうだよ、ほっぺにチューなんて、花房くんにとってはあいさつだよ!」
「・・・え?」
「ね、花房くん?」
「あ、ああ、そうだね・・・」
花房が肯定したので、樹は納得したように声をあげた。
「そうね、前から思ってたけど花房くんはスキンシップが日本人離れしすぎているわ。もう少し文化圏の違いを考慮して行動した方がいいと思うわよ」
「う、うん・・・」
花房はこっそり落胆する。
「どんな奴だよ、僕って・・・」
スイーツ王子三人は問題の女子陣を呆れた様子で見やる。いちごは食べ過ぎだと怒鳴られながら無邪気にケーキを頬張り続けている。樹もなんだかんだでケーキを楽しんでいる様子だ。まあ、微笑ましくなくも、ない。
自分たちは良いチームなのだ、と花房は思った。
「いただきまーす!」
「・・・おいしーい!」
いちごは満面の笑みを浮かべる。
「いちごちゃんって、本当に幸せそうにケーキ食べるよね」
「だって、本当においしいんだもん!それに、このバラのケーキ、おいしいだけじゃないんだよ」
「えっ?」
「目をつむって食べてみて」
「目を・・・・?」
四人はいちごにならって目をとじ、バラのケーキを口に運んだ。体中に広がるバラの香りとともに、樹の脳裏に祖母の顔と幼い声がよみがえった。
『私、魔法使いになるの!』
(な、なにこれ・・・)
樹は戸惑ったが、浮かび上がったセピア色の情景はひたすらに懐かしさを覚えるものだった。祖母と一緒にキッチンに立つ夕暮れだ。
再び目を開く。そこは相変わらず温室で、樹は少し寂しくなった。
「ほんとだ・・・すごい、あんな記憶が・・・」
隣の花房もまた、なつかしそうな顔をしていた。彼も父親の事をまたひとつ思い出したのかもしれない。
「これを食べると、子どもの頃の事、思い出すの。なんだかなつかしくて、切なくなる・・・」
「バラの香りのせいだね」
「香りは、記憶も刺激するっていうからな」
いちごの言葉に、安堂や樫野もしんみりとうなずいた。子どもの頃の記憶。先ほど感じた小さな胸の痛みを、樹は忘れる事がないだろうと思った。
「よかった、ローズウォーターを花房くんのもとへ返せて」
樹は思わず呟いた。
「あなたのお父さんの気持ちを捨てずに済んで、本当に良かった」
いつになく神妙なことを言う樹に、四人は少しどきりとする。日頃棘のある言葉を連発している人間と同じだと思えない。
しかし、彼女の言葉はみんなと同じ想いが述べられていたのだった。
「・・・樹ちゃんのおかげだよ」
花房は、そっと樹に近づくと、その頬にキスした。
一瞬時が止まる。
「・・・!」
樹は絶句した。ぴたりと表情が固まる。
「ななな、何やってんの、花房!」
「て、ててて、てめえ!チーム内恋愛は禁止だからなっ!」
同じく動揺して真っ赤になった安堂と樫野は声をあげた。花房は悪戯っぽく舌を出す。
「何を今時・・・ねえ、樹ちゃん?」
樹は動揺を通り越して妙に落ち着いた様子でその目をぎこちなくいちごに向ける。彼女はひとり何事もなかったようにけろんとしていた。
「そうだよ、ほっぺにチューなんて、花房くんにとってはあいさつだよ!」
「・・・え?」
「ね、花房くん?」
「あ、ああ、そうだね・・・」
花房が肯定したので、樹は納得したように声をあげた。
「そうね、前から思ってたけど花房くんはスキンシップが日本人離れしすぎているわ。もう少し文化圏の違いを考慮して行動した方がいいと思うわよ」
「う、うん・・・」
花房はこっそり落胆する。
「どんな奴だよ、僕って・・・」
スイーツ王子三人は問題の女子陣を呆れた様子で見やる。いちごは食べ過ぎだと怒鳴られながら無邪気にケーキを頬張り続けている。樹もなんだかんだでケーキを楽しんでいる様子だ。まあ、微笑ましくなくも、ない。
自分たちは良いチームなのだ、と花房は思った。