13話 チームいちご始動
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「数年前、父が出張先でダマスクローズのローズウォーターが手に入ったと言ってきたけれど、僕の方はもうそのときには昔の夢なんて覚えていなかったんだ。ひどく素っ気ない返事をしたと思う」
花房は低い声でぽつぽつと語る。
「でも、父は覚えていて、早く僕に届けようと飛行機を一便早めた。けれど、それが災いしたのか、道中で交通事故に遭ったらしい。子供をひきそうになったのをよけたんだとか」
樹は息が詰まりそうな話に目を伏せる。
「そして、残ったのはこのローズウォーター一本だけだった」
「全然知らなかったよ・・・」
カフェは俯いた。樹はなんと言っていいか分からない。
「・・・そ、そうだったの」
「その時からかな、今まで以上に母や女性に優しくしなきゃと思うようになったのは」
樹はすっかりさめてしまったお茶をゆっくりと飲み干した。うまい言葉がどこにも見つからない。
「———話してくれて、よかった」
樹がさんざん考えた後に吐き出した言葉に、花房は目を瞬かせる。
「どういう———?」
「話すの嫌だったでしょう。でも、そういう話って多分吐き出してみたら楽になるものだと思うから」
「そうかな・・・」
「私、話してくれて嬉しい。花房君も、いつか話してよかったって思ってくれたら嬉しい」
「樹ちゃん・・・」
ちぐはぐな言葉だが、これが本心であろうと樹は思った。そのとき、近くの茂みの方から堰を切ったような泣き声が聞こえた。二人がぎょっとして振り返ると、実習室に残したはずの三人が茂みの後ろから顔を出していた。当然、泣きじゃくっているのはいちごだ。
「悪い。盗み聞きするつもりはなかったんだ」
「なんていうか、出るに出れなくて・・・」
「うわああああん」
「おい、そんなに泣くことか」
「ごめんなさい、あたし色々感動しちゃって・・・」
いちごはハンカチで盛大に鼻をかんだ。何かと感受性が強いらしい。
「それ、親父さんの形見だったんだな」
「事情も知らずに、ほんとすまなかった」
「いや、僕の方こそちゃんと話しておくべきだったよ」
「・・・花房君って、ただのナル男じゃなかったんだね」
いちごがなみだをふきながら言うと、花房はがくりと力が抜け、三人は吹き出した。
みんなを招き入れて、お茶会は五人になる。花房は形見のローズウォーターを垂らしたローズヒップティーを振る舞い、その香りにいちごは深い衝撃を受けた。こんなステキな香りがするローズウォーターを使わないなんて、すごく勿体ないことだ。
「バラのケーキが冒険だってことは分かってる・・・でも、家族と楽しむケーキっていうテーマを聞いたら、どうしてもこれを使ってみたくなって・・・」
「作ろうよ、バラのケーキ!」
いちごは、迷わずに賛成した。花房の事情を聞いて、放っておけない。
「いちごちゃん・・・」
「バラ・・・確かに目を引くアイデアだしね」
「安堂・・・」
「そうだよ!先輩達と似たもの作るより、ポイント高いよ!」
「できることはなんでもやるべきですわ!」
スピリッツ達も口々に賛成する。
「若いんだからチャレンジしなくちゃ!」
「バニラ、オバサンくさいですー!」
「面白そうだな。作ってみようぜ、バラのケーキ!」
「樫野・・・」
樫野は花房ににやりと笑ってみせた。
「みんなで考えればきっとできる!だって俺たち、仲間なんだからな」
「きっとステキなケーキが出来るよ!頑張ろうね!」
「ああ!」
「うん、頑張ろう!」
その夜は大雪だった。聖マリーを一面白銀に塗りつぶしてしまうほどで、樹は次の日、女子寮の雪かき係に抜擢されてしまったのだった。
花房は低い声でぽつぽつと語る。
「でも、父は覚えていて、早く僕に届けようと飛行機を一便早めた。けれど、それが災いしたのか、道中で交通事故に遭ったらしい。子供をひきそうになったのをよけたんだとか」
樹は息が詰まりそうな話に目を伏せる。
「そして、残ったのはこのローズウォーター一本だけだった」
「全然知らなかったよ・・・」
カフェは俯いた。樹はなんと言っていいか分からない。
「・・・そ、そうだったの」
「その時からかな、今まで以上に母や女性に優しくしなきゃと思うようになったのは」
樹はすっかりさめてしまったお茶をゆっくりと飲み干した。うまい言葉がどこにも見つからない。
「———話してくれて、よかった」
樹がさんざん考えた後に吐き出した言葉に、花房は目を瞬かせる。
「どういう———?」
「話すの嫌だったでしょう。でも、そういう話って多分吐き出してみたら楽になるものだと思うから」
「そうかな・・・」
「私、話してくれて嬉しい。花房君も、いつか話してよかったって思ってくれたら嬉しい」
「樹ちゃん・・・」
ちぐはぐな言葉だが、これが本心であろうと樹は思った。そのとき、近くの茂みの方から堰を切ったような泣き声が聞こえた。二人がぎょっとして振り返ると、実習室に残したはずの三人が茂みの後ろから顔を出していた。当然、泣きじゃくっているのはいちごだ。
「悪い。盗み聞きするつもりはなかったんだ」
「なんていうか、出るに出れなくて・・・」
「うわああああん」
「おい、そんなに泣くことか」
「ごめんなさい、あたし色々感動しちゃって・・・」
いちごはハンカチで盛大に鼻をかんだ。何かと感受性が強いらしい。
「それ、親父さんの形見だったんだな」
「事情も知らずに、ほんとすまなかった」
「いや、僕の方こそちゃんと話しておくべきだったよ」
「・・・花房君って、ただのナル男じゃなかったんだね」
いちごがなみだをふきながら言うと、花房はがくりと力が抜け、三人は吹き出した。
みんなを招き入れて、お茶会は五人になる。花房は形見のローズウォーターを垂らしたローズヒップティーを振る舞い、その香りにいちごは深い衝撃を受けた。こんなステキな香りがするローズウォーターを使わないなんて、すごく勿体ないことだ。
「バラのケーキが冒険だってことは分かってる・・・でも、家族と楽しむケーキっていうテーマを聞いたら、どうしてもこれを使ってみたくなって・・・」
「作ろうよ、バラのケーキ!」
いちごは、迷わずに賛成した。花房の事情を聞いて、放っておけない。
「いちごちゃん・・・」
「バラ・・・確かに目を引くアイデアだしね」
「安堂・・・」
「そうだよ!先輩達と似たもの作るより、ポイント高いよ!」
「できることはなんでもやるべきですわ!」
スピリッツ達も口々に賛成する。
「若いんだからチャレンジしなくちゃ!」
「バニラ、オバサンくさいですー!」
「面白そうだな。作ってみようぜ、バラのケーキ!」
「樫野・・・」
樫野は花房ににやりと笑ってみせた。
「みんなで考えればきっとできる!だって俺たち、仲間なんだからな」
「きっとステキなケーキが出来るよ!頑張ろうね!」
「ああ!」
「うん、頑張ろう!」
その夜は大雪だった。聖マリーを一面白銀に塗りつぶしてしまうほどで、樹は次の日、女子寮の雪かき係に抜擢されてしまったのだった。