11話 七年目のクリスマス
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話を元に戻すと、阪口さんは七年前のクリスマスに同棲していた女性を捨ててニューヨークに行ったということから話しはじめた。樹は、うっかり踏み込んでしまったものが案外重かったため、若干おののいた。
「・・・捨てた?」
「ああ。その年の12月、当時四人組だったマイルズのバンドが来日し、都内のジャズクラブでライブを行ったんだ」
当時、マイルズはピアノ、サックス、ウッドベース、ドラムの四人編成。そこに、前座で吹いていたトランペットの阪口さんが誘われて、共演を果たしたらしい。
「マイルズは俺のことを気に入って、ニューヨークに来ないかと誘ってくれた」
演奏家としてまたとない機会を蹴るはずも無く、阪口さんは真里子さんという恋人を残してアメリカへ発った。七年間彼女のことを思い続けて、ようやく日本公演が決まったというので、ケーキを手みやげに謝りにいこうとしていたらしい。
だが、七年も音信不通の人間に会うのにはそれなりに不安があるものだ。自分のことなど忘れているかもしれないし、既に他の男と結婚しているかもしれないのだ。今はそうして足がすくんでしまっている状態らしい。
樹は容易に口出しが出来ず、開いた口を閉じた。安堂は、樹がまた「ヘタレ眼鏡」などと罵るのではないかと思っていたところだった。阪口さんもまた眼鏡をかけているのだ。
「会いにいくべきです!」
みんなが固まる中、樫野はひとり熱の入った声で断言した。
「たとえ結婚していたとしても、どんな仕打ちをうけたとしても、ちゃんと謝るのが男じゃないですか!俺、ニューヨークへ乗り込んで、本場のジャズメン達に混じって演奏してる阪口さんをかっこいいと思った。そんな阪口さんだから出来る!絶対会って、謝るべきです!」
「なにあんた阪口さんに生意気言ってんのよ」
樹はその発言に食って掛かる。
「あんたそれでもファンなの?偉そうにする権利ないのよ私たち」
「でも樹ちゃん、あたしも会った方が良いと思う!」
「えっ、ちょっと・・・」
「真里子さんがどうしてるかなんて、会ってみなきゃ分かんない。真里子さんのこと、ずっと好きなんでしょ?七年間一度も忘れなかったんでしょ?その想いを伝えないでいいんですか?」
いちごも阪口さんを諭す方向に回り、樹は落胆する。大人に対して全く物怖じのない連中だ。
「真里子さんへの想いと一緒に、クリスマスケーキ、渡しましょう!」
いちごは阪口さんの手を引っ張って立たせた。阪口さんもここまで言われて試みないわけにもいかなさそうだった。
「・・・捨てた?」
「ああ。その年の12月、当時四人組だったマイルズのバンドが来日し、都内のジャズクラブでライブを行ったんだ」
当時、マイルズはピアノ、サックス、ウッドベース、ドラムの四人編成。そこに、前座で吹いていたトランペットの阪口さんが誘われて、共演を果たしたらしい。
「マイルズは俺のことを気に入って、ニューヨークに来ないかと誘ってくれた」
演奏家としてまたとない機会を蹴るはずも無く、阪口さんは真里子さんという恋人を残してアメリカへ発った。七年間彼女のことを思い続けて、ようやく日本公演が決まったというので、ケーキを手みやげに謝りにいこうとしていたらしい。
だが、七年も音信不通の人間に会うのにはそれなりに不安があるものだ。自分のことなど忘れているかもしれないし、既に他の男と結婚しているかもしれないのだ。今はそうして足がすくんでしまっている状態らしい。
樹は容易に口出しが出来ず、開いた口を閉じた。安堂は、樹がまた「ヘタレ眼鏡」などと罵るのではないかと思っていたところだった。阪口さんもまた眼鏡をかけているのだ。
「会いにいくべきです!」
みんなが固まる中、樫野はひとり熱の入った声で断言した。
「たとえ結婚していたとしても、どんな仕打ちをうけたとしても、ちゃんと謝るのが男じゃないですか!俺、ニューヨークへ乗り込んで、本場のジャズメン達に混じって演奏してる阪口さんをかっこいいと思った。そんな阪口さんだから出来る!絶対会って、謝るべきです!」
「なにあんた阪口さんに生意気言ってんのよ」
樹はその発言に食って掛かる。
「あんたそれでもファンなの?偉そうにする権利ないのよ私たち」
「でも樹ちゃん、あたしも会った方が良いと思う!」
「えっ、ちょっと・・・」
「真里子さんがどうしてるかなんて、会ってみなきゃ分かんない。真里子さんのこと、ずっと好きなんでしょ?七年間一度も忘れなかったんでしょ?その想いを伝えないでいいんですか?」
いちごも阪口さんを諭す方向に回り、樹は落胆する。大人に対して全く物怖じのない連中だ。
「真里子さんへの想いと一緒に、クリスマスケーキ、渡しましょう!」
いちごは阪口さんの手を引っ張って立たせた。阪口さんもここまで言われて試みないわけにもいかなさそうだった。