14話 バラ色の思い出
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「樹ちゃん、遅いで!」
樹が会場へ潜り込むと、もう試合は始まっていた。ルミに手招きされて、とっていてくれたらしい席に座る。
「まだ始まったばかりだよ」
「見てみ、チーム市松の材料、めっちゃ豪華!」
「そうね」
樹は暗い紫色のパティシエ服を着たいけ好かない上級生たちに目線を落とす。あれだけ偉そうな事をいうだけあって、作業も手慣れたものだ。
「あれっ?いちごちゃん達、使ってるものが練習の時と全然違う!桃にホワイトチョコに抹茶・・・」
「メニュー変えたんか?たった一日で・・・何でまた?」
ルミとかなこはチームいちごの方を見て不安そうに言った。彼女らも、グランプリ参加に好奇心を覚えて一度練習を見学しにきたのだ。その際、失敗続きで気が立っていた花房に邪険にされたのでもう面白半分で覗かないと誓ったのだが。
「でも、たくさん練習したわ。大丈夫よ」
「まさか、樹ちゃんずっと付きあっとったん?」
「ええ」
「やっぱり仲良しだね!」
樹は、その言葉が少し照れくさかった。
十分を残してチーム市松のパウンドケーキが焼き上がった。その出来栄えにルミとかなこは興奮する。応援するのは当然いちご達だが、素晴らしいスイーツに惜しみない賛辞を送るのは礼儀だ。
「いちごちゃん達もできたみたいやで!」
「・・・なんか、地味・・・」
その見た目に、かなこは思わず呟いた。生地に練り込まれた素材の豊かさで豪華な見た目になっている市松達の作品と対照的に、いちご達のものは単調なのだ。樹は反対に笑みを漏らした。
「でも、いい感じの色に焼き上がったわ」
制限時間がきて、試食が始まった。皿に四つを盛りつけるように指示が出され、チーム市松は鮮やかに切り分けたケーキを放射状に並べた。断面も美しい出来栄えに、会場が沸く。サロン・ド・マリーに出品されているものと品目は同じだが、いっそうレベルがあがっているようだ。
「家族で楽しむ秋の夜をイメージしました、どうぞ、召し上がってください」
「では、いただきます」
理事長や飴屋先生を含む審査員がケーキを口にした。口々にケーキの感想が語られる。
「・・・この口いっぱいに広がるナッツの香ばしさ・・・!かみしめるごとに味わいが広がりますなあ」
「このチョコは濃厚だが、甘すぎず口当たりが柔らかい」
「香りも苦みも程よいコーヒーの味で、気品が感じられます」
「まさしく大人の味わいだ!」
「和栗がこんなにごろごろと・・・ほーっほっほっほっ!」
「どれも芳醇で食べ応えがある」
「まさに、大人達の秋の夜長のティータイム、ですな!」
樹が会場へ潜り込むと、もう試合は始まっていた。ルミに手招きされて、とっていてくれたらしい席に座る。
「まだ始まったばかりだよ」
「見てみ、チーム市松の材料、めっちゃ豪華!」
「そうね」
樹は暗い紫色のパティシエ服を着たいけ好かない上級生たちに目線を落とす。あれだけ偉そうな事をいうだけあって、作業も手慣れたものだ。
「あれっ?いちごちゃん達、使ってるものが練習の時と全然違う!桃にホワイトチョコに抹茶・・・」
「メニュー変えたんか?たった一日で・・・何でまた?」
ルミとかなこはチームいちごの方を見て不安そうに言った。彼女らも、グランプリ参加に好奇心を覚えて一度練習を見学しにきたのだ。その際、失敗続きで気が立っていた花房に邪険にされたのでもう面白半分で覗かないと誓ったのだが。
「でも、たくさん練習したわ。大丈夫よ」
「まさか、樹ちゃんずっと付きあっとったん?」
「ええ」
「やっぱり仲良しだね!」
樹は、その言葉が少し照れくさかった。
十分を残してチーム市松のパウンドケーキが焼き上がった。その出来栄えにルミとかなこは興奮する。応援するのは当然いちご達だが、素晴らしいスイーツに惜しみない賛辞を送るのは礼儀だ。
「いちごちゃん達もできたみたいやで!」
「・・・なんか、地味・・・」
その見た目に、かなこは思わず呟いた。生地に練り込まれた素材の豊かさで豪華な見た目になっている市松達の作品と対照的に、いちご達のものは単調なのだ。樹は反対に笑みを漏らした。
「でも、いい感じの色に焼き上がったわ」
制限時間がきて、試食が始まった。皿に四つを盛りつけるように指示が出され、チーム市松は鮮やかに切り分けたケーキを放射状に並べた。断面も美しい出来栄えに、会場が沸く。サロン・ド・マリーに出品されているものと品目は同じだが、いっそうレベルがあがっているようだ。
「家族で楽しむ秋の夜をイメージしました、どうぞ、召し上がってください」
「では、いただきます」
理事長や飴屋先生を含む審査員がケーキを口にした。口々にケーキの感想が語られる。
「・・・この口いっぱいに広がるナッツの香ばしさ・・・!かみしめるごとに味わいが広がりますなあ」
「このチョコは濃厚だが、甘すぎず口当たりが柔らかい」
「香りも苦みも程よいコーヒーの味で、気品が感じられます」
「まさしく大人の味わいだ!」
「和栗がこんなにごろごろと・・・ほーっほっほっほっ!」
「どれも芳醇で食べ応えがある」
「まさに、大人達の秋の夜長のティータイム、ですな!」