11話 七年目のクリスマス
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ここで、一つの問題が発生した。とうの阪口さんが真里子さんの居場所が少しも分からないというのだ。公演が決まったときに、元の住所にチケットは送ったらしいが、そのときに引っ越ししていることが分かったらしい。あてにしていた当時の彼女の職場のレストランも確認しにいくと、つぶれてしまっていた。
「七年も経っているんだ。当たり前だよな。何を夢見ていたんだ、俺は・・・」
阪口さんはため息をつく。樫野はとっさに声を上げた。
「諦めるのはまだ早いです!近所の人にきけば、行方が分かるかもしれない!手分けして聞いてこよう!」
「うん!」
五人は手当たり次第聞き回ったが、有力な情報は得られず、ついに辺りは暗くなってしまった。安堂たちが、一年くらい前までは真里子さんらしき人がつぶれる前のレストランにいたらしいという極めて微妙な情報を報告した。阪口さんの顔も暗くなる。みんなも、大して役に立てなかったことが悔しくて言葉少なになる。
「やだやだやだやだ!ケーキ欲しい!」
「しょうがないでしょ、みんな売り切れちゃったんだから!」
「いい加減にしなさい!」
パン屋の前では、子供が泣きわめいていた。阪口さんはそれを見て、いちごから買ったケーキをその子にあげてしまった。
「今日はつき合ってくれてありがとう」
阪口さんは五人に微笑みかけた。
「なんにもお役に立てなくて・・・」
「せめてものお礼に、一曲聴いてくれ」
阪口さんは、商店街の一角で、五人のためにトランペットを吹いてくれた。独特の軽やかで力強い音色がこだましていく。一回の奏者とはとても思えない技術に、道行く人もつい足を止める。
「・・・素敵」
呟いた樹にやはりと思った花房は声をかけようとする。阪口さんの周りには既に人だかりが出来ていた。
「ねえ、樹ちゃんってさ・・」
「なによ」
その時、二人の間をひとりの女性が押しのけてずんずんと阪口さんへ向かって大股で進んでいった。
「陽介!」
前に躍り出た女性はパシンと高い音を立てて阪口さんの頬を打った。
「ずっと待ってたんだから!なんで迎えにきてくれなかったのよ!」
一同はそそくさと場所を移動して噴水のある公園まで来ていた。商店街の花屋にいたらしい真里子さんが泣きじゃくって大変だったのだ。
「すまなかった。お前のことを、一日だって忘れたことは無かった!」
「私だって、同じよ!あなたが迎えにきてくれると信じて、レストランが潰れたあとも、ずっとこの街であなたの姿を探し続けてたわ!」
樹は場違いな感じがして戸惑ったが、いちごは見事にもらい泣きをしていた。花房がにっこりとハンカチを差し出すと、遠慮なくそれで音を立てて鼻をかむ。
「・・・この子達は?」
その音で真里子さんはようやく五人に気がついた。久々の再会に胸がいっぱいで余裕が無かったらしい。
「君を探す手伝いをしてくれた、聖マリー学園の生徒さん達だよ」
「良かったですね、阪口さん」
「でも、やっと二人のクリスマスができるのに、ケーキがないんじゃあ・・・」
「さっきあげちゃったしね・・・」
「なにを野暮なこと言ってるのよ」
ケーキの心配をしだした花房達に樹は呆れたように口を出した。
「帰って作ってくる時間ぐらいあるじゃない。私たちで作りましょうよ、チャリティーで並べられないくらい派手なのを」
樹がそう言っていちごの方を見たので、いちごはすぐに樹の考えが分かってにっこりとうなずいた。
「賛成!」
三人も二つ返事で頷き、五人は聖マリー学園に戻ってケーキを作ることになった。
「七年も経っているんだ。当たり前だよな。何を夢見ていたんだ、俺は・・・」
阪口さんはため息をつく。樫野はとっさに声を上げた。
「諦めるのはまだ早いです!近所の人にきけば、行方が分かるかもしれない!手分けして聞いてこよう!」
「うん!」
五人は手当たり次第聞き回ったが、有力な情報は得られず、ついに辺りは暗くなってしまった。安堂たちが、一年くらい前までは真里子さんらしき人がつぶれる前のレストランにいたらしいという極めて微妙な情報を報告した。阪口さんの顔も暗くなる。みんなも、大して役に立てなかったことが悔しくて言葉少なになる。
「やだやだやだやだ!ケーキ欲しい!」
「しょうがないでしょ、みんな売り切れちゃったんだから!」
「いい加減にしなさい!」
パン屋の前では、子供が泣きわめいていた。阪口さんはそれを見て、いちごから買ったケーキをその子にあげてしまった。
「今日はつき合ってくれてありがとう」
阪口さんは五人に微笑みかけた。
「なんにもお役に立てなくて・・・」
「せめてものお礼に、一曲聴いてくれ」
阪口さんは、商店街の一角で、五人のためにトランペットを吹いてくれた。独特の軽やかで力強い音色がこだましていく。一回の奏者とはとても思えない技術に、道行く人もつい足を止める。
「・・・素敵」
呟いた樹にやはりと思った花房は声をかけようとする。阪口さんの周りには既に人だかりが出来ていた。
「ねえ、樹ちゃんってさ・・」
「なによ」
その時、二人の間をひとりの女性が押しのけてずんずんと阪口さんへ向かって大股で進んでいった。
「陽介!」
前に躍り出た女性はパシンと高い音を立てて阪口さんの頬を打った。
「ずっと待ってたんだから!なんで迎えにきてくれなかったのよ!」
一同はそそくさと場所を移動して噴水のある公園まで来ていた。商店街の花屋にいたらしい真里子さんが泣きじゃくって大変だったのだ。
「すまなかった。お前のことを、一日だって忘れたことは無かった!」
「私だって、同じよ!あなたが迎えにきてくれると信じて、レストランが潰れたあとも、ずっとこの街であなたの姿を探し続けてたわ!」
樹は場違いな感じがして戸惑ったが、いちごは見事にもらい泣きをしていた。花房がにっこりとハンカチを差し出すと、遠慮なくそれで音を立てて鼻をかむ。
「・・・この子達は?」
その音で真里子さんはようやく五人に気がついた。久々の再会に胸がいっぱいで余裕が無かったらしい。
「君を探す手伝いをしてくれた、聖マリー学園の生徒さん達だよ」
「良かったですね、阪口さん」
「でも、やっと二人のクリスマスができるのに、ケーキがないんじゃあ・・・」
「さっきあげちゃったしね・・・」
「なにを野暮なこと言ってるのよ」
ケーキの心配をしだした花房達に樹は呆れたように口を出した。
「帰って作ってくる時間ぐらいあるじゃない。私たちで作りましょうよ、チャリティーで並べられないくらい派手なのを」
樹がそう言っていちごの方を見たので、いちごはすぐに樹の考えが分かってにっこりとうなずいた。
「賛成!」
三人も二つ返事で頷き、五人は聖マリー学園に戻ってケーキを作ることになった。