14話 バラ色の思い出
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パウンドケーキを焼き上げ、シロップとローズウォーターを満たしたバットにひたす。これが突如花房が思いついた手法だった。
「どうぞ、食べてみて」
「おいしい・・・!それに、この香り・・・!」
「バラの自然な香りがすごく食欲をそそる・・・!」
「そうか、香りは熱で飛んでしまう!だから、焼いた後につければいいんだ!」
「サバランの要領ね。あれもラム酒やシロップに浸すスイーツよね」
四人は一様に感心する。二人が沼に転落したことが。奇しくも手がかりになったらしい。
「あと、生地を焼くときにバラのジャムを練り込んでみたんだ」
スピリッツ達も一緒に試食しながら頷く。
「やったね、花房くん!」
「ああ、バラのケーキの完成だ!これで明日はいけるよね、いちごちゃん!」
「・・・・」
「・・・天野?」
「どうかしたの・・・?」
いちごはケーキの完成に喜んでいた風だったがまた何か考えているようだった。
「あの・・・ちょっと思い出したんだけど、樹ちゃんが言ってた事で・・・」
いちごの言葉に、樹はふと思い出した。
「ああ、そうよ。呼んでおいて私の意見が採用されてないと思った」
二人が代わる代わる話す案に、三人はああと頷いた。長い夜になりそうだった。
翌朝、四人は大会用に赤いパティシエ服を着込んで集まっていた。大会では、それぞれのチームがそれぞれ違う衣装を着る決まりなのだ。結局一睡もできず、四人は会場脇でなんとなくぼんやりしたまま、最後の気合いを入れようとしていた。
「みんな、待ってくださいですー!」
「これ飲んでってー!」
そのとき、四人とおそろいで目の下に隈をつくった樹がスピリッツを引き連れてやってきた。カップをのせたお盆を持っている。
「・・・それは?」
「僕が淹れたコーヒーさ!」
カフェはコーヒーにスイーツマジックをかけた。召し上がれと促され、みんなでそれをすする。一瞬後、同時に叫ぶ。
「・・・にっがー!」
「カフェ特製、眠気覚ましの超苦コーヒーよ!」
「最初に言えよ!」
「でも、すごい!眠気が吹っとんだよ!」
「・・・あ、ほんとだ!」
効果はてきめん。一同は頭をスッキリさせた状態で試合に臨めそうだった。
「勝利を祈ってるよ、五月、頑張って!」
「ありがとう、カフェくん!」
「みんな、応援しているわ」
樹はみんなのカップを引き受けながら言った。四人は大きく頷いて会場へ向かっていく。
「片付けておくから、あなた達も会場に行きなさい」
「ありがとう!」
スピリッツ達もその後を追っていく。樹はひとり実習室へ向かった。
「なんだ、案外仲良し?」
アリスが脈絡なく現れ、樹に並んだ。
「樹は金輪際グランプリに関わらないのかなって思ってたけど」
「まあ、私もそのつもりじゃなかったんだけど。誘われちゃ仕方ないわ」
樹は小さく笑った。
「変に放っておけなくなってしまったわ」
「・・・樹、はやく行ってきなよ!これあたしが片付けてくる!」
「え?でも・・・」
「いいって!」
アリスはにっと笑ってお盆を取り上げた。
「ありがとう!」
樹はアリスに笑いかけると、会場の方へ走っていった。
「———よほど嬉しかったんだ」
アリスは彼女の後ろ姿に、くすりと笑った。
「どうぞ、食べてみて」
「おいしい・・・!それに、この香り・・・!」
「バラの自然な香りがすごく食欲をそそる・・・!」
「そうか、香りは熱で飛んでしまう!だから、焼いた後につければいいんだ!」
「サバランの要領ね。あれもラム酒やシロップに浸すスイーツよね」
四人は一様に感心する。二人が沼に転落したことが。奇しくも手がかりになったらしい。
「あと、生地を焼くときにバラのジャムを練り込んでみたんだ」
スピリッツ達も一緒に試食しながら頷く。
「やったね、花房くん!」
「ああ、バラのケーキの完成だ!これで明日はいけるよね、いちごちゃん!」
「・・・・」
「・・・天野?」
「どうかしたの・・・?」
いちごはケーキの完成に喜んでいた風だったがまた何か考えているようだった。
「あの・・・ちょっと思い出したんだけど、樹ちゃんが言ってた事で・・・」
いちごの言葉に、樹はふと思い出した。
「ああ、そうよ。呼んでおいて私の意見が採用されてないと思った」
二人が代わる代わる話す案に、三人はああと頷いた。長い夜になりそうだった。
翌朝、四人は大会用に赤いパティシエ服を着込んで集まっていた。大会では、それぞれのチームがそれぞれ違う衣装を着る決まりなのだ。結局一睡もできず、四人は会場脇でなんとなくぼんやりしたまま、最後の気合いを入れようとしていた。
「みんな、待ってくださいですー!」
「これ飲んでってー!」
そのとき、四人とおそろいで目の下に隈をつくった樹がスピリッツを引き連れてやってきた。カップをのせたお盆を持っている。
「・・・それは?」
「僕が淹れたコーヒーさ!」
カフェはコーヒーにスイーツマジックをかけた。召し上がれと促され、みんなでそれをすする。一瞬後、同時に叫ぶ。
「・・・にっがー!」
「カフェ特製、眠気覚ましの超苦コーヒーよ!」
「最初に言えよ!」
「でも、すごい!眠気が吹っとんだよ!」
「・・・あ、ほんとだ!」
効果はてきめん。一同は頭をスッキリさせた状態で試合に臨めそうだった。
「勝利を祈ってるよ、五月、頑張って!」
「ありがとう、カフェくん!」
「みんな、応援しているわ」
樹はみんなのカップを引き受けながら言った。四人は大きく頷いて会場へ向かっていく。
「片付けておくから、あなた達も会場に行きなさい」
「ありがとう!」
スピリッツ達もその後を追っていく。樹はひとり実習室へ向かった。
「なんだ、案外仲良し?」
アリスが脈絡なく現れ、樹に並んだ。
「樹は金輪際グランプリに関わらないのかなって思ってたけど」
「まあ、私もそのつもりじゃなかったんだけど。誘われちゃ仕方ないわ」
樹は小さく笑った。
「変に放っておけなくなってしまったわ」
「・・・樹、はやく行ってきなよ!これあたしが片付けてくる!」
「え?でも・・・」
「いいって!」
アリスはにっと笑ってお盆を取り上げた。
「ありがとう!」
樹はアリスに笑いかけると、会場の方へ走っていった。
「———よほど嬉しかったんだ」
アリスは彼女の後ろ姿に、くすりと笑った。